
就任以降、移民の強制送還や関税戦争など、大暴れを続けているトランプ米大統領。日本に住むわれわれも人ごとではないけれど、アメリカに住む日本人はもっと大変そう! 大丈夫? ってことで、アメリカ在住の日本人258人にアンケートを実施!
みんな苦労しているのかと思いきや、意外な実態が明らかに......!?
*Q1〜Q9アンケートの対象:アメリカ在住の日本人258人(39州に住む20〜70代以上の男女、以下同)
*アンケートのパーセンテージは小数第2位を四捨五入しているため、合計100%にならない場合があります。
■在米日本人内にも広がる「分断」!
そもそも昨年のアメリカ大統領選では、トランプ氏とハリス氏、どちらを支持していたのだろうか?(Q1)
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結果、「絶対にトランプ」(32.2%)と、「どちらかといえばトランプ」(10.9%)を合わせて43.1%の人がトランプ氏を支持していたと回答。そして大変興味深いことに、「絶対にハリス」(30.6%)、「どちらかといえばハリス」(12.4%)と、ほぼ同率の43%の人がハリス氏を支持していたことがわかった。
二分されたアメリカ国民の政治意識は、アメリカ在住の日本人にも共通していたようだ。
そんな分断の中、今年1月20日に発足した第2次トランプ政権。これまでの評価を聞いてみた(Q2)。
「大いに評価する」(19.4%)、「ある程度評価する」(20.5%)と回答したのは、合わせて全体の39.9%。Q1でのトランプ支持の割合から微減するも、ほぼ同率となった。
一方で、半数以上の52.7%が「まったく評価しない」(36.4%)、「あまり評価しない」(16.3%)と回答。もともとハリス氏を支持していた人々に加え、Q1では「どちらとも言えない」と回答した、いわば無党派層も第2次トランプ政権に否定的な評価を下していると推測できる。
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■政権を評価するポイントは?
では、どういったポイントで政権に評価を下しているのか、具体的な理由を聞いてみた。
「評価する」と回答した人が最も多く理由に挙げたのは、「不法移民対策」「国境管理の強化」だった。
「約束したことをどんどん実行に移している。不法移民の取り締まりはひどすぎる場面もあるが、かなりの人数を国に返したり、国境の取り締まりを厳しくしたりして、以前のバイデン政権のようにめちゃくちゃに不法移民を入れて、無駄なお金を彼らに使うようなことがなくなった」(カリフォルニア州・60代女性)
「不法移民対策は、治安維持のために現地(アメリカ)に住んでいる人が望む政策だと思う。ドラッグ対策も強権的ではあるが、必要な措置と思う。
また民主党政権が政府の予算をどんどん膨らませてきたので、DOGE(政府効率化省)のやり方もまた強権的ではあるけど、必要な荒治療だったと思う」(ワシントン州・40代女性)
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また、かなりの少数派だが「トランプは本気でDS(ディープステート)を潰そうとしているから」(バージニア州・60代男性)、「DSを崩壊させてほしいから」(カリフォルニア州・50代女性)という陰謀論に基づく声もあった。
一方、「評価しない」人の回答ではトランプ氏の倫理観への疑い、独裁的な姿勢への危機感が目立った。
「トランプの何を評価できるのか? 恐怖政治、利己主義、差別的、挙げたらきりがないが、まず人としてありえないし、大統領の立場を使って自己の欲望を満たしてるだけ」(カリフォルニア州・50代女性)
「最悪の分断を引き起こした史上最低の大統領。人間としてのモラルがない人間が大統領権限を持つことはこの上なく危険」(フロリダ州・50代女性)
「トランプはアメリカのネガティブな部分をすべて抽出し、極限まで高濃度化し、具現化した存在」(コロラド州・50代男性)
「この国だけでなく世界に混乱をもたらしている」(ニューヨーク州・50代男性)
日本人も移民なのに移民政策を評価?
では、ここで具体的な政策への評価を聞いてみよう(Q3、複数回答可)。
第2次トランプ政権の政策の中で「評価する」ものとして、上位から順に「強制送還などの移民政策」(46.9%)、「連邦政府の雇用削減」(36.8%)、「DEI(多様性・公平性.包括性)プログラムの廃止」(32.3%)が並んだ。
"移民"としてアメリカで暮らしているはずの日本人の4割強が「強制送還などの移民政策」を評価しているのは一見意外だ。しかし、その背景としては、"正式なプロセスを経た移民"と自任する在米日本人の、密入国してきた"不法移民"に対する危機感・忌避感が表れていると言えそうだ。
「苦労してグリーンカード(永住権)を得て、真面目にアメリカで生活している日本人として、善良なアメリカ市民の危険などまったく無視の前政権にはあきれていました」(コロラド州・50代女性)
「不法移民対策に関しては評価する。彼らよりもアメリカの合法的市民のために税金を使うべきだと思っていた」(カリフォルニア州・50代女性)
こうした一方、「評価するものはない」という回答も全体の約4割を占めている。個別の政策にも第2次トランプ政権の思想が強く反映されているためか、政権への評価と政策への評価がより強く相関しているとも考えられる。
■物価、治安、住みやすさは?
