愛知・名古屋に新たな国際アニメーション映画祭が誕生、長編コンペ軸に世界発信目指す

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2025年06月02日 19:49  コミックナタリー

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左からフェスティバルディレクターの井上伸一郎氏、ジェネラルプロデューサーの真木太郎氏、アーティスティックディレクターの数土直志氏
新たな国際アニメーション映画祭「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」が誕生。第1回が12月12日から17日まで、愛知県名古屋市のミッドランドスクエアシネマほかで開催される。本日6月2日には開催発表の記者会見が行われ、ジェネラルプロデューサーの真木太郎氏、フェスティバルディレクターの井上伸一郎氏、アーティスティックディレクターの数土直志氏が出席した。

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「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」、通称「ANIAFF(アニャフ)」。愛知万博「愛・地球博」をはじめ、国際芸術祭「あいち」や「あいち国際女性映画祭」の開催など文化的な催しの多い名古屋から、多くの作品を創出しグローバルに発信できる、世界を代表するアニメーション映画祭を目指していく。立ち上げのきっかけを作ったのは大村秀章愛知県知事であり、真木氏は「文化的な知見をたくさん持っている方で、アニメーション映画祭をやろうと意気投合しました」と明かす。そして真木氏が井上氏、数土氏に声をかける形でこのメンバーが集まった。なお3人は2023年より開催されている「新潟国際アニメーション映画祭」のボードメンバーを務めていたが、今後は新潟の映画祭の運営からは離れるという。

「ANIAFF」では“クリエイターファースト”を掲げ、国際コンペティションをはじめとする6つの部門を設置する。国際コンペティション部門は2024年1月以降に完成した40分以上の長編アニメーション映画を対象とし、国内・国外からエントリーされた作品から各賞を決定。各賞には「金鯱賞」「銀鯱賞」「赤鯱賞」と、名古屋にちなんだ名前がつけられた。審査員は現時点では未発表。数土氏は「ここ数年、世界的に長編アニメーションの制作が増えているが、オリジナリティに溢れていて、ややターゲットを絞ったような作品の行き場が実はあまりない。劇場公開する作品以外の長編アニメーションをもっと知ってもらう場があってもいいのではないか」と長編を対象にした理由とその背景に触れた。

招待上映部門では映画祭に華を添える、国内外の最新作・話題作を上映。特集上映部門では国内外の監督にスポットを当てる「ディレクター・フォーカス」、制作スタジオに注目する「スタジオ・フォーカス」、コアなアニメファンに向けた「カッティング・エッジ」という3つのテーマを予定しているという。さらに、その年に合わせた旬な切り口で作品を集めるニューウェーブ部門も設けられる。

そのほかゲストによる基調講演や、セミナー・カンファレンスプログラムも実施予定。数土氏は「映画祭は映画を観るという機能のほかに、映画を作るためのネットワーキングという機能、みんなの知識を共有するという機能がある」と話す。「今みんなの欲しがってる知識や、十分発信できていない知識とは」と考えたうえで、“Critics(批評)、Creative (クリエイティブ)、Cooperation (企業連携)”をテーマにセミナーやカンファレンスを展開する。また愛知・名古屋での開催ということで、地域を盛り上げるような施策も検討しているとのこと。数土氏は「映画祭の観客は、やっぱり地元の方が一番多いはず。愛知県は非常にたくさんのアニメーションの才能を輩出しているので、(地域とのつながりを意識した企画も)ぜひやりたいと思っています」と述べた。

そして「ANIAFF」の特徴として3人が強調したのは、クリエイターや制作会社が参加できるピッチの場を設けたいということ。数土氏は「『AnimeJapan』や『TIFFCOM』で取引されているのは完成された作品が中心で、企画を持って行く場所は日本の中にはあまりなかった。アニメが国際化する中で、今までと違う形でアニメを作りたいということもあると思いますが、海外に企画を持って行くのは盛んであるものの、日本には企画を売るマーケットがない。そこに可能性があるのではないかと思っています。練っている段階なので、どういう形になるかはこれからなんですが、そういった場所を突破口に日本のアニメの広がりを大きくしていきたい」と意図を伝えた。井上氏は「オリジナル作品かつ今まであまり世の中に出てないような新しいアニメーションは、出資を集めるのも大変。『ANIAFF』がそういう役目の1つを担えれば」と述べ、真木氏は「1回目から大きなマーケットを作るのは難しいですが、ピッチの場を提供するだけではなくて、その後のサポート体制も映画祭が担っていければいいですよね」と展望を語った。

最後に数土氏は「アジアで一番のアニメーション映画祭、日本を代表するアニメーション映画祭にしたい、という気持ちです」と改めて意気込みを伝える。井上氏は「明るく楽しく、みんながアニメーションを通じて交流できる、広い意味での国際映画祭を目指してまいります」、真木氏は「映画祭は時間がかかるものですが、なるべく早く定着し、なるべく多くのお客さんに来てほしいと願っています」と応援を呼びかけた。

