限定公開( 3 )
アニメ『ドラゴンボールZ』のセル画風のテレビCMが話題になっている。そのCMとは、7月7日から関東エリアで放送が始まったエンジニア向け転職サービス「(ファインディ)」の『つくる人が、世界を面白くする。』で、作中のヒロインであり、発明家でもあるブルマが主役になっている。
このCMが注目されたのは、セル画で製作されていた往年の『ドラゴンボールZ』を彷彿とさせる映像だったためである。1980〜90年代、リアルタイムでアニメを見ていた世代が反応し、「懐かしい」「凄い」「どうやって作っているんだろう?」と盛り上がっているというわけだ。
近年、“昭和・平成レトロ”が何かとブームになっている。テーマパークでは昭和の街並みを再現した例もあるし、家具や家電製品まで昭和の時代のもので揃えて生活する人もいる。セル画風のアニメは昭和および平成初期の時代を象徴する存在といえ、熱視線が注がれているのだ。
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過去にリアルサウンドブックで取材を行った「六方画材」の店主・高橋俊成氏は、一度は失われたセル画の絵の具などを復活させたことでも知られる。高橋氏は専門店を渋谷にオープンさせたが、開店以来、絶えず売り上げがあるという。昨今のセル画ブームをどう見ているのか。
「かつてTVアニメは2000年頃まで、専用絵の具によるセル画を一枚一枚手塗りし、フィルムカメラで撮影していました。現在は彩色・撮影ともCG技術に置き換わっています。四半世紀を経て、CG技術の発展により、手塗りの筆跡やアナログ撮影のノイズなど、当時の映像の空気感をコンピューターでも再現できるようになりました。
セル画を知らない若い世代には新鮮な着彩スタイルとして、当時を知る世代には懐かしい表現として、幅広く受け入れられています」
こう高橋氏が話すように、アニメの制作手法がアナログからデジタルに転換した過渡期は2000年代前半ごろと言われている。リアルタイムで、デジタルのアニメしか見てこなかった世代も増加している。そんなデジタル作画のアニメに見慣れている層には、セル画特有の塗りや風合いがかなり新鮮に映るようだ。高橋氏はこうも指摘する。
「ご紹介のCM映像がどのような手法で制作されたかは不明ですが、こうしたセル画への関心の高まりを意識した演出なのかもしれません。印刷では出せない絵の具特有の発色、透明感、そして物理的な層の重なりが生む独特の質感が、色褪せず新たな世代の青春も彩っていくことは大変興味深いです」
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ちなみに、高橋氏はセル画を使ってアニメを製作するために不可欠な“撮影台”という機材も復活させようとしている。これを使えば事実上、昔ながらのアナログな手法でアニメが製作できるということになる。今後のアニメ製作の手法、さらには表現が多様化していく可能性は大いにあるだろう。
昭和レトロブームのなか、最新鋭の技術を駆使して次なるセル画風のアニメが登場するのか。はたまた、本格的に昔のままの機材を使って、本格的なアナログ手法によるアニメが登場するのか。アニメ界の今後に注目が集まっている。
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