【MLB】大谷翔平が再び踏み出した「二刀流」 投手復帰3試合目でメジャー自己最速の101.7マイルが出た要因とは?

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2025年06月30日 18:20  webスポルティーバ

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前編:大谷翔平、「二刀流」本格復活への序章

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が「二刀流」復帰早々からその凄みを見せつけている。投手としての復帰3試合目のカンザスシティ・ロイヤルズ戦では、メジャー自己最高球速を計測。限られた投球数のなか、右肘の様子を見ながらのピッチングにもかかわらず、なぜ想定以上のパフォーマンスとなっているのか。

大谷本人やチームメートのコメントを中心に振り返る。

【メジャー自己最速の101.7マイルが出た理由】

 MLBの常識を変える存在――大谷翔平。果たして二刀流で、チームを世界一に導けるのか。その重く、遠い目標に向け、大谷は今、一段ずつ確実に階段を登っている。

 現地時間6月28日、敵地で行なわれたカンザスシティ・ロイヤルズ戦に、今季3度目となる「1番・投手兼DH」で先発出場した。試合開始5分前までブルペンで23球の投球練習を行ない、その様子をひと目見ようとブルペン付近のスタンドには人だかりができた。スタジアム内でスタメン発表があると、大歓声が沸き起こった。アメリカ中西部、ミズーリ州のファンも、歴史的瞬間の証人となったことに興奮していた。

 なお、試合で投げる前に打席に立つのは、今回が3試合目にして初めてのこと。ブルペンから急いでベンチに戻り、打撃用の防具を装着して打席に向かった。相手はメジャー通算61勝を挙げている好投手セス・ルーゴ。ファウルと空振りで追い込まれた後、最後は外角から入ってくるカットボールに手が出ず、見逃し三振に倒れた。試合後、「二刀流のルーティンに慣れるには時間がかかりそうか」と問われた大谷は、「今日はノーヒットでしたけど、バッティングとピッチングは基本的には分けて考えています。ピッチングがよくて、バッティングはあまりよくなかった1日だったかなと思います」と淡々と語った。

「よかった」と語った投球内容だったが、立ち上がりは決してスムーズではなかった。1死から、ロイヤルズの看板選手ボビー・ウィットJr.にライナー性のシングルヒットを許し、続くマイケル・ガルシアには四球。1死一、二塁のピンチを迎えた。しかし、そこからギアが入った。4番ヴィニー・パスクアンティノに対しては、1球目に内角低めギリギリへ99.2マイル(約159.6キロ)の直球を決めてストライク。2球目も内角に100.2マイル(約161.3キロ)の直球で2ストライク、そして3球目にはメジャー自己最速となる101.7マイル(約163.6キロ)のストレートで二塁ゴロの併殺打に仕留め、ピンチを切り抜けた。

 大谷もドジャースも、再び肘を痛めることを最も警戒している。そのため、全力で投げるというより、球速を97マイル(155.2キロ)前後に抑えるようにしていた。にもかかわらず自己最速。再発の恐怖はないのかと問われると、大谷はこう答えた。

「思いきり投げようとは思っていなかったんですけど、ランナーが二塁に行ったりとか、ランナーがたまると、やっぱり打たれたくないという気持ちが先に出てきて(球速が)上がってしまう。自然と上がってしまった感じです」

 そして肯定的に、「ライブBP(実戦形式の打撃練習)を続けていたら、こういう球速では投げられなかったと思う。そういう意味では、短いイニングでしたけど、実戦の中で早い段階からこの球速帯に慣れていくのはいいこと。今日のなかでよかった点の一つだと思います」と振り返る。

 また、2度目の手術からの復帰で、球速が戻るかどうか不安はなかったのかとの問いには、「1回目の時よりも術後の感覚はすごくよかったです。術式も多少違いますし、ドクターとの話のなかで、球速が戻る確率は高いということだったので、自信はありました。球速帯だけでなく、投げ方も含めて、まだまだ改善の余地はあると思っています。これからですね」と答えた。

 これまでの大谷の最速は、公式戦では2022年9月10日のヒューストン・アストロズ戦でカイル・タッカーに投じた101.4マイル(約163.2キロ)。渡米後の最速は、2021年3月21日のサンディエゴ・パドレスとのオープン戦でフェルナンド・タティスJr.に投げた101.9マイル(約164キロ)だった。7月5日に31歳の誕生日を迎えるが、その年齢でMLBでの記録を更新した。

【打撃はリーグ屈指の投手相手に凡退も上々の復帰過程】

 復帰後、初めての2イニング目の投球では、より安定していた。まず、5番サルバドール・ペレスを98.8マイル(約159キロ)の速球で中直に打ち取り、6番ジャック・カグリオンには、カウント1−2から89.1マイル(約143.4キロ)のスライダーで空振り三振。続く7番ニック・ロフティンに対しては、カウント0−2から98.6マイル(約158.6キロ)のスイーパーで捕邪飛に仕留めた。

 試合後、大谷の101.7マイルについて問われたドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、「この数字は予想外だった」と認めたうえで、次のように語った。「選手から闘争心を取り除くことはできない。多少ストレスがかかると、100マイルを超える球で、力で打者をねじ伏せようとする。今は登板後も体調を維持してくれる(痛みが出ない)ことを願っている」。

 また、大谷と2度目のバッテリーを組んだ新人捕手ダルトン・ラッシングは、こう振り返った。

「ヴィニー(パスクアンティノ)に対しては、少し力を入れていたのがわかった。全体的に球速もよかったし、マウンド上での動きにも慣れてきて、必要な場面ではしっかり投げきれていたと思う。本人も満足しているはず。今後は、先発としてどれだけ長いイニングを投げられるか、どこまで登板を引き延ばせるかに注目していくことになる」

 一方、打撃面ではこの日、3三振を含む4打数無安打と苦戦した。もっとも、打撃は相手投手によって大きく左右される。この日の先発、ルーゴは、昨季ア・リーグのサイ・ヤング賞投票で2位に入った一流投手で、今季も防御率2.74、WHIP(1回あたりの与四球+被安打)1.08と安定した成績を残している。

 大谷は「今日は(ルーゴの)制球がすばらしかったし、打線として粘り強くいけなかった。そのなかで、0−2(2点を追う展開での5回の第3打席)のフライが(スタンドに)入っていれば、また違った展開になったと思う。あと少し、押しきれなかった印象です」と悔しさをにじませた。その打席は、フルカウントから内角高めのカットボールを強く叩き、打球速度は110.6マイル(約178キロ)と強烈だったが、打球角度が45度と高く上がりすぎた。

 実はドジャース首脳陣は、今後、大谷が「投手・DH」として出場する試合では、打順を1番から下げることを検討している。ホームゲームでは、初回の登板後すぐに打席に立たなければならず、この日のアウェイでも、2回の登板を終えた直後に3回の打席に入り、空振り三振に倒れた。体力的にも精神的にも余裕がないのではないか。

 しかし大谷にとってはそれが自然な流れだという。「結果は悪かったですけど、基本的にはDHで1回、1回、代打みたいに出るよりは、マウンドからそのままの流れでいったほうが、自分のなかではナチュラルな感じがします」と、自身の感覚を語った。

 いずれにせよ、ここまで3試合に登板し、計4イニングで被安打3、失点1という安定した成績を残している点は明るい材料だ。100マイルを超えるストレートを安定して投げ込み、多彩な変化球で打者を翻弄。2度目の手術からの復帰に懐疑的だった人々の不安を払拭し、後半戦に向けて投手として十分な戦力になり得る姿を示している。

 つづく

このニュースに関するつぶやき

  • 凄いな二度の手術後ここまでやるなんて!なみなむならぬ努力尊敬します!
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