「写ルンです」17億本突破 なぜ、Z世代はアナログに夢中なのか

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2025年09月22日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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スマホで振り返る「写ルンです+」

 累計販売本数17億本を誇る富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」。Z世代を中心に人気が再燃する中、同社はスマートフォン専用アプリ「写ルンです+(プラス)」を5月にリリースした。写ルンですのアナログの魅力を守りつつ、デジタル体験を拡張する狙いを同社に聞いた。


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 2026年に発売40周年を迎える写ルンです(公式サイト価格:2860円)は、デジカメやスマホカメラの普及で需要が減少していた。しかし、2015年頃から減少のスピードが緩やかになり、2021年頃から再び増加している。


 人気が再燃している要因は、「すぐに画像を確認できない」というアナログさがZ世代にとって逆に新しい体験として受け入れられていることだ。加えて「アナログ写真の粒子感や風合い、現像を待つワクワク感が新鮮に映っている」と、商品企画担当の植松美里さんは分析する。


 増加する需要を背景に開発したのがアプリの「写ルンです+」だ。利用者は写真の現像をスマホから注文でき、写ルンです本体をコンビニから発送すると、約1週間で画像データとして受け取ることができる。


 画像データはフィルムごとに整理され、名前やコメントを付けて思い出を振り返る「マイフィルム」機能や、お気に入りの画像からスライドショー動画を作成できる「フォトムービー」機能を搭載する。現像とデータ化の料金は2420円で、別途写真プリントも注文可能とした。


●アナログとしての価値を高める


 アプリ開発のきっかけは、写ルンですの現像時に、6割以上の利用者がデータでの受け取りを希望していたことだ。「より簡単にデータを受け取れ、かつアナログとしての価値を最大限に楽しめるサービスを提案できないかと考えた」と植松さんは振り返る。


 ここ数年は、レトロブームで昭和時代のアイテム人気が再燃しているケースも目立つ。写ルンですもその流れの一環と見られがちだが、富士フイルムは違った見方をしている。


 その根拠としたのは、同じくアナログ写真を楽しめる「チェキ」の好調さだ。1998年に発売されたチェキは、一時期売り上げが落ち込んだものの、2007年頃から17年以上にわたって成長を続けている。2023年度の売上高は1500億円を超え、2024年度には累計販売台数が1億台を突破した。


 植松さんは「アナログの価値は、一時的なブームとして終わるとは捉えていない」と語る。デジタルネイティブ世代にとっては、アナログ体験が「新たな価値」として受け入れられているとし、チェキの17年以上にわたる成長が、その見方を裏付けているという考えだ。


 加えて、グローバルでの人気拡大も追い風になっている。写ルンですは海外で「クイックスナップ」の名称で販売され、統括マネージャーの高井さんは「日本だけでなく世界各地で人気が高まっている」と説明する。同社は、チェキと写ルンですを重要事業として強化していく方針だ。


●アナログの価値を保ちつつ楽しみ方を拡張


 アプリでは、写ルンです本来のアナログの魅力を保ちながら、デジタル技術でさらに楽しめるよう工夫した。写ルンですの最も楽しい瞬間は、撮った写真を見るときにある。


 そこで、現像完了後に初めて画像を開くと、27枚が重なった状態で表示され、好きな方向にスワイプしながら1枚ずつ確認できる演出を用意した。現像したフィルム写真をめくる体験をデジタルで再現したもので、この演出は初回開封時のみ楽しめるようにした。単に画像データを渡すだけでなく、現像を待った後の感動を最大化する仕組みだ。


 アプリのダウンロード数は非公開だったが、利用者は20代を中心とした女性が多いという。初めて写ルンですを購入した利用者もいるなど、「アプリをきっかけに、写ルンですを試してみたいという声も出ている」と植松さんは手応えを語る。


 スマホアプリの中には、レトロ風の写真を撮影できるものもあるが、写ルンですとの違いは明確だ。


 「撮ってすぐに確認できるフィルム風アプリとは異なり、ファインダーをのぞいて撮影し、うまく撮れているか分からないまま現像を待つところも含めて1つの体験だ」と植松さんは差別化ポイントを語る。


●海外展開と認知拡大が今後の課題


 リリースから約3カ月が経過したが、現在の課題はアプリの認知度向上にある。植松さんは「写ルンです自体もリブランディングした。新しいパッケージデザインとWebサイトで、ブランドイメージとアプリをもっと多くの人に知ってもらいたい」と語る。


 海外展開も視野に入れる。すでに、写ルンです自体はクイックスナップとして海外でも人気が高く、その流れを受けてアプリも順次展開していく方針だ。ただし当面は、国内での利用実績を重視していく。


 同社は今後、写ルンですとアプリを組み合わせて楽しむ体験として訴求していく方針だ。SNSでのプロモーションを強化し、ユーザーのフィードバックをもとに改善を重ねながらサービスの定着を図る。さらに、写ルンです40周年となる来年に向けてイベント企画も検討している。


 「アナログの良さとデジタルの便利さを組み合わせ、写真の楽しみ方をさらに広げていきたい」と高井さんは展望を語る。40周年を迎える来年に向け、富士フイルムが「アナログ×デジタル」の新体験をどのように市場に定着させるか、今後も注目だ。


(カワブチカズキ)



このニュースに関するつぶやき

  • 簡単で楽チンになり過ぎると逆に手間暇不便を楽しみたくなる。人間というのは実に天邪鬼な存在だなw
    • イイネ!12
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