「AQUOS R10」はAIで半歩先の体験を、「AQUOS wish5」は幅広い世代に訴求 “深化”したシャープのスマホ戦略

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2025年05月29日 22:31  ITmedia Mobile

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左がフラグシップモデルの「AQUOS R10」、右がエントリーモデルの「AQUOS wish5」

 シャープは5月29日、自社スマートフォンのフラグシップモデルの「AQUOS R10」と、エントリーモデルの「AQUOS wish5」を発表した。


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 国内MNOでは、NTTドコモとソフトバンクが取り扱う。オープンマーケット向けモデルの価格(税込み)は、AQUOS R10の256GBモデルが10万円程度、同512GBモデルが11万円程度で、AQUOS wish5が3万円程度を予定する。


 製品発表会場には、企画・開発に関わった以下の4人が登壇し、製品のコンセプトや特徴を説明した。


・Co-COO 兼 スマートワークプレイスビジネスグループ長 小林繁氏


・通信事業本部 本部長 中江優晃氏


・通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 川井健氏


・通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部課長 清水寛幸氏


●AQUOS R10はAIで体験に磨きをかける シャープは何にこだわり開発したのか


「半歩先のモバイルUX」――これがシャープの目指すAI体験


 まずはAQUOS R10から見ていこう。AQUOS R10はシャープのAI戦略を反映した製品でもある。通信事業本部 本部長の中江優晃氏は「半歩先のモバイルUX(ユーザー体験)」の実現に向けてAI技術を積極的に活用していくと話す。ここでいう半歩先とは、「お客さまがAIの存在を意識することなく、自然にその恩恵を受けられる」状態を指す。


 例えばカメラに関しては、AIが自動で影を検知し、それを除去した写真を保存できる機能を追加。AIが通話中に出てきたキーワードやスケジュールを自動でメモし、内容をハイライトで表示する機能や、通話中に詐欺などの怪しい電話と感じた場合、その場で自動音声での応答に切り替えて自動で終話できる機能も新規追加した。


 他にも、動画撮影中に笑顔を検知して自動で写真を撮影する「AIライブシャッター」や、GoogleのAIアシスタント「Gemini」に対応している。


AQUOSだからこそ提供できる「価値」 R10では視聴体験における「リアリティー」を追求


 AQUOSだからこそ提供できる「価値」について、中江氏はモデル名の「R」の由来にもなった「リアリティー」という言葉を用いて、開発において特に重視したことを紹介した。


 「どんなシーンでも最高の没入感を得られるオーディオ・ビジュアル」と「目で見た感動を作品のクオリティーで納めるカメラ」の2点を重点的に強化したAQUOS R10は、「生で見るより生々しい」というコンセプトのもと、映像と音響の両面から没入感を徹底的に追求した。


 ディスプレイのピーク輝度は従来の2000ニトから3000ニトへと大幅に向上したことで、光の表現の幅が大きく広がったという。さらに、日が差し込む風景や夜景など、明るい部分と暗い部分の差が大きいシーンでも、リアルな階調表現が可能になり、細部まで鮮明に再現できる。


 通常の動画コンテンツもAQUOS独自の「バーチャルHDR」によって明るく鮮やかに表示される。これは再生中の動画だけをスマートに明るく制御するため、「まぶしさを抑えながらも鮮やかさを際立たせる」としている。


 高輝度になったことでバッテリー消費も多くなるはずだが、清水氏は「明るいシーンは限定的であるというふうに考えている」と前置きした上で、「(他モデルと)比較すると電流への影響はあるといわざるを得ないが、動画再生時間全体に対する影響は大きくならないと考えている」と釈明している。


 リアルな映像体験をさらに引き立てるため、「音響設計にも徹底的にこだわった」と中江氏は続ける。ハイエンドモデル「AQUOS R9 pro」の技術を継承し、スピーカーユニットそのものを新規開発したフルメタルボックスのスピーカーを採用した。


 パワフルで立体感のあるサウンドを実現し、自宅でも最高のライブ感を味わえるという。短時間ながらデモ機で音源を試聴したところ、「低域がR9よりも太くなっている」印象を受けた。


 また、寝室や周囲に人がいる場所など、小さい音量で視聴したい場面でも、音域ごとに音量を賢く制御するAQUOS独自の新技術を搭載。耳の特性上、聞こえにくくなる低域や高域も賢く制御することで、「小音量でもクリアな音質を保てる」という。


 これらの視聴体験を支える「パフォーマンスも進化している」と中江氏は続ける。AQUOS R10では、熱伝導率の高い銅を板状の熱拡散装置であるベイパーチャンバーに接着することで、CPUの熱を効率的にベイパーチャンバーへと流動させる。これにより、ゲームや動画撮影など負荷の大きい場面でも、長時間にわたり滑らかな描写の持続が見込める。


目で見た感動を作品クオリティーで残すカメラ 動画撮影時にも被写体追尾が可能に


 AQUOS R10のカメラは、R9から引き続きライカ(Leica)が監修しており、見たままの感動をそのままのクオリティーで写真に残せることにこだわった。画質エンジン「ProPix pro」による画像処理により、「ナチュラルで味わいのある1枚」を撮影できるという。


 標準カメラには、低ノイズを実現する新センサーを採用し、暗所でも細部まで美しく描写できるようになった。さらに、R9 proで培ったAI技術を継承し、より高精度な撮影が可能だという。光源を判定するという14chスペクトルセンサーを搭載し、光の色味を大幅に細分化して測定し、AQUOS独自のAIで処理することで、屋内などの複数の光源がある難しいシーンでも「色味を正確に再現できる」としている。


 AIの合成処理も強化ポイントで、AIを活用することで、従来以上の情報量で合成処理を行えるようになり、ズーム撮影やHDR撮影などでのディテール感が大幅に向上。これらにより、「これまで以上に見たままのリアルな一枚を収めることができる」という。


 また、R9は静止画撮影時の被写体追尾に対応していたが、R10では動画撮影時にも被写体追尾が可能に。ユーザーがタッチしてフォーカスする仕様のため、特定の被写体に限られるわけではない。さらにDolby Visionへの対応により、「映画のような鮮やかさで、動画を撮影・保存できる」としている。


●AQUOS wish5は進化した安心と心地よさで、より幅広い世代へ訴求


 AQUOS R10と同時発表のエントリーモデルAQUOS wish5は、これまでの「安心」と「心地よさ」を大幅にアップデートし、コンセプトの完成度を一層高めたモデル。通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の川井健氏は、「幅広い世代の人々だけでなく、グローバル市場も意識したモデル」へと進化を遂げたという。


安心感を追求し、振るとアラートが鳴る新機能を搭載


 AQUOS wish5では、国内のエントリーモデルとして初めてだというIP69等級の防塵(じん)・防水に対応した。80℃のお湯にも耐えられるため、例えば料理中などお湯を使うシーンでも安心できるという。


 初めてスマートフォンを持つ“ファーストスマホユーザー”による利用を想定して開発されたのが「振るだけで発動する防犯機能」だ。トラブルに巻き込まれた際、落ち着いてスマートフォンを操作する余裕はないだろう……という気付きから生まれたこの機能。本体を強く振ることで、以下の動作を自動で一連して実行する。


・大音量の警告音を発する


・事前に登録した連絡先に自動で電話をかける


・緊急連絡先への位置情報送信


 製品発表会では、誤動作しないのか? という懸念点を持つ声も聞かれたが、5秒間連続して振られたかどうかを判断するため、それよりも長短な時間に振られると動作しない他、シャープ通信事業本部パーソナル通信事業部商品企画部課長の清水寛幸氏は、実際にwish5をポケットに入れて走ったとしても誤動作しないことを実演した。


グローバルを意識したディスプレイと豊富なカラー


 AQUOS wish5はグローバル市場を意識したモデルとあって、ディスプレイの大幅な改良と、ユーザーの使いやすさに配慮した進化を遂げた。「先代モデルの『AQUOS wish4』から思い切って採用した6.6型の大画面ディスプレイは、国内市場で大変ご好評をいただいている」そうだ。


