「なんでこの店を選んだのか理解できない」デート相手の女性が「居酒屋のメニュー」を見た直後に激怒。軽率な“生”が命取りに

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2025年06月26日 16:20  日刊SPA!

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‟生”という語には名状しがたい魔力がある。真夏の生ビールは最高だし、ハム食べ放題は聞かないのに生ハム食べ放題ならいくらでもある。生パスタはすっかり市民権を獲得し、生ドーナツブームの流行はまだまだ衰えない。
 なんでもかんでも‟生”と呼びすぎではないかとも思うが、しかしそそられるのも事実。ことのほか「生肉」は、愛好家にとっちゃたまらない代物だ。

 しかし肉の生食、それも鶏や豚やの生食は、魚なんかのそれより大きなリスクが存在する食べ方である。そのリスクを決して舐めることなく、されども引き受ける覚悟が必要なのだ。

 今回話を聞かせてくれた、都内メーカー勤務の望月麻人(仮名・34歳)さんは、「生肉」のリスクを軽んじたせいで、女性から振られてしまった経験があるそう。

◆「運命の人に出会えた」と歓喜

「マッチングアプリで知り合って、3回目のデートでした。すっかり打ち解けていて、その日には付き合いはじめられると舞い上がっていたんですが……」

 目下、結婚相手を募集中の望月さん。だが、アプリに登録して1年が経ってもいい人にはめぐりあえず、更新料とデート費だけが出て行く日々を過ごしていた。そんな矢先にマッチしたのが、川井瑠美(仮名・31歳)さんだった。

「彼女とはお互いにお酒が好きで、好きなバンドも似通っていて。さらにチャットの息もはじめからピッタリだし、普段の使用路線も重なっていたしで、トントン拍子で初回デートが決まりました。会って話してみると、業界は違うながら、彼女もまたメーカー勤務であることが判明。僕がバックオフィス系で彼女は研究職と、文理も違いましたが、それでも仕事においての共通言語も多く、盛り上がったんです。それに、写真よりも実物の笑顔の方がかわいくって……。『やっと運命の人に出会えた!!』と、心の中でガッツポーズを連発したほどでしたよ」

◆相思相愛を確信して「3回目のデート」へ

 舞い上がった望月さんだったが、独りよがりではなかった様子。2度目のデートもすんなり日時が決まった。

「お酒好き同士とはいえ、初回は昼間のカフェだったんです。もっとも、コーヒー系のカクテルが多い店にはしたものの(笑)。2度目はディナーとして、瑠美さんが前から行ってみたかったというメキシコ料理の名店で、サボテン料理とテキーラを堪能しました。それはもう、夢みたいに楽しかったですよ……。サボテンを食べられるなんて知らなかったし、一緒にいると世界が広がるようでワクワクしました」

 すぐにも次の約束を取り付けたいところだが、残念。望月さんの会社は、決算前の繁忙期に差し掛かっていた。

「でも、そうした事情を伝えると、『ひと段落ついた金曜にでも打ち上げしよ! どうせ電車一本で合流できるし、当日に誘ってくれていいから』なんて返してくれたんですよ。これはどう考えても完全に脈アリじゃないですか! だからこそ、次に会えるのをたのしみに仕事を頑張ろうと、グッとこらえてその日は解散できました(笑)」

 すっかり浮かれた望月さんは瑠美さんから言われた通り、とある金曜の昼休みに「今晩はどうですか」と誘った。

「送った直後、社交辞令だったかもと後悔しかけていたんですが、即OKの連絡をもらえて……何重にもうれしかったですね。その場では集合する駅と時間だけ決めて、店は私が選ぶことになりました。前回が彼女セレクトだったので、順番ということで」

◆メニューを見て様子が急変。なぜなのか

 しかし、店を探し始めたのが当日金曜の昼であるだけでなく、望月さんにとってはあまり土地勘のない駅だった。

「なんでもおもしろがってくれるタイプだと思って、中間地点ながらもお互いにあまり馴染みのない駅集合にしてしまったんです。すると、よさげな店の多くはもう予約が埋まってしまっていました。結局退勤までの隙間時間では見つけられず、集合場所に向かう電車のなかでようやく見つけたのが、レアな焼酎をたくさん置いてあると謳う地鶏居酒屋でした。お酒好きな彼女にもこれならよいだろうと思って。待ち合わせの改札前で電話し、ギリギリで予約できました」

 しばらくして現れた川井さんとともに、3分ほど歩いて店に到着。ところが、メニューを開いた途端、彼女は眉をしかめてしまった。

「ずっとコロコロ笑っているような、明るいタイプだったんで『おや?』とは思ったのですが、仕事帰りで疲れているのかなと、最初はあまり気にしなかったんです。ただ、飲兵衛であるだけでなく食べっぷりもよいタイプなのに、全然フードを注文しようとしないし、私が頼もうとするものも『麻人くんが食べたいなら食べて』と、乗り気じゃない。いよいよおかしいと思って、『体調悪いのに無理させちゃったかな。それとも気に障ることをしてしまっているなら教えて』と聞いたんです。なのに、スマホをいじりはじめちゃって」

◆「なんでこの店を選んだのか理解できない」とメッセージが…

 すると望月さんのスマホが鳴った。

「彼女も触っているしと確認したら、まさに瑠美さんからのLINEでした。『この店で食べたいと思えるものはない。食べられなくもないものはあるけど、そうまでして口にしたくないし、なんでこの店を選んだのか理解できない』と、書いてあったんです。文面なのは彼女なりの配慮なんだなと思って、そのままLINEで理由を聞きました。『よくある得体の知れない“なんちゃって地鶏専門店”の鶏刺しなんて、農学部出身の私は怖くて食べられたもんじゃない』『その鶏を調理したまな板や包丁が流用されているかもしれないから、添え物のレタスやレモンも怖い』とのことで……」

 意気消沈する望月さんだったが、LINEの通知は鳴り止まない。

「ちゃんと管理された現地であっても、本人の意思と責任で食べるものなのに、東京のこんなところに無断で連れてこれる神経が無理」

「私の健康を軽視してるのか、単に危機管理能力が欠如しているだけなのかわからないけど、いずれにせよエセ科学とかに騙されないように気をつけたほうがいいんじゃない?」

 ……などなど、連投された。

 いよいよ望月さんの堪忍袋の緒も切れる。反論しようと必死にフリックしているあいだに、彼女はあっさりと4杯の焼酎を飲み干していた。

◆その後、あえなくブロックされてしまう

「画面にばかり集中していて、全然気がつかなかったんです……。『多少の単価は作ったから、私はもう帰るね』とLINEが来たと思ったら、3000円を残して立ち上がってしまいました。もう怒りよりも情けなさが勝って、自分も焼酎をロックでひたすらがぶ飲みです。小一時間で6杯ほど飲んだと思います。けれど脅された手前で食欲はなく、お通しと鶏モツ煮しか食べられませんでした」

 会計後、ベロベロに酔った勢いのまま川井さんに電話をかけたが、これが命取りになった。翌日には記憶のない5分の通話履歴を最後に、ブロックされてしまっていたという。

「たしかに私も軽率ではあったかもしれませんが、あんな言い方はひどいじゃないですか。それに言い返したかったし、なにより本当は仲直りしたかったんです。だって瑠美さんより一緒にいて楽しい人にこれから出合える気がしないので……」

 彼女の表現ぶりは常軌を逸しているものの、内容自体の筋は通っているだろう。カンピロバクターはもちろん怖いが、その後にギランバレー症候群にかかってしまうリスクがあるのが一層恐ろしいわけである。

 運命の恋を引き換えに、望月さんは健康リスクを負わずに済んだとでも言っておこう。

 なお、ジビエの生食は禁忌であるし、「低温調理」にも一定の加熱温度とその時間に基準があるので、留意されたい。皆さんも、相手の望まない「肉の生食」をさせてはしまわぬよう、幹事の際にはどうかお気をつけを。

<TEXT/鬼怒川庸二>

【鬼怒川庸二】
街角では知り合いに間違われ、飲み屋では酔客に話しかけられる性質を持つ。娑婆の声に耳を傾けているうちに、自然と副業ライターになった。本業もまた別ジャンルの書く仕事。ドッペルゲンガーの報告はこれまで30件超にのぼる

このニュースに関するつぶやき

  • 選択肢が無かったんでしょ。ただし生肉は要注意。ハンバーグ(挽肉)のレア仕上げも要注意。
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