あなたは自分の部屋で身に覚えのない不可思議な現象が起こったら、まず何を疑いますか?
今回はそんな怖い経験をしてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
◆一人暮らしの部屋で、リモコンが冷蔵庫に入っていた
井口絵梨子さん(仮名・30歳/契約社員)は、健太さん(仮名・34歳/会社員)とお付き合いして2年目になります。
「ですが健太が転勤になり昨年から名古屋に行ってしまったので、今は遠距離なんですよ。だから毎晩LINE電話で話していますね」
そんな夏の暑い日、絵梨子さんが仕事を終え一人暮らしの自室に戻ると……。
「いつもの場所にエアコンのリモコンがなくておかしいなと思いました。私は絶対に毎回サイドテーブルの左端に置くって決めているんですよ」
汗を垂らしながらリモコンを探し回ると、なんと冷蔵庫の中に入っていたそう。
「えっ? と不思議に思いました。昨日はお酒も飲んでいないし、今朝だって余裕を持って朝の時間を過ごして、いつもの場所にリモコンを置いた記憶もちゃんとあるんです」
怖くなり、健太さんに電話をしてそのことを報告すると「考えごとかなにかしていて、ついうっかり何かと間違えてリモコンを冷蔵庫に入れちゃったんじゃない?」と呑気に言われてしまいました。
◆きっとこの部屋には幽霊がいるんだ
「私も深く考えても仕方ないかと思ったのですが、その次の日も、帰ったらリモコンがいつもの場所になかったんですよ」
その日の朝はリモコンをいつもの場所に置き、入念に指差し確認をして、さらにスマホで写真まで撮って家を出ていたのでした。そのありえない出来事に「なんで?」と背筋がゾッとしたそう。
「きっとこの部屋には幽霊がいるんだと思いました。やっとベッドの下にリモコンを発見し、手に取った瞬間、全身鳥肌が立ち今までに感じたことのない寒気を感じたんですよね」
その晩も怖くて健太さんに何度も電話しましたが、なぜか出てくれず「今日は仕事仲間との飲み会だからごめん」とメッセージが届き、絵梨子さんは肩を落としました。
「『いちばん近くに居てほしくて、声が聴きたい時になんで?』とかなり気持ちが沈んでしまいました。怖くてなかなか眠ることができず、気がつくともう朝方で、結局フラフラしながら出勤したんです」
◆思わず崩れ落ちた……怪奇現象の真相は
もちろんその日もリモコンをしっかりといつもの場所に置き、家を出たそう。
「『どうせ帰ったらまたリモコンがなくて怖い思いをすることになるんだろうな』と重い足取りで部屋に入ってみたら……いつもの場所にリモコンではなく見慣れない小箱があって。恐る恐る中を見てみたらなんと指輪が入っていたんですよ」
するとクローゼットが開き、中から健太さんがクラッカーを鳴らしつつ飛び出てきて、花束と共に「僕と結婚してください」と片膝をつきプロポーズしてきました。
「私はビックリしすぎてしまい、あまりのことに頭がついていかなくて、『何で名古屋にいるはずの健太がここにいるの? リモコンの場所に指輪って? え? え?』とパニック状態でしたね」
話を聞くと、実は出張で数日前から東京に来ていた健太さんは、昼間に絵梨子さんの部屋に合鍵で忍びこみリモコンの位置を変えていたそう。
「『不思議な出来事の後にプロポーズしたら、“吊り橋効果”っていうの? それで僕のことをさらに好きになったり、盛り上がったりして記憶に残るプロポーズになるかなって思って』と健太はあっけらかんと言っていましたが、吊り橋効果ってそういうことじゃないと思うし、私は心霊現象だと思い込み心底ビビッていたので、思わず腰が抜けたようになり崩れ落ちてしまいました」
◆怖がらせてしまったことを知り、彼氏はきっちり謝罪
ですがリモコン事件の真相がはっきりして、しかもずっと待っていたプロポーズをしてもらえたことにホッとした絵梨子さんは、だんだんと嬉しい気持ちが溢れてきて泣いてしまいました。
「そして健太に、恐ろしい思いをしたことや寂しかった不満をぶつけつつ『でもいいよ。結婚してあげる』とOKしたんですよ」
思いのほか絵梨子さんを怖がらせてしまっていたことを知った健太さんは、申し訳なさそうに謝ってくれたとか。
「健太的には“プチドッキリ”ぐらいの感覚だったみたいなんです。でもそのお陰で新婚旅行は私の好きなところに決めていいと言ってもらえたので、どこにしようかワクワクしながら悩んでいるところなんですよ」と微笑む絵梨子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop