
子どもにスマートフォンを持たせるとき、親は安心と同時に不安も感じるものです。連絡が取れるという安心感がある一方で、思うように意思疎通ができず、もどかしさに直面することもあります。中学に入学した息子にスマホを持たせたDさん(40代・千葉県)も、そのギャップに悩まされました。
【漫画】スタンプ1つでも返してくれたら、親としては安心するのに…(全編を読む)
親子の連絡手段としてのスマホ、その理想と現実
Dさんは、息子の中学校進学にあたり、スマートフォンを持たせることにしました。息子が小学3〜4年生のころから、周囲では自分のスマホを持ち始める友達が出てきており、息子も自分専用のスマホを欲しがっていました。しかし、地元の小学校に通っている間は必要がないと判断し、「希望の中学に合格したら買ってあげる」と約束していたのです。中学からは公共交通機関で通学するようになるため、安全確保の観点からも導入を決めました。
スマホの位置情報共有アプリは、親にとって安心材料の一つです。登下校の動きが地図上で確認でき、「学校に到着した」「学校を出た」といった地点を通過すれば、スマホに通知が届くよう設定しました。こうした機能があれば、子どもの安全確認がしやすくなるはずでした。
しかし、部活動が始まって下校時刻が日によって変わるようになると、「何時ごろ帰るのか教えてね」とDさんが声をかける機会が増えていきました。そんなとき、息子から返ってきたのは意外な一言でした。
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「位置情報、見ておいて」
つまり、「自分からの報告はしないよ」という宣言です。
テキスト返信ゼロの理由は「既読」?
Dさんがさらに戸惑ったのは、LINEの使い方でした。家族との連絡手段としてLINEを利用するようにしましたが、Dさんから送ったメッセージに対して、息子から返信がほとんど返ってこなくなりました。
「今どこ?」「帰りは何時ごろ?」といった確認メッセージを送っても、既読がつくだけで返事はありません。見ているのかどうか不安になり、「ちゃんと『見ました』とか『はい』とか返事をして」と伝えると、息子から思いもよらぬ返答が返ってきました。
「既読がついていれば、見たってわかるでしょ?」
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まるで「既読」が「返信」の代わりであるかのような発言でした。この言い分に、Dさんはあきれてしまいました。多くの親世代が、同じような違和感を抱くのではないでしょうか。
「既読=返事」は中高生の新常識?
近年では、「既読をつけた=反応した」という感覚が中高生のあいだで広がっているといわれています。返信をしないことに特別な悪意があるわけではなく、それが彼らにとっての自然なコミュニケーションになっているようです。親の「返事が欲しい」は、子どもにとっては「何度も同じことを言わせないでほしい」と受け取られている可能性があります。
しかし親としては、送ったメッセージに「はい」「わかった」などと一言あるだけで、どれほど安心できるでしょう。スタンプ1つでもいいのです。このギャップが、親子間のすれ違いを生む原因となっているのではないでしょうか。
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子どもとのLINEの使い方でギャップがあったことはありますか。
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▼神奈川県・50代
「今日は何時に帰るの?」と聞いても「6」とだけ返信が来て終了。こちらは今どこにいるのかとか、部活があったのか、なども含めて聞いているつもりなのに、会話のキャッチボールにならず、事務連絡のような対応に寂しさを感じます。そして知らされた時間もいいかげんすぎてびっくりします。
▼栃木県・50代
ちょっとした確認があって電話すると、受信後すぐ切られたので、「都合が良い時に電話して」と聞くと、「LINEで送って」と言われることが多いです。こちらとしては、短く済むことは電話のほうが早いという感覚ですが、子どもにとっては「LINEのほうが気楽で電話はめんどくさい」と思っているようです。
▼東京都・40代
友達とのやりとりには即レスなのに、こっちからの連絡にはなかなか返信が来ないことがあります。また、携帯でゲームしているときにポップアップが表示されるため内容は確認しているはずなのに、無視するのは当たり前のようでした。こっちは緊急で連絡しているのに、後回しにされていると怒りがこみ上げてきます。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)