「ホームランバー」銀紙パッケージ終了 65年で変わったこと、変わらなかったこと

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2025年09月26日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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ホームランバー65年の味と遊び心

 協同乳業(東京都板橋区)の当たり付きアイス「ホームランバー」が、発売から65年を迎えた。2025年8月には、長年親しまれてきた銀紙パッケージの生産を終了。9月22日には、箱で提供するマルチパックの新商品「ホームランバー バニラ&チョコ」「ホームランバー ミルク&キャラメル」(各8本入り、希望小売価格495円)を発売した。


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 猛暑の影響もあって、近年の売り上げは順調に伸びているが、なぜこのタイミングで銀紙パッケージの生産を終了したのか。65年の間に変えたこと、変えなかったことは何か。担当の坂本崇さんに聞いた。


●「ホームランバー」誕生のきっかけ


 ホームランバーが誕生したのは1960年。当時の日本は高度成長期に入り、暮らしが豊かになり始めていた。アイスは「ぜいたく品」から「身近なおやつ」に変わりつつあったが、普及していたのは氷菓の「アイスキャンディ」。本格的な「アイスクリーム」は、特別な場所でしか食べられない高級品だった。


 協同乳業は1955年、デンマークから導入した機械を使って、日本で初めて棒付きの「アイスクリームバー」を発売した。数年後には、スティックに焼印を入れるアイデアが生まれ、当時ブームだった野球と組み合わせて「当たりくじ付きアイス」として登場したのが、ホームランバーである。


 「他社商品には、アイスのスティックに広告を入れたものがあったようで、当時の担当者はそこに着目した。『当たり付きの要素を入れたら面白いのではないか』というアイデアがあって、それを採用した」(坂本さん)


 当たりの仕組みはシンプルだ。スティックに「満点ホームラン」とあれば、野球盤などの景品をプレゼント。「ホームラン」なら、その場でもう1本。「ヒット(1塁打、2塁打、3塁打)」は4つ集めると、もう1本もらえる仕組みだった。さらに時代を反映した景品も用意し、空とぶ円盤UFOやスピードガンなどが人気を集めた。


●発売65年で銀紙パッケージの生産を終了


 ホームランバーの売り上げは、65年の歴史の中で浮き沈みはあったが、近年は猛暑の影響もあって順調に伸びているという。「今では年間で7000万本以上売れており、市場全体の拡大とともに売り上げも伸び続けている」(坂本さん)


 そんな中、2025年8月をもって、銀紙パッケージの生産を終了した。理由は、主な販売場所である駄菓子屋の数が減っていることだ。


 銀紙パッケージは、かつて駄菓子屋でよく売れていた。しかし、時代の変化により販売場所が減少し、供給量の確保が難しいとの判断になった。また、製造機械も老朽化しており、新調しようにも取り扱う業者がいないという事情もあった。


 終了の発表後には、「ホームランバーといえば銀紙パッケージだったので残念だ」という声が届いた。長年親しまれてきたパッケージだけに、思い出としての価値を感じる人も多いようである。


 2025年9月時点の主なラインアップは、箱入りのマルチパック2種類だ。加えて、春夏には季節限定の商品も展開しており、販売チャネルはスーパーや量販店が中心である。


 近年の取り組みとして、2023年から当たりくじの「ヒット賞」をLINEを活用したデジタルキャンペーンに移行した。さらに2025年9月からは「ホームラン賞」もデジタル化し、LINEから応募できるようにした。これにより、従来の抽選応募のように結果を待つ必要がなく、その場で当たりか外れかが分かる仕組みとなっている。


 以前は、当たりスティックを封筒に入れて抽選応募する方式であった。しかし、応募者からは「当たるかどうか分からない」「面倒だ」という声が寄せられていた。そこで、LINEを使ったデジタル応募を導入したことで、応募後すぐに結果が分かるようにした。今後は、景品のバリエーションを増やすなど、さまざまな展開を計画している。


●「ホームランバー」ロングセラーの理由


 発売から65年たっても、ホームランバーの人気は衰えていない。では、ロングセラーの理由は何であろうか。


 担当の坂本さんは、理由として2つを挙げる。(1)友人や家族みんなで食べられる定番の味わいであること、(2)当たりかどうかの結果を楽しめること、である。


 味だけでなく、当たりの景品も時代の世相を反映したものを提供し続けている。「子どもがわくわくするものは何か。味と景品については、担当者が頻繁に議論を重ねている」と坂本さんは話す。


 引き続きファミリー層をメインターゲットとし、「子どもはもちろん、誰が食べても子ども心に戻れるおいしさと楽しさを提供し続ける」(坂本さん)という。味や体験を通じて親子のコミュニケーションを促すことで、ブランドのファン層を広げ、長期的な顧客維持につなげる狙いである。


 ホームランバーは、単なるアイスの販売にとどまらず、体験価値を提供することで商品力とブランド価値を高める戦略を採っているのだ。


 今後、どのようなフレーバーや商品が登場するのか。5年後の70周年に注目したい。


(熊谷ショウコ)



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