ビーフストロガノフはなぜ強そうに感じる? ドラクエ「バラモス」、FF「ゴルベーザ」etc…強そうな名前には共通点がある!【解説:言語学者 川原繁人】

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2025年07月23日 12:10  ニコニコニュース

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 ふと思うのです。ビーフストロガノフってなんだかすごく強く見えませんか?

 まるで『モンスターハンター』シリーズに出てくる歴戦のモンスターのような強そうさを感じます。
 料理でいえばゴルゴンゾーラもとても強そうに見えます。
 ビーフストロガノフとゴルゴンゾーラは、『モンスターハンターワイルズ』のホームページを開いて「アルシュベルド」や「レ・ダウ」「ヌ・エグドラ」の隣に書いてあっても違和感がないかもしれません。

 「へー最新作にはそんなモンスターが出るんだ」くらいに思ってしまうかもしれません。

 この強そうさはなぜ感じるのでしょうか。
 とても気になります。

 そして、あらためて考えてみると、実は創作の世界には名前だけで強そうを感じるキャラクターがあふれているじゃあないですか!
 例えば『ドラゴンクエスト』の「バラモス」や「オルゴ・デミーラ」。『ファイナルファンタジー』なら「ゴルベーザ」。
 漫画では『BLEACH』の「グリムジョー・ジャガージャック」や「山本元柳斎重國」など。

 また、同じくらい可愛さも溢れていることにも気づかされます。

 『ポケモン』の「ピカチュウ」や「プリン」、「パラス」、「ピッピ」。同じくゲーム『アークナイツ』であれば「ぺぺ」や「パピルス」。
 アニメの『プリキュア』なんてもうタイトルから可愛さを感じます。

 考え始めると他にも言葉の音だけで気になるものがいくらでも出てきてしまいます…!
 じゃあ、さわやかさ濃厚さはどんな言葉、音なら感じるのだろう……。

 しかし、筆者にはなぜわれわれ人間がこのように言葉の字面から特定の感想が想起させられるのかわかりません。
 そこで今回はこの疑問を解決すべく、言語学、音声学、認知科学の専門家である慶應義塾大学言語文化研究所 教授川原繁人先生にインタビューに行ってきました!

慶應義塾大学言語文化研究所 教授 川原繁人先生

 川原先生は『「声」の言語学入門:私たちはいかに話し、歌うのか』などのご自身の体験談を絡めながら楽しく言語学を学べる本を執筆されています。

『「声」の言語学入門:私たちはいかに話し、歌うのか』

 今回のインタビューでもなぜかっこよく見えるのか、強そうに感じるのか、さわやかさや濃厚さはなどの元々浮かんでいた疑問についてのお話だけでは終わりませんでした。
 かわいさや、荘厳さはメイド喫茶で働いているメイドさんの名前にヒントがあるのではないかと考え、その答えを探すべくメイド喫茶に通い詰めて謎を解き明かしたお話にも発展しました!
 ここでしか読めない言葉から感じる強さやかわいさ、メイド喫茶にあった萌え声とツン声の真実をぜひ最後までご覧ください!

■『アルシュベルド』はなぜ強そうに感じるのか

ーーさっそくですが、どうしてボスとかモンスターの名前ってかっこよく見えたり、強そうに感じるのでしょうか?
例えば『アルシュベルド』とか『オルゴ・デミーラ』とか。


狩猟解禁まであと1日!#アルシュベルド #モンハンワイルズ pic.twitter.com/ZCvfZ4MWJ9

— プレイステーション公式 (@PlayStation_jp) February 26, 2025

川原:
 はい。一つの要素としてあるのは間違いなく『濁音』ですね。名前に濁音がはいると強そうに聞こえるんです。

 がぎぐげご ばびぶべぼ だぢづでど

 一番わかりやすいのが『ポケモン』で、進化すればするほど名前に含まれる濁音の数量が増える傾向が統計的にも確認できるんです。

 ただ、強そうに聞こえる、かっこよく聞こえる要素は濁音だけではないですね。例えば『モンスターハンターワイルズ』に出てくる「ヌ・エグドラ」や「レ・ダウ」なんですけど、これはおもしろいですね。「ヌ」や「レ」がいいですね。


「モンスターハンターワイルズ」好評発売中!

