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「参議院選挙で大敗したことで進退が注目されるなか、石破茂首相が7月23日に自由民主党本部で麻生太郎最高顧問、菅義偉副総裁、岸田文雄前首相の首相経験者らと会談。“退陣”との報道も飛び交いましたが、会談後に首相は『報道されているような事実は、まったくありません』と、続投に意欲を示しました」(全国紙記者)
強気の姿勢を見せた石破首相だが、“石破おろし”の動きは日を追うごとに拡大していると、自民党の中堅の参議院議員が語る。
「地方の県連支部からの突き上げ、青年局の若手議員からの執行部に対する責任追及、総裁選を求めるリコール署名の活動も始まり、総理はもはや“死に体”です。これでは国会が持ちません」
■「高市首相で“保守票”を取り戻したい」
自民党・中堅参議院議員は、こう予測する。
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「石破さんは8月の広島と長崎での平和式典、15日の全国戦没者追悼式まで務めて、8月下旬に退陣を表明し、9月上旬に総裁選という流れでしょう。ただし、時間がないことを理由に、両院議員総会のみで総裁が選出される可能性も高い。党員投票がない分、麻生さんや岸田さんの意向が大きく影響することになるのではないでしょうか」
有力候補としては、昨年9月の総裁選のときと同じ顔ぶれがあがっている。政治アナリストの伊藤惇夫氏が語る。
「“表紙”を替えるとなると、刷新感が大事。林芳正官房長官は優秀で有力候補のひとりですが、知名度が低くてパッとしない。知名度では小泉進次郎農水大臣が群を抜いていますが、政策に対してまともに議論できないレベルです」
立憲民主党のベテラン衆議院議員も同意見だ。
「小泉さんも林さんも現政権の閣僚なので、参院選大敗の責任の一端があり、出馬しない可能性が高い。コバホークこと小林鷹之氏は単純に若い。いずれにしても、将来の若手のエースでもあるので、敗戦処理投手のような登板は、自民党としても避けたいところでしょう。次期総裁は火中の栗を拾いながらの国会運営となるので、本音では次の総裁選は誰もが見送りたいはず。
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そんな中、後継候補として残るのは高市早苗さん。やはり“初の女性総理”は注目度が高いし、求められる刷新感があります。高市さんなら、支持率もある程度回復するかもしれません」
政治評論家の有馬晴海氏も補足する。
「選挙期間中も、高市氏はいろんなところでアピールしている姿を見かけたので、次を狙っていることは確か。麻生氏が高市氏を推す可能性も秘めています。
今回の参政党が大躍進したのは、自民党の比例代表でこぞって落選した杉田水脈氏、和田政宗氏、佐藤正久氏ら、保守系の票が、参政党に流れたから。『自民こそが保守』を打ち出す必要があり、それなら高市しかいないーーという声も、チラホラ出てきています」
一方、こうしたポスト石破の混乱が起きているあいだも、国民生活は日々の物価高と、増え続ける社会保険料に苦しめられている。
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有馬さんが続ける。
「今回の参院選は自公が進める『2万円給付』か、野党が掲げる『消費税減税』かを選択する選挙でもありました。選挙の大敗によって、自民党案の『給付』は中止となるでしょう。法案ができていないし、やれません。今後は消費税減税に向けての議論がしっかりなされるのか、注視しなければなりません」
有力視されている高市氏は、5月のインターネット番組で、食料品の軽減税率を0%に引き下げるべきだとの考えを示している。
「与党は衆参ともに過半数割れしているので、当面は、野党の政策を取り入れながら、政党ごとに連携、協力しながら国会運営することになるでしょう」(自民党の中堅衆議院議員)
消費税減税派の高市総裁なら、自民党と手を組みたい野党も出てくる可能性も。
■立憲の食料品0%案実現が最有力
一方、野党が連携して法案をまとめるシナリオも現実的だという。
「衆参両院で法案を通すためには、野党のほとんどすべてが組んで、多党連合を作らなければなりません。確かに野党ごとに減税率や減税期間、食料品など減税となる対象がバラバラですが、どこかで一致点を見つけてまとまらなければ、今回の選挙をした意味がなくなり、私たちの1票がムダになります」(有馬さん)
1票の重さは、前出の立憲民主のベテラン議員も痛感している。
「消費税減税をするという大枠は一致しています。選挙でも国民から支持されたわけだから、なんとしてでも成立させなければなりません。秋の臨時国会で法案を提出し、来年4月からの実施を目指します。実現性はかなり高いです」
そう自信をのぞかせる。それでは、各党の掲げた消費税減税案はどこまで現実的なのだろうか。
「まず新興勢力となった参政党は、段階的に消費税率を引き下げて廃止する方針。れいわ新選組は消費税を廃止するうえに、一律10万円給付を公約しています。
さすがに両党の消費税0%は財務省が許さないでしょう。いかに参政党が躍進しても、衆議院では議席が少ないため、大きな影響力を発揮することは難しいのではないでしょうか」(自民党関係者)
国民民主党は物価が安定して、実質賃金がプラスになるまで消費税を一律5%に、共産党は将来的には廃止を目指し一律5%にすることを公約に掲げた。前出の伊藤さんはこう指摘する。
「財務省は国民民主党の玉木雄一郎代表が大嫌い。元は財務官僚仲間であったのに、103万円の壁撤廃など、財務官僚が嫌う減税を実行するからです。同党が掲げる“一律5%”を受け入れるとは思えません」
もっとも現実的な減税案となるのは、立憲民主党と日本維新の会が掲げる“食料品0%”ではないかと、多くの専門家や政治家が予測している。
「両党とも減税率は同じですが、立憲民主は期間を1年、維新は2年と区切っています。
財務省としても、今回の選挙の結果を受けて、何かしらの消費減税をしなければ国民のガス抜きにならないと考えているはずです。
両党の案なら減税対象は食料品に限られているし、有期限で恒久的な減税ではないことから、受け入れやすい。立憲民主は衆議院にも一定の議席数を持っているし、野田佳彦氏と財務省は近いから、“食料品0%”で着地する可能性が高いと思います」(政治記者)
「新首相として有力視されている高市氏も、食料品のみ0%を公言しているため、消費税に関しては考えが一致します。
ただし、食品のみ0%となると税率のばらつきが起き、インボイス制度にも影響を及ぼします。しかも、それが1〜2年の時限的な処置ならば、手間ばかりが大きくなるというデメリットもあります」(自民党関係者)
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