「円高恐怖症」が「悪い円安」に=為替に翻弄された日本経済―プラザ合意40年

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2025年09月21日 08:02  時事通信社

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 日米英仏、旧西ドイツの先進5カ国(G5)がドル高是正で足並みをそろえた「プラザ合意」は、通貨当局者の想定を超えた急速な円高進行をもたらした。輸出主導型経済から抜け出せなかった日本はその後、長らく「円高恐怖症」にさいなまれ、円安を志向した政策が取られることになる。だが、その政策は今、輸入物価の上昇を起点とした物価高騰を招き、「悪い円安」として家計を苦しめている。

 G5各国はプラザ合意で、巨額の貿易赤字に苦しむ米国を支えるためドル安誘導を行うことで一致。外国為替市場でドル売りの協調介入を一斉に実施した。大蔵省(現財務省)の国際金融局長として関わった行天豊雄氏によると、日本側は「10〜15%の円切り上げ」を想定していたという。だが円高の進行は止まらず、合意前に1ドル=240円程度だった円相場は1987年末に120円台に突入した。

 為替に翻弄(ほんろう)された輸出企業から悲鳴が上がり、「円高不況」に対応するため、日銀は86〜87年に5度にわたる利下げを実施。しかし、この過剰な金融緩和は株式や不動産への投機を過熱させ、その後のバブル崩壊によって日本経済は低成長とデフレに悩む「失われた30年」に突入する。

 2008年のリーマン・ショック後には円高圧力が一段と強まり、東日本大震災が発生した11年に75円32銭と戦後最高値を記録した。

 「日銀の金融緩和不足が円高の原因」とする声が広がる中、経済政策「アベノミクス」を掲げた第2次安倍晋三政権が発足。安倍氏が日銀総裁に据えた黒田東彦・元財務官が13年4月、国債を大量購入する「異次元緩和」を始動させると円高修正が進み、株価も高騰した。

 だが、11年に及んだ異次元緩和は日本経済の成長力の強化にはつながらず、経済の実力を示す潜在成長率は長らく0%台で低迷。円安は輸出企業の円建ての海外利益を膨らませたが、野口悠紀雄・一橋大名誉教授(日本経済論)は「企業が技術開発の投資を怠り、生産性上昇を阻害した」とその副作用を指摘する。

 円の総合的な実力を示す実質実効為替レートは今年7月に72.21(20年=100)と1970年代初めと同水準にまで落ち込んだ。円安はコロナ禍やロシアのウクライナ侵略に伴う物価高騰を増幅させ、家計に重くのしかかる。23年の日本の1人当たり名目GDP(国内総生産)は、ドル換算で経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中22位となり、21位の韓国を下回った。日本の国力低下は覆い隠せず、「先進国の地位から脱落しかかっている」(野口氏)状況だ。 

このニュースに関するつぶやき

  • 大きな勘違い記事だね。40年前の日本経済は世界トップクラスだったから円は買われた。 今は凋落による円安。今や一人あたりのGDPが世界40位からも落ちそうな衰退ぶり
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