 シャープはこのディスプレイをさらに進化させ、以下の改良を加えた。インカメラが収納される水滴型ノッチ部分を、円形にくりぬくパンチホールデザインに変更した。またスクロールなどがより滑らかになる120Hzの高リフレッシュレートに対応。スクロール表示や輝度もアップデートし、「長時間の使用でも目に優しい」仕様に仕上がっている。


 目への優しさへの取り組みの一環として、モリサワの新しいグローバルデザインフォントを搭載。学校の教科書や病院でも採用されている「UD学参丸ゴシックフォント」や、文字が大きく見やすいフォントを採用している。またスマートフォン初心者の人に向けて、かんたんモードを、子どもに向けてはジュニアモードを搭載した。


 シリーズ最多となる5色のカラーバリエーションもAQUOS wish5の特徴だ。川井氏いわく、「文房具から着想を得た」カラーで、「ポップでありながら落ち着きのある色合いをそろえ、情景がイメージできるような『和の色味』にこだわっている」そうだ。


●Androidスマホの出荷シェアで8年連続1位に


 シャープは毎年春にスマートフォンAQUOSのフラグシップモデル「AQUOS R」シリーズを発表している。2023年の「AQUOS R8」はハイエンドのRシリーズとして初めて無印とproの2モデルに分けて市場に投入した。2024年5月にはAQUOS R9を発表。2023年に投入した「pro」モデルの姿はなく、シャープはAQUOS R9の発表会で「今期は投入しない」としていたが、10月にはミッドレンジモデルの「AQUOS sense9」とともにAQUOS R9 proを発表した。


 シャープがAQUOS R9と同時にproモデルを発表しなかったのは、パフォーマンスと価格のバランスを追求した結果だ。同社は、高性能プロセッサにこだわるユーザーが減少していると考えており、無印モデルでは「端末本体を使用する際の快適さと価格を抑えること」を重視している。


 AQUOS R10ではAQUOS R9とほぼ同じ水準の約10万/11万円という価格を維持している。プロセッサをR9と同じSnapdragon 7+ Gen 3とすることで、価格高騰を抑えたようだ。


 小林氏は2025年5月29日の発表会で、2024年はハイエンドモデルのAQUOS R9/AQUOS R9 pro、ミッドレンジモデルのAQUOS sense9、エントリーモデルのAQUOS wish4の全てで「大幅なリニューアルを実施した」と振り返り、デザイン、AI機能など、多岐にわたる進化を遂げたことを紹介した。結果として「AQUOSにとってまさに大きな変化の年となった」と小林氏は話す。その上で今回投入するAQUOS R10とAQUOS wish5は、「ピカピカに磨き上げてきた」モデルであり、「深化するAQUOS」と表現する。


 wishシリーズの先代であるAQUOS wish4は、「一般のお客さまだけでなく、多くの法人のお客さまにも導入いただいている」といい、この要因にあるのがAQUOS wish4の特徴だという。エントリーモデルでありながら、堅牢(けんろう)性、セキュリティへの配慮、トータルコスト削減、環境配慮といった要素があり、昨今の企業が重視する要素を兼ね備えた、いわば「パッケージモデル」として高く評価されたという。


 エントリーモデルからハイエンドモデルに至るまでをカバーし、それぞれに特徴を持たせて差別化を図ることで、ハイエンドモデルを毎年世に出しづらい環境が続く中でも、顧客ニーズを分析して戦略を練っていることがうかがえる。


 こうした戦略が功を奏したのか、2024年は、AQUOSの4モデルの販売が当初の予測を大きく上回る好調な推移を見せたという。その結果、AQUOSは日本国内のAndroidスマートフォン出荷台数で8年連続トップを獲得したそうだ。一方、シャープは自社で実店舗を展開しておらず、直接顧客接点を持たない。ラインアップの充実は当然だが、体験を通じて商品価値をどう訴求していくのかも、今後注視したいところだ。



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  • R10は欲しいカラーがないからパス。現行のR9の本体代支払いもまだまだあるしね������������ӻ�����������������ӻ�����
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