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住民が北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを求め、2006年に全国初の運転停止を命じた訴訟の記録が廃棄されていたことが2日、金沢地裁への取材で分かった。事件記録を永久的に保存する「特別保存」に認定されなかったためで、地裁は「当時の基準に照らし合わせて、期限を迎えたので16年度に廃棄した」としている。
訴訟は、1999年に志賀町民らが金沢地裁に提訴。06年3月の判決では国の耐震指針の不備を指摘し、「想定を超える地震で原発に事故が起こり、原告らが被ばくする具体的可能性がある」と、国内の商業炉で初めて運転差し止めを命じた。2審では住民側が逆転敗訴し、最高裁も上告を棄却、10年に確定した。
民事訴訟の記録の保存期間は原則5年。史料的価値が高いと判断した記録は「特別保存」として永久的に保存できるとされているが、実際は「例外中の例外」だった。
しかし、22年に全国で重大少年事件の記録が廃棄されていたことが判明したのを機に、最高裁は特別保存の運用を変更。「国民共有の財産」という考え方を加えた。また外部から特別保存の要望を受け付け、第三者委員会に意見を求める仕組みも整えた。
今回、金沢地裁・家裁は新運用で初めて特別保存する記録を約100件認定し、6月25日に公表した。地裁によると、基準は主要日刊紙2紙以上が報道、最高裁判例集に掲載された――などとしているが、志賀原発運転差し止め訴訟は廃棄されていたため対象外だった。
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志賀原発2号機差し止め訴訟で、当時弁護団長を務めた岩淵正明弁護士は「福島の原発事故前に差し止めを命じた貴重な記録だ。同種の訴訟は今でも続いており、保存していれば参考になる記録だった」と話した。
金沢地裁は、特別保存を求める事件について12月25日まで要望を受け付けている。認定されなかった記録は順次廃棄されるという。【島袋太輔】
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