
今回は「ドライバーがサングラスなどのアイウェアで“目を守る権利”」について考えます。
荷物の運送をするプロドライバーではない私たちも、運転時に眩しさなどを感じてサングラスを付けることってあります。
ただ、これまで多くのトラックドライバーはサングラスの着用を控えていたといいます。
ドライバーの労働問題に詳しいライターの橋本愛喜さんに聞きました。
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労働問題に詳しいライター 橋本愛喜さん
「トラックドライバーっていうだけでちょっと怖いっていうイメージを持たれてしまうんですよね。
その上で、サングラス・アイウェアとかをかけていると、余計に消費者さんだけではなく荷主さんとかに『ガラが悪い』っていうふうに言われてしまうところがあるので、やはりどうしてもサングラスの着用を禁止する運送会社さんっていうのがまあまあいらっしゃったと。
で、大手の会社さんとかだとやはり目立つし消費者に近いところで走ってらっしゃるのでそういうところではアイウェア禁止っていうふうに今までなっていたんですけれどもやはりそれがトラックドライバーには負担になっていたということがありますね」
このように、多くの事業者はサングラスを容認していませんでした。そのなかで今年の夏から、宅配便大手の佐川急便がドライバーのサングラス着用を可能とする運用を始めました。
制度を導入した理由を、佐川急便・人事部の関口さんに聞きました。
佐川急便・関口さん
「屋外で作業する従業員の皆さんにとって、紫外線とか強い日差しを浴びる業務時の危険のリスクとか、あとは健康被害のリスク、こちらはすごく高いかなというところを前提として考えておりました。
やはり特に長時間日差しを浴びることで、目の疲れとかストレスとか、あとは夏は熱中症リスクを高める要因といわれていますし、従業員一人ひとりの特性というか、体質は異なるので、従業員の多様性に対応した働きやすさの促進というところを考えた上で特に日差しが強くなると今回言われていた6月1日に改定をさせていただきました」
紫外線は、長時間浴びることで白内障や角膜炎などの眼の疾患のリスクを高めることが知られていて、特に屋外での仕事においては、目の保護が重要です。
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現場のドライバーからは「目や肌が弱い従業員への配慮がなされて好評だ」といった好意的な意見があるそうです。
加えて、この運用が始まったこの3か月間で、ドライバーからは健康被害のリスク「以外」についてもこのような反応もあったそうです。再び、関口さんのお話しです。
佐川急便・関口さん
「一番はやはり『眩しさが軽減された』という声が特に多かったです。
運転中にやはり眩しさを感じることが多々これまでもありましたので、安全性の確保というところが一番大きい声ではあったかなというふうに捉えております」
労働問題に詳しいライターの橋本さんも「トラックはフロントガラスが広いのでどの位置からでも陽射しが入り、ダイレクトに日光を浴びてしまう」と話していました。
ほかの運送会社では、ヤマト運輸もこの9月から運転業務中のドライバーのサングラス着用をはじめました。
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こうした取り組みについて「大手の会社から業界を変えるようなアクションをしていることはとても意義があって、中小の運送会社も続きやすくなる」とライターの橋本さんも評価していました。
トラックドライバーの意見実際に中小企業でトラックのドライバーをしている人の意見はどうでしょうか。
関西を拠点に、片道500〜600キロの長距離で、企業間の荷物の輸送をしている40代の男性に話を聴きました。「陽射しの影響は、夏だけではない」と教えてくれました。
トラックドライバーの男性
「夏場は特に夜明けも早いので、気温も急に上がりますから、高速道路を長い時間走ってますんで、陽射しの影響で車間距離が急に縮まったりとかちょっと経験ありますね。
冬の方は、雪が降って晴れ間になった時が一番陽射しが強くなりますんで、そこにまた目が慣れるまで大変だなと感じます」
夏だけではなく冬の雪道でも、適切なサングラスの着用は安全性の向上につながります。
このドライバーは、配達先や荷主に更なる理解を求めています。
トラックドライバーの男性
「サングラスをしている方って実は目の病気の方って結構多いんですよ。陽射しのこともありますし、緑内障とかそういったのもあって、普段からサングラスって方も結構いらっしゃるんでその方たちのその状況を知っていただいて、これが普通になればいいのかなとは思います。
私はトラックドライバーとして、トータルで30年近く仕事していますけれども、お客さんはお客さん、ドライバーはドライバーという壁っていうのがまだあるのかなって気がしますね。それが取り払われて、お互い思いやるっていうような流れになっていけばいいのかなって感じはします」
ドライバーのサングラスは「ファッション」ではなく、自らの命と健康を守るための、大切な「安全具」ということがわかりました。
サングラスをかけたドライバーを見たら、安全運転、そして円滑な配送に必要な道具であることを理解することが、ドライバーたちの“目を守る権利”を行使できる社会への、大きな後押しになると思います。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)