石丸伸二氏率いる「再生の道」が都議選全滅、都知事選の“166万票”とは?「嫌われ者は“時代の空気と制度”の産物」

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2025年07月01日 09:11  日刊SPA!

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写真/産経新聞社
昨年の東京都知事選で約166万票を獲得し、2位に躍進した石丸伸二氏(42)が率いる新党「再生の道」は、都議選に向けて政策は掲げず、綱領は任期を2期8年までとする多選の制限のみとして42人の公認候補を擁立したが、全42候補が落選するという厳しい結果に終わった。
安芸高田市長時代に市議会での強い発言や記者への詰問で注目を集め、SNSを通じて既存政治に不満を持つ層の支持を獲得した石丸氏は、都知事選で予想を覆して注目を浴びた。その勢いを背景に、今年1月には「政治屋の一掃」を掲げる新党を設立。多選禁止のみを掲げ、党議拘束も課さない「個人事業主の集合体」と位置づける独自のスタイルを打ち出した。

全国から1128人の応募を集め、YouTubeで公開面接を行うなど話題性はあったが、都議選では知名度不足と地域浸透の難しさが壁となった。候補者は短期間で準備を迫られ、資金面や組織力の弱さも響いた。

この結果を受けて、ノンフィクションライターの石戸論氏は、都知事選で石丸氏が多数の票を集めた背景に「消極的支持」が多かったのではないかと読み解く(以下、石戸氏の寄稿)。

◆「嫌われ者」は時代の空気と制度の産物だ。期待と幻滅を繰り返す

相変わらず既視感のある議論が繰り返されている。

東京都議選で社会に大きな衝撃を与えたのは、参政党が3議席を獲得したこと、そして昨年7月の都知事選で話題を呼んだ石丸伸二・前安芸高田市長が立ち上げた新党「再生の道」が自民党に次ぐ大量の候補者を擁立しながら議席0に終わったことだ。

私は選挙前に参政党代表の神谷宗幣氏を取材していた。彼らは反ワクチン・反科学、オーガニック好き、ベタな保守主義であるが、実際の社会でそうした考えを持つ人々は一定数いる。SNSなどを駆使した“空中戦”の政党だと評価されがちだが、大事な点は神谷氏も支持者もオーソドックスな地道かつ継続的な選挙戦を重視したことだ。

彼らの戦い方は国政ならば比例、一つのブロックから複数人が当選する地方議会選挙と相性がいい。一定数いる極端な思想を持つ有権者に対して地道に訴えればいいからだ。しかし、議席は得られても多数派にはなり得ない。他党と連携しない限り政策は実現できないからだ。批判する人々が懸念するほどの影響力は、大胆に今の路線を変更しない限りは持ち得ないだろう。

◆都知事選の石丸票の多くは「消極的支持」か

衝撃の度合いでいえば、前回都知事選で165万票も獲得しながら、今回の都議選では送り込んだ候補者を一人も当選させることができなかった石丸氏のほうがはるかに大きい。「再生の道」が獲得した総票数は40万票余りだが、制度の違う選挙での単純比較にさほど意味はない。読み解けるのは都知事選の票には「消極的支持」も多数含まれていたということだ。

個別の選挙区で見れば、出口調査で議席獲得の可能性を残す程度には“善戦”したが、新しく熱のある支持層を掘り起こすことはできなかった。斬新な理念をぶち上げても、有権者に響く政策や地道な組織づくりが伴わない限り、“現象”は生まれないということか。

私は維新の吉村洋文代表、れいわの山本太郎代表ら熱烈な支持者を集めながらも強烈なアンチを生む人々を「嫌われ者」として取材し、ルポを書いてきたが、結局のところ彼らは時代の空気と制度の産物だ。現状の変革への期待と幻滅を繰り返して、大きな支持を得られないまま、やがて収まるべき議席数に収まる。両党はともにかつての衝撃はなく、今回の都議選で議席を獲得することができなかった。

今後の動向を注視したいが主義主張は違うにせよ神谷氏、石丸氏もまた先例の道を辿っているのかもしれない……。これが暫定的な仮説である。

【石戸 諭】
ノンフィクションライター。’84年生まれ。大学卒業後、毎日新聞社に入社。その後、BuzzFeed Japanに移籍し、’18年にフリーに。’20年に編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞、’21年にPEPジャーナリズム大賞を受賞。近著に『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)

このニュースに関するつぶやき

  • 都知事選の時は、自民候補は嫌、小池も嫌、宇都宮はもっと嫌、という票の受け皿だった。今回はその受け皿に大きな割れがある事がバレただけ。
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