氷霧の断崖「凍峰竜 ジン・ダハド」
油涌き谷「獄焔蛸 ヌ・エグドラ」
緋の森「波衣竜 ウズ・トゥナ」
隔ての砂原「煌雷竜 レ・ダウ」

生態系の頂点に君臨するモンスターたちに立ち向かえ。https://t.co/ZzEam0XkIr#モンハンワイルズ #MHWs #MHWilds pic.twitter.com/EJxbndMvxx

— 【公式】モンスターハンターワイルズ (@MH_Wilds) March 9, 2025

おそらくなんですが、これは一般的じゃない感を演出しているんです。

ーー一般的じゃない感というのはどういうことでしょうか。

■『ヌ』や『レ』一文字の日本語が表すものは非日常や異世界感

川原:
 日本語って1文字の単語が少ないんですね。「胃」や「木」みたいな単語はありますけど、それらも伸ばして発音されるんです。
 『胃痛い(いーいたい)』『木倒れた(きーたおれた)』みたいに。苗字だと一文字っていうと一般的なのは「李」さんくらい。こういう観点から見て、「レ・」「ヌ・」は一般的じゃない感が出ているんだと思います。
 極端ですけど、「山田」とか「鈴木」と「レ・」や「ヌ・」ではどっちが非日常感がでるかと言えば明白ですよね。

ーーなるほど。それでは一文字以外ではどんな要素があると非日常感はだせるのでしょうか。

川原:
 厨二病的な用語を使うと、音素配列論的制約っていうのがあります。

ーーなんだかすごい難しい言葉が出てきましたね(笑)

川原:
 音素配列論的制約。何か必殺技として叫びたくなりますよね。
 言葉って、いろんな音を使いますけどその並べ方にも決まりがあるんです。

 音素をどう配列するかに関する決まりですから、音素配列論的制約といいます。
 例えばちっちゃい「ッ」あるじゃないですか。これは、ら行の前にはほとんどこないんです。

ーー考えてみるとあまり思いつきませんね。

川原:
 そうなんです。ですが、近年日本のイタリアンレストランで使われだしたんです。例えば細長いリボン状の平打ちパスタの「タリアテッレ」とかです。
 ら行の前に小さい「ッ」がありますよね。

ーーおおっ一気にイタリア感が出ますね!

川原:
 そうなんです。
 イタリア語って発音の長いLがあるので、それを真似することで…何というかイタリア感を出しているんだと思います。
 もともと日本語では、ら行の後に小さい「ッ」促音を使う事ってない。
 しかし、そこをあえて使うことでイタリア感を出すみたいな。
 これはマーケティングの一つの手法じゃないかなと思います。
 どれだけ意識的にやっているかわからないですけどね。
 とにかく、日本語で普段許されていない音の配列をあえて使うということで異世界、非日常感を出すというのはあるのではないかと思いますね。「レ・」や「ヌ・」はそれに該当しそうです。

ーーなるほど、そういう手法もあるんですね! 日本語では聞きなれない音も非日常感になる。

■強さは長さも重要! 『山本元柳斎重國』が強そうなのはそういうこと

ーーここまで濁点や一文字で強さや異質さ、聞きなれない音を使う事でも非日常感が出るということがわかりました。では強さに関してなのですが、濁点を使わなくても文字だけで表現できるものなのでしょうか。

川原:
 最近ちょうどそれに関連する実験をたところでした。
 存在しないポケモンの名前を考えて、濁音がどのくらい入っていると進化後に聞こえるのか検証したんです。その時、3文字の名前で3文字とも濁音でも進化後と答えた割合は半数にとどまったのです。
 結果として、進化後と感じるためには名前の長さも重要だという事がわかったんです。
 なので、濁音がなくても名前を長くすることで強さを表現することは可能だと思います。

ーーだから濁音+名前の長さで漫画『BLEACH』の『グリムジョー・ジャガージャック』は強そうに見えるんですね。

出典:久保帯人/集英社『BLEACH』24巻 中央がグリムジョー・ジャガージャック

川原:
 歴史上の人物ですが『マルクス・アウレリウス・アントニヌス』なんかもそうですね。
 ニコニコ的にといっていいかはわかりませんが、『化物語』をニコニコ動画で見るとヒロインの『戦場ヶ原ひたぎ』に対しては『強そう』というコメントがついているんですよね。

