
「自閉症育児は、こういうのに、金がかかるのですよ。壁紙もボロボロ…」
そんな投稿がSNSで大きな共感を呼んでいます。
投稿したのは、知的障がいを伴う自閉症児2人を育てる父親、KOSHIさん(@koshi18031)。会社員として在宅勤務をこなしながら、2人の子どもの育児と家事を担う“主夫”でもあります。
呼び鈴扱いの給湯器、頭突きで割れるテレビ
SNSには同じような境遇の保護者から、次々と共感の声が寄せられました。
|
|
「呼び鈴扱いで給湯器を操作される」「インターホンを何度も押されて壊された」「車内で暴れてクーラー修理に40万円」「賃貸住宅の壁に穴が空いた」「学校のガラスを割られた」…。
育児に「壊れること」がつきまとう現実は、多くの人に知られていません。
実際、KOSHIさんの家庭でも、給湯器のリモコンは「風呂自動」「追いだき」ボタンを何度も連打され、浴室乾燥中にお湯が出てしまうなどのトラブルが絶えなかったそうです。「壊される前に…」と市販のカバーを取り付け、物理的にボタンを押せないようにするしかありませんでした。
壁紙は全室剥がされ、家電は次々と…
「壁紙はほぼ全ヵ所、剥がされました。追い打ちで油性ペンでの落書きもあります」とKOSHIさん。過去にはテレビを頭突きで2台壊され、タブレット端末はこれまでに5台以上が壊れました。「おしっこをかけられた」「投げられた」「上に乗ってジャンプされた」――壊され方はさまざまです。
トイレの個室ドアを体当たりで吹き飛ばした“伝説”も残っているといいます。歯ブラシも、強くかんでしまうため数日で使えなくなり、ハンドソープやシャンプーの中身もすぐに空に…。
|
|
壊れないように…親の工夫とため息
思わぬ破損を防ぐために、KOSHIさんは引き出しロック、アクリル板、発泡スチロール、緩衝材などを駆使しています。
「テレビの前に透明の保護板をつけたり、キッチンに入れないようにペット用の柵を使ったり…。それでも家具や家電が壊れると数万〜数十万円が飛びます。“修理や買い直し貧乏”ですよ」と苦笑いします。
何度も何度も注意しても、変わらない現実
行動をやめさせたいと、何度も優しく言ったり、きつく叱ったり…。けれども行動が劇的に変わることはありません。
「もう諦めかけているけど、何もしないわけにもいかないので注意は続けています。忙しいときにやられると、どうしてもイライラして怒鳴ってしまうこともあります」
支援制度はあるが、届きにくい現状
住宅の破損をカバーできる障がい児向け保険もありますが、KOSHIさん自身は「最近まで存在すら知りませんでした」というほど、情報は届きにくいのが現状です。
|
|
経済的な負担も深刻です。
「障がい児福祉手当があっても所得制限が厳しく、親が頑張って働いても支援は減る。これでは“働いたら負け”です。児童手当の所得制限は撤廃されたのに、なぜ障がい児家庭の支援は放置なのか…」
来年には放課後等デイサービスの利用料が大幅に増える見込みで、家計はさらに苦しくなるそうです。
「逃げないでほしい」親が届けたい本音
最後に、同じように障がい児を育てる人へのメッセージを尋ねると、KOSHIさんはこう答えました。
「障がい児の育児は、思い通りにならないことの連続です。だから、無理をしすぎないでほしい。頼れるところは頼って、手を抜けるところは抜いてほしい。そして、パートナーがいるなら、逃げないでほしいです。逃げたい気持ちはわかるけど、逃げないでほしい。私も役職を捨て、夜の付き合いを捨て、家庭を選びました。仕事よりも家事育児の方が、よほど大変ですから」
知ってほしい「壊れる育児」と向き合う現実
SNSの向こうにいる親たちが、笑顔の裏でどれだけの工夫と出費と孤独を抱えているのか。「壊れること」すら、わが子の大切な特性として向き合い続ける親たちがいることを、多くの人に知ってほしい――。
KOSHIさんの投稿は、そんな思いを静かに語りかけています。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)