サイゼ、ガスト、バーミヤン…… コロナ禍で姿を消した「深夜営業」が続々と復活し始めている理由

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2025年10月31日 06:01  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 今年に入ってからサイゼリヤが都内の各所で深夜営業を再開するようになり、SNSで話題を呼んでいる。サイゼリヤはコロナ禍で午後10時以降の営業を取りやめるとしていたが、2023年ごろから午後11時まで延長する店舗が現れた。現在、都内は午後11〜午前0時まで営業する店舗が多い。


【画像】すかいらーくホールディングスが導入している配膳ロボット


 仙台地盤のすしチェーン「平禄寿司」も10月17日に開業した銀座店の営業時間を午前5時までとし、同チェーンとして初となる深夜営業を開始する。コロナ禍以降、感染防止対策や人手不足などを理由に飲食店の深夜営業廃止が進んだが、近年になって再開する動きがみられる。


●少しずつ、深夜営業の店が増えてきた


 サイゼリヤは需要がなくなったことなどを理由に、2011年に24時間営業を全店で廃止した。コロナ禍では2020年6月に全店で営業時間を最長で午後10時までとし、緊急事態宣言下では一部店舗の閉店時間をさらに繰り上げた。


 時短営業は一時的な措置としていたものの、2021年には午後10時以降に営業しないと正式に決定。当時は外食産業で客足が回復しておらず、テレワークの推進や自粛ムードもあり、深夜の需要も減少していたと思われる。


 冒頭の通り、ここ数年は午後11時まで延長する店舗が出始めている。とはいえ一斉に延長したのではなく、店舗ごとに営業時間を伸ばし始めた時期は異なる。2025年からは、歓楽街付近を中心に深夜営業を再開する店舗も現れた。現在では新宿、秋葉原のほか、渋谷、錦糸町などの店舗が午前5時まで営業している。


 JR東日本によると、秋葉原駅の乗車人員数(1日当たり)は2019年度の24.8万人からコロナ禍で20万人を割り、直近の2024年度も22.1万人となった。同様に錦糸町駅もコロナ禍前の水準に少しずつ戻りつつあり、営業時間の延長を決めたと思われる。


 「ちょい飲み」需要を確立した日高屋を展開するハイデイ日高の業績が好調なように、飲酒需要は回復している。サイゼリヤを居酒屋代わりに利用する客も多いため、彼らの需要を取り込む狙いもあるのだろう。


●すかいらーくも深夜営業を復活


 「ガスト」「バーミヤン」などを展開するすかいらーくホールディングスは2020年1月、働き方改革の一環として24時間営業を廃止すると発表した。同年7月には、原則としてグループ全店の営業時間を午後11時30分までとし、日をまたぐ深夜営業を廃止した。ライフスタイルの変化でランチやディナータイムなどの需要にシフトして深夜のニーズが減った他、宅配・テークアウトの拡大、職場環境の整備などを理由に挙げている。


 しかし、2023年3月から深夜営業を順次再開。当時の記事で、すかいらーくホールディングスの広報担当者は「ポストコロナで、深夜の需要が回復した。働いている方を中心に『夜に食事ができる場所が少ない』という不満がある。社会的なニーズに対応するためだ」と説明している。現在、歓楽街に近い店舗は深夜営業を実施している。


 余談だが海鮮系居酒屋チェーンの「磯丸水産」では24時間営業や深夜営業を基本としており、変わっていない。同チェーンは単純に営業時間を延ばして売り上げを確保し、一等地の高い賃料をまかなっている。深夜の需要が回復している昨今、高い賃料の一等地にあるファミレスの店舗は深夜も営業しなければならないのだろう。


●いったんは縮小のトレンドだった


 長い目で見れば、2010年代からファミレス業界では深夜営業を廃止する動きがみられた。サイゼリヤだけでなく、すかいらーくホールディングスも2016年時点で、深夜営業を行っていた987店舗のうち、約8割で深夜営業の廃止を発表していた。主な要因は人手不足だ。


 24時間営業を主軸としていた牛丼業界でも、人員を確保できない店舗で営業時間の短縮が進んだ。さらにコロナ禍では夜間需要の減少で時短営業が加速した形だ。


●なぜ続々と深夜営業が復活?


 だが、既に述べたように昨今では延長する動きが見られる。


 人手不足下での深夜営業を可能にしたのは店舗のDXである。すかいらーくホールディングスは2020年3月からタッチパネルを利用した「デジタルメニューブック」を導入したほか、2021年8月から配膳ロボットを導入し、2022年12月に全約2100店舗・3000台の導入を完了した。セルフレジの導入も進めてきた。サイゼリヤも同様にセルフレジを整備したほか、2023年からはQRコードをスマホで読み取って注文するモバイルオーダー方式を取り入れている。


 セルフレジやセルフオーダー方式により店員はレジ・注文業務に割く時間を大幅に下げることに成功している。配膳ロボットは店員0.5人分の労働力に相当する(参照:人間を雇うより、どれだけ安上がり? サイゼにすかいらーくも導入「配膳ロボット」の人件費効果を計算してみた)ともされ、こうした技術が2010年代までネックだった人手不足を一部解決したといえる。


 テレワークの廃止や新政権による労働規制緩和の動きなど、夜間人口が増えそうな動きが見られる今後、外食の深夜営業がどこまで復活するか注目したい。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 



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  • ついでに夜行列車も復活を〜w
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