年収500万円男性(既婚・子供あり)の8割が「10年前に比べて生活が苦しい」500人アンケートで浮き彫りになった“中流貧民化”の実態

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2025年05月28日 16:20  日刊SPA!

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写真はイメージです(以下同)
10年で日本の中間層の没落は加速した。増税による手取り減、物価高による実質賃金の目減り。ホワイトカラーはもはや「貧民」と言わざるを得ない苦況はどこまで深刻なのか。そこで年収500万円世帯の家計から限界値を算出。日本人ができる生活レベルを探った!
◆8割近くの人が生活が苦しいと回答

日本の中間層はこの10年で大きく様変わりした。平均年収は’15年の440万円から’24年の426万円に微減し、物価変動を考慮した実質賃金は3年連続のマイナスを記録。ここ数年の賃上げ気運も中間層には届かず、年収500万円という日本の平均像の中流貧民化は進んでいる。

第一生命経済研究所の宮木由貴子氏によると、こうした日本人の中流貧民化は「長期的な不況による国力低下と、それに伴い国際競争力が弱まったことが社会背景にある」のだという。

今回、SPA!が実施した年収500万円を対象にした500人アンケートでもその結果は顕著だ。Q1の「10年前に比べて生活は苦しいか?」の問いに、77.4%が「はい」と回答した。Q2の「年収の変化」、微増でも年収が増えた人が46.8%を占め「変わらない」が25.8%いるにもかかわらず、生活が苦しいと感じているのだ。

◆“苦しさ”の裏にある家計圧迫の要因とは

これに対して「固定費の上昇が家計に占める割合が大きいのが主な原因」と宮木氏は指摘する。

「特に都市部では住宅費の上昇が顕著で、水道光熱費や税負担も重くなっています。たとえ手取り収入が増えたとしても、『可処分所得が増えた』という実感に繫がりにくい」

’15年からの5年間で土地や戸建て価格は約8〜12%上昇し、マンションは同期間で30%上昇。’25年現在も上昇傾向は続いている。次いで、中間層の家計を圧迫するのが食費だ。Q3の「苦しくなったと感じる支出項目」でも「食費」が77.4%と大半を占め、「水道光熱費」「生活日用品」が続く。

Q4の「節約項目」と比較してみても、「住宅費」はそう簡単に節約できない現実が読み取れ、食費や水道光熱費を節約することで、何とか生活している状況がよくわかる。

◆宮木氏が注目したのは「教育費」

しかし、前出・宮木氏は「教育費」の結果に注目する。

「学費だけでなく塾や習い事も含めると、子ども一人を育てる場合でも相当な負担。年収500万円世帯が子ども二人を大学まで進学させることはさらに負担が重い。Q4からも多くの人が教育費を『削れない支出』としていますが、食費や娯楽費にも削減の限界があります。結果として教育は“贅沢品”と見なされてしまうでしょう」

その後待ち受けるのは教育格差。貧困が子ども世代に引き継がれる階級の固定化だ。

「子どもの受験が重なりやすい50代は特に収入格差が顕著で、教育にかけられるリソースの差から、子供の“経験格差”という見えにくい分断が生まれています。これは、子供の将来の収入や職業選択にも大きく影響しかねません」

とはいえ、給与の大幅な上昇は大企業のエリート層のみ。中間層への恩恵は望めず、物価高も長期化する見通しだ。現状を放置すれば、家計破綻は十分起こり得る。

「打開には、暮らし方や価値観そのものを見直す『パラダイムシフト』が求められています。『都会に住むべき』『子供を大学に行かせるべき』といった“常識”を見つめ直すことで、家計のあり方を見直すこともありえます」

◆高価なモノは買っていないがダントツ

かつて男のステイタスとされた車や腕時計、高価なブランド品といったものは年収500万円では手が届かない。Q6の「最近購入した高価なモノは?」では、「買っていない」が130人と最多ではあるものの、車や服、靴などを購入していることにも驚いた。

「現在の50代前半にあたる『団塊ジュニア世代』は氷河期突入のなか、『持てない』状況を自らの『持たない』選択に変え、それまでの『当たり前消費』を変えてきた世代。たとえば、『ケチ』とみなされていた消費行動を『エコ』に転換するなど、消費の縮小を自らの前向きな選択による変化に転換して乗り越えてきた部分がある。

今後は、『ウェルビーイング』(=心も体も社会的にも満たされた状態)を、豊かさの新たな指標としていくことが求められるのではないでしょうか」

年収500万円の貧民化が加速し、生活苦の状態が続く日本人。その処方箋は、「幸せ」の軸を考え直すことなのだ。

◆500人に聞いた!生活苦の実態調査

Q1.10年前に比べて生活は苦しい?

はい………77.4%
いいえ……22.6%

Q2.10年前より年収は?

5%以上減………14.2%
5%未満減………13.2%
変わらない ……25.8%
5%未満増………26.4%
5%以上増………20.4%

Q3.この10年で「苦しくなった」と感じる支出項目は?(複数回答)

食費……………77.4%
水道光熱費……44.8%
生活日用品……19.8%
教育費…………18.0%
住宅費…………16.8%
通信費…………6.2%
小遣い…………5.2%
その他…………11.8%

◆節約項目や生活苦の一番の原因は…

Q4.節約している支出項目は?(複数回答)

食費……………40.6%
娯楽費…………28.0%
水道光熱費……26.8%
小遣い…………22.8%
住宅費…………4.0%
教育費…………3.4%
その他…………10.8%

Q5.生活苦の一番の原因は?

物価高………74.4%
税金増………11.6%
収入減………5.4%
円安…………3.9%
地価高騰……2.6%
金利上昇……0.8%
その他………1.3%

Q6.最近購入した高価なモノは?(フリー回答)

1位 買ってない……130人
2位 車………………52人
3位 服・スーツ……31人
4位 靴………………26人
5位 スマホ…………21人

※都市部に住む年収500万円台の既婚、子供ありの35歳〜55歳男性500人を対象にインターネットアンケート実施。期間は5月9日〜10日まで

【消費生活アドバイザー 宮木由貴子氏】
第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部主席研究員。社会の変化や生活の多様化による消費スタイル・消費者意識などを研究

取材・文/週刊SPA!編集部

―[年収500万円[中流貧民]の限界値]―

このニュースに関するつぶやき

  • 実に馬鹿げた調査。その年代の既婚、子ありの人が【10年前】と比べて生活が苦しい主要因は、結婚、出産、子の大学進学等では?
    • イイネ!1
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