© 西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト 右:戦場ヶ原ひたぎ


 この『戦場ヶ原』の4漢字の苗字が強そうな印象を与えるんだと思います。
 『鬼滅の刃』に出てくる柱のキャラクター達も、名字か名前が3文字の名前が圧倒的に多くて、もっと普通っぽい苗字2文字+名前2文字の名前は『富岡義勇』と『宇随天元』の二人しかいないんです。これは強さを出すためにおそらく意識的にやったものなのではないかと思っています。

ーー『甘露寺蜜璃』、『煉獄杏寿郎』、『悲鳴嶼行冥』、『伊黒小芭内』、『不死川実弥』、『時透無一郎』、『胡蝶しのぶ』あっ本当ですね。

川原:
 漢字も難しいものを使っていて画数が多い傾向にあるんですよ。
 これが意識的かどうかはわからないんですけど、漢字の複雑さで強さを表現するということもしているんじゃないかと思っています。

ーーなるほど! 強い名前を作るには『濁音』+『長さ』に『文字の難しさ』を加えるのが最適解ということですね!
確かにBLEACHの『山本元柳斎重國(やまもとげんりゅうさいしげくに)』は強く見えます(笑)

■『プリキュア』が可愛く見えるのは半濁音が入っているから

川原:
 強そうとは逆に『パピプペポ』を使えばかわいくなります。ポケモンのフェアリータイプにはこの特徴を持つモンスターが多く見られます。「ピッピ」とか「プクリン」とかね。
 なので、強さを考えるなら半濁音をなるべく入れないことも必要ですね。
 もし、ドラゴンクエストに出てくる『バラモス』が『パラモス』だったらやっぱり強そうには聞こえないですよね。

 このかわいく感じる理由についてですが、『パピプペポ』というのは赤ちゃんが一番初めに出す音なんです。
 ちっちゃい赤ちゃんは両唇を使った音をたくさん出すんです。ここから赤ちゃんを連想して、かわいらしさにつながっているじゃないかと考えています。

ーーという事は料理の『ビーフストロガノフ』が強そうに見えるのも同じなんですね。長くて濁音が入っているから。

川原:
 その通りですね。あと料理でいうなら『ゴルゴンゾーラ』もそうですね。
 じゃあ、『ぺ』が入った『カッペリーニ』はどう感じますか?

ーーなんか……細かったり弱そうなイメージになりますね。

川原:
 そうですよね。逆に『ゴルゴンゾーラ』なんかは濁点が3つあるので強よそうに聞こえます。つまりドラクエの呪文の『ギガデイン』と同じです。
 ゴルゴンゾーラとは、多くのシリーズで勇者専用の最強呪文でもある、あのギガデインみたいなものなんですね(笑)。

ーー(笑)だから強そうに見えるんですね。ここまでで『強さ』『かわいさ』について理解できました。では、『さわやかさ』を表すにはどうすればいいのでしょうか。 

■『サラダ記念日』はさ行だから「さわやか」だった出典:俵万智/河出書房新社『サラダ記念日』

川原:
 『さわやかさ』はもう圧倒的に『さ行』がダントツですね。
 国語の教科書にも載っている短歌『「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日』で有名な俵万智さんの『サラダ記念日』もここから来ているらしいんです。『サラダ記念日』って本当はサラダじゃなくからあげだったんですよね。

 恋人にからあげ弁当を作ってあげたら喜んでくれた。で、その気持ちを表していたんですって。
 その気持ちが大事だったんですけど、からあげだと、さわやかな恋心に合わないからサラダにしたらしいです。


2 鶏の唐揚げを、ちょっと工夫してカレー味にしたら「お、これいいな」とボーイフレンドに褒められて嬉しかった。そんなささやかなことがきっかけで、こういう気持ちを短歌にしたいと思いました。

— 俵万智 (@tawara_machi) July 6, 2014

 あと、7月6日なんですよね、サラダ記念日って。サラダがおいしいのは6月と7月で、どっちにしようかなって考えたときに、サラダと7月(しちがつ)だと、語頭でさ行でそろう爽快感があると。そうやって、あの歌のさわやかな雰囲気を出したってご本人がおっしゃっていました。