■ 「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」
会期:2025年12月12日(金)〜17日(水)
会場:ミッドランドスクエア シネマ、ミッドランドスクエア シネマ2、109シネマズ名古屋、NAGOYA試写室を中核とした上映施設、名古屋モード学園&HAL名古屋 5カ所を予定
上映本数:60〜80本(複数回上映含む)

■ 真木太郎(ジェネラルプロデューサー)コメント
この度、愛知県知事大村秀章様ならびに名古屋市長広沢一郎様を始め関係者様のご尽力により、第1回「あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」を開催する運びとなりました。
アニメーションは日本を代表するコンテンツのひとつとして、映画から始まりました。その後テレビ、ビデオ、配信とそのメディアが変化するたびに多彩な進化を遂げ、今や世界中にそのファンを増やし続けています。デジタル化による表現技法だけでなく、作品のメッセージも多様な種類を生み出しています。この映画祭ではその「多様性を極めるコンテンツの価値」を広め、高め、進化させるエンジンになれるよう努力していきます。

■ 井上伸一郎(フェスティバルディレクター)コメント
この度ご縁があって「あいち・なごやインターナショナル・アニメ・フィルム・フェスティバル」のファスティバル・ディレクターを拝命いたしました。愛知・名古屋に根ざす自動車、航空機、工作機械などの産業を支えるクラフトマンシップは、アニメーションの制作現場に共通するものではないでしょうか。芸術・文化と親和性の高いこの地で、新しい映画祭を開催できる喜びをファンの皆様と共有したいと願っています。

■ 数土直志(アーティスティックディレクター)コメント
「グローバリゼーション」「ボーダレス」「次世代テクノロジー」、世界はいま大きく動いています。映像表現の最前線にあるアニメーションは、こうした文化・社会の変化や潮流を真っ先に映し出します。“アニメーションはこれからどこに向かうのか” “どこに向かうべきなのか” それらを知ることで、私たちは未来のカルチャーを垣間見ること出来るのです。
「あいち・なごや」はアニメーションの世界でこれから起きることをいち早く捉え、提示する新しいスタイルの映画祭を目指します。世界から最先端のアニメーションカルチャーが集まり、それを通して地域と世界がつながります。ワクワクやドキドキが体験できる6日間、いままでにない何か特別なことが起こるところ、そんな映画祭を作りたいです。

■ 大村秀章愛知県知事コメント
愛知県で初めて国際的なアニメーション映画祭が開催されることを、大変喜ばしく思います。
本県は、世界的に人気のある漫画「ドラゴンボール」の鳥山明氏や「僕のヒーローアカデミア」の堀越耕平氏など、多くのクリエイターの出身地として知られているだけでなく、国内外のファンを魅了する「ジブリパーク」や、世界最大級のコスプレの祭典「世界コスプレサミット」など、アニメーション文化と深く関わりを持っております。
こうした地域の特徴を活かしながら、世界中から集まる才能あふれたクリエイターが、多様な世界観や高い創造力を作品に込めて発信することで、ここ愛知が国際的な文化交流の中心地となり、地域全体の活力が一層高まることを期待しています。本映画祭を通して、世界中の皆様に、心に残る感動や新たな出会いを体験していただければ幸いです。

■ 広沢一郎名古屋市長コメント
第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバルの開催にあたり、開催地の名古屋市を代表して、ご挨拶申し上げます。
本映画祭は、世界中からアニメーション作品を集め、上映、表彰、関連企画の実施等を通じて、日本のアニメーション界における文化と産業の発展、人材の発掘・育成につなげることを目指して開催するものです。開催にあたり、関係者の皆様のご理解とお力添えをいただき、深く感謝申し上げます。
「世界コスプレサミット」発祥の地である本市は、コスプレ・アニメを日本一楽しめ、世界一あたたかなおもてなしをするまちとなることを目指し「コスプレホストタウン宣言」を行っております。また、日本が世界に誇る、スタジオジブリの世界観を表現した唯一無二の公園施設、ジブリパークを近隣に擁しているなど、アニメーションはすでに当地域の魅力のひとつとなっていると考えております。
この本市のアニメーション文化を活かし、本映画祭では、アニメーションの文化的価値を世界に発信し、国境を超えた多様な文化交流を創出して、「アニメ大国、日本」のブランドイメージを強化できるよう支援をしてまいります。
本映画祭の成功と、今後ますますのアニメーション界の発展を心から祈念し、私からの祝辞とさせていただきます。

※6/3 20:08追記:記事初出時、写真のキャプションに記載した人名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

このニュースに関するつぶやき

  • ミッドランドスクエアシネマは毎月おすすめアニメ映画を広告してるけど、ただでさえスクリーンは常にいっぱいいっぱい。109・ミリオン座や来年夏開業のTOHOシネマズも加えないと足りないように思うが。
    • イイネ!6
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