倉庫内に積み上げられた政府備蓄米=2月18日、埼玉県内 政府が随意契約などを通じて、備蓄米の放出を加速させる中、備蓄米を保管・管理する倉庫業界からは、収入減少や出庫作業の負担増に不満が強まっている。再び備蓄量を積み増すスケジュールも見通せない中、「他の貨物への切り替えを検討せざるを得ない」(倉庫会社)と事業継続をためらう声も出始めた。
石破茂首相は2日の参院予算委員会で「いざという時に保管していただける所がないのは、食料安全保障上も懸念すべきことだ」と憂慮。小泉進次郎農林水産相も3日の記者会見で「備蓄米が保管されていない状態でどのような対応が可能か、省内で検討していきたい」と話し、対策を急ぐ構えだ。
政府備蓄米は全国約300カ所で保管されており、コメ産地の北海道や東北地方など東日本に多い。温度や湿度を管理できる定温倉庫で、カビや害虫の発生を防ぎながら、玄米を長期間保存している。
倉庫会社は、コメが倉庫内にある間の保管料が収入源。業界団体の全国定温倉庫協同組合によると、政府が計画する計約61万トンの備蓄米が放出されれば、合計で月額約4億6000万円の保管料を失う。
保管料の減少に加え、急を要する「異例の大放出」で、配送前の確認作業やトラックへの荷積み作業への負担も増大。同組合には「人の配置が大変だ」「事務処理が追い付かない」など、悲痛な声が寄せられている。
定温倉庫は、コメ以外の農産品や電子部品の保管も可能だが、一度他の貨物に転換すれば「保存環境の違いや衛生上の問題で、備蓄米を再び受け入れるのは難しい」(関係者)のが実情。政府の支援が必要だと訴えている。