「若さこそが能力のピーク」は本当か? 20代から80代までのデータを分析 海外チームが研究

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2025年10月31日 08:11  ITmedia NEWS

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 西オーストラリア大学とポーランドのワルシャワ大学に所属する研究者らが発表した論文「Humans peak in midlife: A combined cognitive and personality trait perspective」は、従来の「若さこそが能力のピーク」という通念を翻し、中年期における人間の機能的優位性を実証した研究報告だ。


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 この研究は複数の大規模調査データを統合したメタ研究で、認知能力は5098人、性格特性は1万163人の縦断データ、財務リテラシーは日本人の1万5228人、認知的共感は28万人以上というデータを使用した。その他、情動知能456人、道徳的推論996人、認知欲求5004人、認知的柔軟性は台米合計1372人などのデータに基づいている。


 研究チームは、認知能力と性格特性という計16の心理的次元を分析対象とした。認知能力には推論能力や記憶力、処理速度、語彙(ごい)力といった従来の知能指標に加え、情動知能や道徳的推論、財務リテラシー、認知的柔軟性、認知的共感などが含まれる。


 性格特性としては、ビッグファイブと呼ばれる5つの主要な性格因子(誠実性、情緒安定性、開放性、外向性、協調性)と認知欲求を検討した。


 結果、流動性知能と呼ばれる新しい問題を解く能力は確かに20歳前後でピークに達し、その後低下することを確認できた。処理速度や記憶力は低下する一方、語彙力などの結晶性知能は60代まで向上を続けた。これは、蓄積された知識や経験が年齢とともに豊かになることを示している。


 また、お金を管理する能力は60代後半から70代前半に最高値を示し、道徳的・倫理的な判断力も成人期を通じて向上。情動知能、つまり自己と他者の感情を理解し適切に対応する能力は40代にピークを迎えた。


 他にも「サンクコスト錯誤」への抵抗力が年齢とともに向上した。これは、すでに投資した時間やお金にとらわれず、合理的な判断を下す能力を指す。


 性格面でも重要な変化を観察できた。職業的成功の最も強力な予測因子とされる誠実性は、18歳から60代前半まで上昇を続ける。情緒安定性も中年期にかけて向上し、ストレスや圧力への対処能力が高まる。これらの特性は、リーダーシップや複雑な意思決定において極めて重要な役割を果たす。


 研究チームは、これら全ての能力を統合した包括的な重み付けでも、総合的な機能は55〜60歳でピークに達した。しかし、包括的モデルにおいて65歳を過ぎると総合的な機能は明確に低下し始め、85歳になると成人初期のレベル(18歳)と同等レベルになる。研究チームは、そうした高度な役割に最適な年齢は40〜65歳の間であると結論づけた。


 ただし、個人差も大きい。認知機能の加齢変化には大きな個人差があり、一部の高齢者は高いレベルの機能を維持することが知られている。また、高い知的能力を持つ個人は、平均的な能力の個人よりも約10年遅くピークを迎えるが、その後の低下はより急速であることも報告されている。


 Source and Image Credits: Gilles E. Gignac, Marcin Zajenkowski, Humans peak in midlife: A combined cognitive and personality trait perspective, Intelligence, Volume 113, 2025, 101961, ISSN 0160-2896, https://doi.org/10.1016/j.intell.2025.101961.


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



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  • だから、私は年配の人と話すのが楽しい。反対に、若い人とだけつるみたがる人は苦手な傾向がある。
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