ーーたしかに『から揚げ記念日』だとこってりしちゃいますね。

川原:
 海外の実験でも似たような結果が出ていて、「おいしいアイスクリームフリッシュとフロッシュ」という実験なのですが、フリッシュとフロッシュだとどっちがクリーミーで、どっちがすっきりさわやかですか?
 という実験をしたところさわやかと感じるのは『フリッシュ』でクリーミィと感じるのは『フロッシュ』なんです。
 これは、アメリカ人でも日本人でも同じように感じる人が多い。
 クリーミーなアイスは「オ」が似合って、さわやかなのは「イ」が似合うという。
 実際に広告実験すると、フロッシュのほうがクリーミーアイスとして買ってみたいって購買意欲が上がるという結果もでているんです。
 たった一文字違うだけで受け取る印象が変わるんですね。

 これと同じように音によって受け取る感覚の違いを調べるためにメイド喫茶の声を分析したことがあるんです。

■衝撃を受けたメイド喫茶! 萌え声とツン声の違い

ーーそれすごい気になりますね。ぜひお聞きしたいです!

川原:
 ことの始まりから話すと、2010年、メイド喫茶が一般の人にも流行りだしたころ、神田で友人と食事していると、「メイド喫茶って知ってる?」って話になったんです。
 当時アメリカに住んでいたので知らなくて、それで行ってみるかって話になって、すぐに秋葉にGO!しました。
 そうしたら、メイドさんたちがチラシを配っている声から、なにからなにまで衝撃を受けて「これは分析するしかない!」ってなったんです。

 まずは声を分析するために『萌え声』『ツン声』を演じ分けてもらったんです。

ーーツン声はツンツンしている感じの声でしょうか?

■萌え声とは高い声でツン声は低い声になりやすい

川原:
 そうですね。ツンデレキャラのツンツンした感じの声です。そして、分析してわかったのが、萌え声は明らかに地声より高いんです。逆にツン声は地声より低くなるんです。
 萌え声は声の高さでかわいさを表現していて、低い声はツン感や安定感とか威圧感を表しているんです。
 この研究をしていたおかげで、NHKで放送されていた『ろんぶ〜ん』に出演することになりました。
 その際、あっとほぉーむカフェのレジェンドメイドのhitomi様と写真を撮らせて頂いたんですよ。
 hitomi様は、今ではメイド喫茶での一般儀礼ともなった、運ばれてきた食事や飲みものに『おいしくな〜れ萌え萌えキュン』と愛を込める「あいこめ儀式」を発明した偉人です。


メイドhitomiにとってのプロフェッショナルとは… https://t.co/cKmobfr9V3

— hitomi(志賀 瞳)🐰🎀 (@jjhitomin) June 11, 2019

 ロケしたときに、hitomi様が対応してくださって、その縁で自分のスマホでツーショット写真を撮らせてもらったんですよ!
 これがどれだけ快挙か学術の世界では評価されないのが悔しいですが、この記事の読者ならわかってくれる人も多いかと……。

一同:
 爆笑

川原:
 hitomi様が「いいですよ」って。お店の人とお客さんじゃなくて。プロ同士として撮りました。
 もう女王と謁見ですよ(笑)

ーーすごいです(笑) なんだか先生の研究っていわゆる、当時言われていたオタクコンテンツとひもづいてることが多く感じますね。

川原:
 そうですね。たかとらさんというアキバのメイド喫茶を全部リスト化している人がいらっしゃるんですが、私、たかとらさんが出したメイド喫茶に関する同人誌『メイドカフェ批評』に論文を載せたことあるんですよ。

『メイドカフェ批評』

ーーちなみにどういった内容の論文だったのでしょうか。

川原:
 先ほど話したツン声と萌え声の使い分けについてと、それにメイドさんの名前の研究です。
 共鳴音阻害音っていう区別があるんです。
 阻害音というのは濁点がつけられる音と、濁点そのもの。共鳴音はま行とか、な行とか、ら行とかは濁点つけられない音を指します。
 共鳴音のほうが萌えメイドによく似合い、阻害音のほうがツンメイドによく似合うのではないか実験をしたんです。

