
みなさんは高校生の頃、将来の夢を明確に思い描いていたでしょうか。作画担当のグミさん、原作担当のマルさんの2人で活動するグミマルさんの連載作品『MOGAKU』は、父の病死や母の交通事故をきっかけに、高校生の主人公が競輪選手を志すという物語です。以前X(旧Twitter)に第1話がポストされると、1.7万もの「いいね」が寄せられています。
一か八か…家族を守るために
父を病で亡くした4人兄妹の長男である「桐生一成」。高校生ながらも新聞配達のバイトに勤しみ、スナックで働く母とともに家計を支えていました。家族を第一に考えていた一成は、学校で配られた進路調査票の提出を求められたものの“なりたい将来の姿”が思い描けないでいたのでした。
その後、進路について悩みながら新聞配達を行っているなか、偶然にもスナックの仕事を終えた母と遭遇。そして、笑顔で別れた矢先、母は車に轢かれてしまいます。
命に別状はなかったものの、後遺症が予測され、さらに歩けなくなる可能性も。このままでは家族を支えていけないと思った一成は、新聞配達の上司にあたる神山に「高校辞めます!」「なので正社員で雇ってください」「お金が足りないんです」と、涙ながらに頭を下げるのでした。
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翌日、一成の覚悟を認めた神山は、彼をあるところに連れていきます。その場所とは「競輪場」。元競輪選手だった神山は一成の素質を認め、「君なら30億稼げるかもしれませんね」と競輪選手になることを勧めます。
しかし、選手になるには2カ月後に実施される競輪養成所の試験に合格することが必須。無謀な挑戦とも言える状況を踏まえ、神山は「挑戦するかは君次第です」「その覚悟がないなら まだ真面目に働いた方が家族のためになりますよ」と一成にゆだねます。
そして、後日、一成は高校の担任の先生に、まだ未提出だった進路調査票を出すように求められ、第一志望の欄に「競輪選手」とだけ書いた調査票を提出するのでした。
読者からは「とにかく真面目で真っ直ぐな一成に感動した」「家族のために生きる姿勢を見習いたい」など好評の声が。そこで原作を担当したマルさんに、同作が誕生した経緯などについて話を聞きました。
進路調査票の第一志望に「お笑い芸人」と書いた高校生時代のマルさん
―同作が誕生したきっかけを教えてください。
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父が競輪選手だったこともあり、競輪は自分にとって昔から身近な存在でした。取材を進めていく中で、競輪選手には本当にさまざまなバックボーンを持った人たちがいることを知り、ますます惹かれていきました。もともと、自分は夢を追うことの難しさやそれでも夢を諦めずに走る人間のかっこよさを描きたいと思っていたので、競輪という世界はそのテーマととても相性が良く、自然と漫画の題材として選びました。
―第1話の中で、特に思い入れが強い場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。
一成が進路希望調査票に第1志望「競輪選手」とだけ書き、第2・第3志望を空欄で提出するシーンには強い思い入れがあります。というのも、私自身も高校時代に第1志望に「お笑い芸人」と書いて提出した経験があるからです。その瞬間、自分の人生がレールから外れていくような感覚と、先の見えない不安に襲われ、とても緊張したことを覚えています。それでも一歩を踏み出すことの格好良さ、覚悟を決めることの尊さを、このシーンに込められたらと思いながら描きました。
―同作は「チャンピオンクロス」で連載されていますが、毎日どのようなスケジュールで過ごされているのでしょうか?
原作担当の私は1週間にプロットとネームを1話作り、毎週月曜日に作画担当のグミの作業場に集まり、私の作ったネームをもう一度相談しながら一緒に作り直します。その夜中に担当編集にネームとプロットを提出し、編集からの修正案を受けてブラッシュアップしています。休みといえる時間は、グミと週に1本映画を決めて観ておき、月曜にその感想を語り合う時間です。
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―読者にメッセージをお願いいたします。
読者の皆様に読んでよかったと思っていただける作品を本気で人生をかけて作っていきますので、応援していただけたらうれしいです。
(海川 まこと/漫画収集家)