写真「石の上にも3年」という言葉がありますが、一つのことを8年間やり続けたある人の投稿がSNSで話題になっています。
Xユーザーのあにピィさん(@ani_p_p)は、「8年間で589回作ったよ!!」というポストとともに2枚の画像をアップ。どちらもオムレツにケチャップでイラストを描いた写真で、1枚目は2017年に撮影されたケチャップアート画像でした。
そして、2枚目は2025年に撮影されたケチャップアート画像。
どちらのケチャップアートも、モチーフは『ドラゴンクエスト』に登場するモンスター・ミミックです。お題は同じはずなのに、完成度の高さが全然違う!
線の力強さも、構図も、立体感も、2025年版のミミックのほうが数段上です。
描き方をどう変えることでケチャップアートは進化したのか? なぜ、そこまでケチャップアートにこだわっているのか?……などなど、気になることについてあにピィさんから話を聞いてみました。
◆ケチャップアートを描くようになったきっかけ
――あにピィさんはお料理関係のお仕事に就いているのでしょうか?
あにピィ:普段は料理とまったく関係のないサラリーマンですが、料理は学生の頃からやっていて、社会人になってからもよくつくっていました。そんななか、「これができるようになったらカッコいいな」と思いついたのがオムレツで、2017年ごろから「きれいなオムレツをつくる」を目標にXでの投稿を始めました。
――「きれいなオムレツをつくる」という目標だったはずが、なぜケチャップアートに目覚めたのでしょう?
あにピィ:はじめは、オムレツをきれいにつくることだけを目標にしていました。でもあるとき、ふざけてケチャップでいろいろと描いていたらおもしろくなってしまったんです。そこから「次はなにを描こうかな?」という感じになり、気づいたら目標が当初のものから変わっていました(笑)。
――素晴らしいケチャップアートばかりですが、どのくらい時間をかけて描いているのですか?
あにピィ:昔はなんのこだわりもなく、適当に5分くらいで描いてました。でも、今は出来栄えにこだわりすぎて、一つの絵を完成させるのに40〜50分かかるときもあります……。
――あまり時間をかけると、オムレツが冷めてしまう気もしますが……。
あにピィ:特に、冬だと食べる頃には冷えきっていますが……つくったオムレツはおいしく食べてます!
――「8年間で589回作ったよ!!」とポストされていましたが、どのくらいのペースでケチャップアートを描いているのですか?
あにピィ:卵を一度に何個も食べられないので、一日1回までです。基本的には、毎週末の朝食としてオムレツをつくり、ケチャップアートを描いてきました。仕事のない土日や祝日にしかできないので、反復練習ができないのが悩みですね(苦笑)。
◆8年間のケチャップアートづくりで進化した理由
――ケチャップアートを描く際、特にどのような点に苦労していますか?
あにピィ:オムレツは表面がボコボコしているので、ケチャップで正確に絵を描くのが本当に難しいです……。時間が経つとケチャップで描いた線はどんどんにじんでいきますし、時間との戦いでもあります。
また、使用する卵が小さいと必然的にオムレツが小さくなり、絵の難易度も上がります。卵はいつも妻が調達してくれるのですが、なるべく大きいものを選ぶようにしてもらっています。もちろん、安く仕入れることも重要です(笑)。
――ケチャップアートを描く際に意識していること、気をつけていることはありますか?
あにピィ:ケチャップで描く線の太さにも限界があるので、本当はできるだけ大きくアップで描きたい……のですが、あまりアップにするとなにを描いたのかわからなくなってしまう。だから、「なんの絵を描いたのか」がちゃんとわかるよう、事前に大きさや角度などをイメージしてから描いています。
――2017年版のミミックと2025年版のミミックを比べると、2025年版は大きさや角度に工夫があるのがよくわかります。加えて、2025年版は迫力もすごい! なにをどう改良することで、ここまで進化したのでしょうか?
あにピィ:何度か描いてるうちに、「もっと迫力が出るようにアップで描いてみたらどうか?」「もう少し線をくっきりできたら映えるんじゃないか?」「ケチャップを薄く塗って濃淡をつけたらもっとリアルになるんじゃないか?」など、気づきがあったんです。そのたびに、いろいろとチャレンジをしてきました。
たとえば、最初は市販のケチャップのボトルから直接オムレツに絵を描いていました。でも、いつしか限界を感じるようになった。そこで、アイシングクッキーで使うコルネや製菓グッズなどでケチャップアートを描くように変えたんです。そんな試行錯誤を重ねた結果、少しずつ完成度が上がってきたのかもしれません。
◆鳥山明デザインのキャラクターは描きたいものばかり
――オムレツに描くキャラクター選びの基準はありますか?
あにピィ:今、自分のXのアカウントでは主に『ドラゴンクエスト10』の情報を発信しています。私はドラクエが大好きなので、ケチャップアートもドラクエのキャラクターやモンスターを描くことが一番多いです。鳥山明さんがデザインしたキャラクターやモンスターは可愛らしく、描いてみたいものばかり。大好きなゲームのキャラクターを描いているときが、やっぱり一番楽しいです!
それ以外にも、「ウケがいいかな?」と『ちいかわ』の人気キャラクターを描いたり、『鬼滅の刃』のキャラクターや大阪万博のミャクミャクなど話題のモチーフをチョイスすることもあります。
――たくさんのケチャップアート描いてきたあにピィさんですが、お気に入りのケチャップアートはどれになりますか?
あにピィ:最近で言うと、『ちいかわ』のくりまんじゅうです。眉間のしわがうまく表現できたので気に入っています。
Xにアップすると約6000いいねに達したので、たくさんの『ちいかわ』ファンに見ていただけたと思っています。改めて「『ちいかわ』の人気はすごい!」と実感したし、なにより可愛いので、これからも定期的に『ちいかわ』のキャラクターは描いていきたいです。
あと、今回バズったミミックにあやかって、『葬送のフリーレン』に出てくるミミックも描きました。こちらもうまくできたので気に入っています。
◆ドラクエのケチャップアート
「こんだけ言ってて、ドラクエのケチャップアートはないのかよ!」と言われるかもしれないので、ドラクエのお気に入りも挙げておきます(笑)。去年(2024年)のメチャクチャ暑かったときに描いた熱い熱い「メラゴースト」です。炎のグラデーションをケチャップで無理やり表現しました。
――「今後、このキャラクターを描きたい」と考えているケチャップアートのモチーフがあれば教えてください。
あにピィ:描けていないドラクエのキャラクターはまだまだたくさんあるので、それらを中心にどんどんケチャップアートにしていきたいと考えています。特に、紙に描くことさえ難しい女性キャラクターはずっと避けてきたので、スキルを上げてチャレンジしていきたいです……!
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毎週末の朝食であるオムレツにケチャップで絵を描き、8年間で589作ものケチャップアートを生み続けていたあにピィさん。それだけ数を重ねればスキルアップするのも当然でしょう。
しかし、ただの反復練習ではなくそこには創意工夫もあったとのこと。だからこそ、ドラクエばりのレベルアップが可能になったのでしょう。ドラクエのノリでドラクエのキャラを描きまくるあにピィさんのケチャップアートから、努力の尊さを学びました。
<取材・文/寺西ジャジューカ>