それでは、第2次トランプ政権発足以降、生活にはどのような変化が起こっているのだろうか。
まずは身の回りの物価について聞いてみた(Q4)。最多は「変わらない」の48.8%だったが、次に「高くなった」(30.6%)、「とても高くなった」(15.5%)と続き、半数弱の46.1%の人々が物価上昇を感じていることがわかった。
次に、治安について聞いてみた(Q5)。結果は「変わらない」が最多の75.2%。トランプ政権の政策による治安への影響は、現時点であまりなさそうだ。
さて、ここで気になるのはアメリカにおける日本人の住みやすさ。第2次トランプ政権発足以降、アメリカで日本人は住みやすくなったか聞いてみた(Q6)。
最多は「変わらない」の35.3%だが、「まったくそう思わない」(31.4%)と「あまりそう思わない」(16.7%)を合わせると、半数近い48.1%の人が住みづらくなってきていると実感しているようだ。特に人種差別と強制送還を危惧する声が多かった。
「すでに人種差別が悪化している」(ニューヨーク州・60代女性)
「グリーンカードなど在留資格を持っていても強制送還されるリスクもある」(カリフォルニア州・60代男性)
ここで視点を変えて、日米関係についての評価を聞いてみた(Q7)。
最多は「悪いと思う」の42.6%。その理由として、「一方的な対話のない政策(特に関税)は、感情を逆なですると思う」(コロラド州・40代女性)など、関税政策を危険視する声が多かった。また、その次に多かったのが、石破茂政権に対する不安だ。
「強気のトランプ政権に対して日本政府は対応できていない」(フロリダ州・40代女性)
「日本政府側が強い意志を持って対応していないと思う」(ユタ州・50代男性)
アメリカ在住者から見ても、石破政権の対米外交はかなり弱気に映っているようだ......。
■今後の見通しと2026年中間選挙
ここで少し未来へと目を向け、アメリカの今後の見通しを聞いてみた(Q8)。
最多の「とても悪くなると思う」(29.5%)に「悪くなると思う」(25.6%)が続き、半数以上の実に55.1%もの人々がアメリカの未来に悲観的なことがわかった。一方で、「とても良くなると思う」(11.6%)、「良くなると思う」(24.4%)も合わせて36%と、政権への評価(Q2)と賛否がおおむね重なる結果となった。
「悪くなる」と回答した人は、主に関税政策による消費者へのしわ寄せや輸入依存産業への打撃、長期的な産業衰退を懸念している声が多かった。
「関税率を上げることで物価が下がるとは思えない」(ニューヨーク州・60代女性)
「失業者が増えていて、物価高騰の気配があり、株価が暴落し、消費者は買い控えている。経済的不安がある」(カリフォルニア州・50代女性)
一方、「良くなる」と回答した人のコメントを見ると、不法移民対策による治安改善、税の使い方の是正・無駄の排除、経済・雇用の回復の3つがポジティブ要因となっているように見受けられる。
「不法移民がいなくなり、街の治安が良くなった。関税に関しては、長い目で見てアメリカには良いと思う」(ニューヨーク州・50代女性)
「アメリカ人の雇用が守られ、経済が向上し、アメリカが豊かになれば、自身が行なう商売の向上にもつながるため」(イリノイ州・30代男性)
最後に、2026年の中間選挙について、二大政党どちらに勝ってほしいかを聞いてみた(Q9)。
「絶対に民主党」(30.2%)、「どちらかといえば民主党」(7.8%)と、38%が民主党を支持。そして、「絶対に共和党」(25.6%)、「どちらかといえば共和党」(7.4%)と、33%が共和党を支持。
2024年の選挙時の支持傾向(Q1)と比べると、双方とも支持が減っているが、第2次トランプ政権の実態を見たことで、やや共和党支持者のほうが減りが大きかったと推測できる。
ただ、Q1の14%と比べて、「どちらとも言えない」が29.1%と、ほぼ倍増している点には注目すべきだろう。「共和党から離れたいが、民主党も支持できない」といった在米日本人が増えていると想像できる。
日本で暮らすわれわれとしても、アメリカで暮らす日本人にとって(もちろんそれ以外のアメリカ国民にとっても)、住みやすい国になっていってくれることを祈るしかない。
取材・文/おかけいじゅん 写真/Getty Images アンケート/ロコタビ