ーーどのようにして共鳴音と阻害音の実験をしたのでしょうか。

川原:
 ええ、まずは仕事としてメイド喫茶にガチ通いをしたんです。
 で、どうしてガチ通いすることになったかというとこれにはちゃんと理由があって、英語の研究で、女性名において共鳴音のほうが多い、そして共鳴音の含まれた名前のほうがより魅力的と判断されるっていう論文を読んだんです。
 それで、秋葉原のメイドさんはこの法則を有効活用しているのではないかと思ったんですね。
 ということで、日本人の一般的な女性の名前と秋葉原のあっとほぉーむカフェの女性の名前を比較したんです。

 私の初めの仮説としては、メイドさんの名前のほうが共鳴音率が高いと思ったんですよ。
 共鳴音のほうがかわいい音なわけですからメイド名でも率が上がるはず、と。
 ただ、実際のところは共鳴音の率が高くならなかったんです。
 でもここであきらめちゃいけない! と思ってメイド喫茶に通い始めたんです。

 それでメイドさんから直接色々な話を聞いたんです。どういう風に名前をつけているの?とか。
 そうすると、『メイド=萌え』という前提が非常に短絡的だったと気づいたんですね。

 彼女たちが表現しようとしてるのは萌えだけではないと。
 具体的には、ツンツンしたタイプを売りにしてる人もいて、例えば、『ギンコさん』という人にお会いしたんです。

ーー萌えって感じではないですね。

■共鳴音は萌えを阻害音はしっかりものに合いやすい

川原:
 フロアリーダーとしてしっかりしたタイプの方で、全体を見渡すお姉さん的な感じでした。こうして考えると、ギンコさんって名前ちょっと頼りになる、素敵なお姉様タイプのメイドに聞こえるじゃないですか。

 だから、「共鳴音=萌え」という連想は間違っていないけど、メイドさんが目指しているのは、それだけじゃない。
 そこで、「共鳴音=萌え」「阻害音=ツン」というふうに仮説を変更したんですね。
 ただ、あっとほぉーむカフェのメイドさんって、当時100人以上いたので全員にタイプをお聞きするわけにはいかなくて……。

一同:
 (笑)

川原:
 そこで、ワマナちゃんとサタカちゃんとか新しいメイドさんの名前を作って、メイドさん十何人かにどっちが萌え系でどっちがツン系ですかっていうふうに聞いたところ、共鳴音が萌え系で、阻害音がツン系だっていう統計的な相関が検出されたんです。
 そして「ろんぶ〜ん」のロケで発見したのがメイドさんは自分のキャラクターに合った名前を選んでいる可能性が高いということ。
 萌え系のキャラクターのメイドさんは共鳴音を、ツン系のメイドさんは阻害音の名前を選んでいるんです。

ーーそうなってくると鶏が先か卵が先かじゃないですけど、名前が先なのかキャラが先なのかみたいな話になっていきそうですね。

川原:
 それもあるのかもしれません。
 メイドさんたちって別に萌え声って練習するわけじゃなくて、フロアにいながらにして自然に学んでいくものらしいんですよ。

 だから、自分が目指すタイプがあって、それに合わせて声を変えていって、自分が萌えで勝負したかったら高めになっていくし、阻害音タイプでやるんだったら、地声か低めで勝負していくというようなことが、自然に身についていく様子でした。

ーーめちゃめちゃ行きたくなってきました(笑)
ちなみにメイド喫茶は普通に好きなんですか?

川原:
 好きですね! 今は結婚して子どもいもるので、通い詰めるのは不可能ですけど、こないだは娘を連れて一緒に行きましたよ。
 妻も「メイド喫茶見学」という理由にかこつけてデートに誘った感じです。
 多分、言語学者の中で一番萌え萌えきゅんしたんじゃないかと思います。

一同:
 (笑)

 名前からなんとなく感じる『かっこよさ』。言われてみれば確かに強そうなキャラクターは長くて濁点が多いなと思わされる結果となりました。
 『かわいさ』は半濁音「ぱぴぷぺぽ」が、『さわやかさ』はさ行が。
 日常の中で誰もが漠然と思っていることが今回のインタビューで言語化をすることができました。
今回得られた答えだけでも貴重な知識なのですが、それ以上に驚いたのがメイド喫茶に萌え声とツン声の真実があることを発見し解明してしまう川原先生の言語学のプロとしての着眼点でした。
 本稿を読んだ方は『声と名前には関係性がある』という事を誰かに話してみてはいかがでしょうか。



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