
開票日が迫る自民党総裁選。各陣営の担当記者が候補を深掘りし、選挙戦略を解剖します。きょうは小林鷹之候補です。
小林鷹之氏、課題の知名度 どう克服?高柳光希キャスター:
総裁選に出馬した小林鷹之元経済安保担当大臣とはどんな人物なのでしょうか。
【小林鷹之氏の主な経歴】
▼1999年 東京大学を卒業・財務省(当時、大蔵省)入省
▼2012年 衆議院総選挙 初当選
▼2021年 経済安全保障担当大臣で初入閣
地元千葉2区で選出で当選5回と、今回の候補者の中では最も少ない回数です。2024年の総裁選では、9人中5位という結果でした。
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この1年間、小林氏は「認知度の向上」に取り組み、自身のSNSなどの発信を強化してきました。
自身のYouTubeチャンネルでは「コバホークのコバトーク」と題し、視聴者からの質問に回答したり、全国各地の講演や応援演説に積極的に出向いてきました。
9月に行ったJNN世論調査で、「次の総理にふさわしいのは?」と聞いたところ、小林氏は9位という結果でした。
総裁選の5人の候補者の中では最下位なので、ここからどれだけ知名度をあげられるかが課題となります。
Q.次の総理にふさわしいのは?
▼1位:小泉進次郎氏 19.3%
▼1位:高市早苗氏 19.3%
▼7位:林芳正氏 2.2%
▼9位:小林鷹之氏 0.9%
▼9位:茂木敏充氏 0.9%
※JNN世論調査
9月6日・7日 RDD方式(固定・携帯)
全国18歳以上2749人(有効回答1030人)
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小林氏の主張を大きく4つに分けてみました。
【小林元経済安保担当大臣の主張】
▼所得税の改革
▼防衛費の増額
▼脱炭素から低炭素へ
▼外国人政策の厳格化
どういった点に注目すべきでしょうか。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
今回、小林氏が特に打ち出しているのが「所得税改革」です。
働く世代に「頑張れば報われる」という政治的なメッセージを打ち出すためにも、中間層を分厚く支援したいという思いで所得税の改革を打ち出しています。
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高柳キャスター:
小林氏の“強みと弱み”を分析してみました。
党内基盤・野党連携・経験には△が、世代交代には◎となっています。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
「経験」という点では、閣僚の経済安全保障担当大臣のみ、「党内基盤」においても、これまで幹事長や政調会長などの党4役、党7役といわれるポジションの仕事をしていないので△になるかと思います。
高柳キャスター:
小林氏の弱みとされている「野党連携」は、今回の総裁選においてかなり重要視されている項目です。実は、小林氏の“弱み”を補うべく後ろについている人たちがいるということです。
それが、「国対委員長」経験者の石井準一参院国対委員長と、浜田靖一元国対委員長の2人です。この2人が小林氏のバックについて、野党連携をカバーをしていくということでしょうか。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
今回、誰が総理になったとしても、少数与党というところで野党との連携が大切になります。そこで重要なポジションを担うのが「国対委員長」です。
浜田氏が小林陣営の総括を務めており、石井氏もその陣営に入っています。2人とも「俺らに野党との連携は任せろ」「忖度はするな」と力強くバックアップしている状況です。
井上貴博キャスター:
浜田氏と石井氏が、他候補者ではなく小林氏を推している理由は何があるのでしょうか。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
浜田氏も石井氏も「自民党を変えるしかない」「変えられるのはこの男しかいない」と小林陣営の選対会合の冒頭でも発言していて、自民党への危機感から小林氏を支持しているのかと思います。
高柳キャスター:
小林氏の素顔や人間性などを一言で表すとしたら、どのような表現でしょうか。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
小林氏の人柄は、とにかく「まっすぐな人」だと思います。
今回、「世代交代」を掲げて出馬していますが、世代交代と言うことで、「自民党の中でハレーションを生むのではないか」と陣営側から止められたという話もありました。しかし、「それでは自民党が変わらない」と強い思いを持つ、まっすぐな人柄だと感じます。
出水麻衣キャスター:
世論調査での支持率も上がらない中、総裁選に向けて差を詰めていくとしたら、小林氏は何ができるのでしょうか。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
全国の党員票の投票も、29日、30日で実質の締め切りになります。これまでは地方をできるだけ回ってきましたが、折り返しの今は改めて国会議員への支援を、どうお願いしていくかに注力していくと思います。
井上キャスター:
2024年に石破氏が党の要職を打診した際に、それを受けていればある程度の経験も積めたのではないかという見方もあります。世代交代や刷新感、そして政策通であるという点が強みだといわれていますが、どう見ていますか。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
私は投票する立場にはありませんが、リーダーはどうあるべきかという視点で、すごく興味深く見ています。
小林氏は能力があることは確かですが、それを実践した経験値をこれからどんどん出すべきだと言われ方をしています。素地がある、コンピテンシーがあるという点は素晴らしい強みだと思います。
一方、「何となくその人が言うと良く感じる」といったプレゼンスのような、数値化できないリーダーに必要部分をどう作っていくのかなと見ています。小林氏がまっすぐで、ファクトを話すからこそ、そこが弱点であり強みなのではないでしょうか。
高柳キャスター:
小林氏のまっすぐさがわかるポイントがあるそうですね。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
陣営から、「小林氏が政策などを語るときの顔が怖い」と指摘され、なるべく笑顔でいようと、台本に笑顔マークを書くなど、アドバイスを素直に取り入れるような人柄でもあると感じています。
井上キャスター:
笑顔というのは今回、高市氏も相当意識されているように感じます。
小林氏は今回、高市氏の応援に回って票をまとめることも考えられたと思いますが、そうした戦略はあったのでしょうか。
TBS報道局政治部 原尉之 記者:
一部では、「保守という枠組みで固まった方がいいのではないか」という意見の議員がいたという話も聞いていますが、小林氏は今回もブレずに「自分で総裁選に出る」という思いで出馬しているということです。
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<プロフィール>
原尉之
TBS報道局政治部 与党担当
森山幹事長、小林元経済安保担当大臣の番記者
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト
慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