
いまや超高齢社会の日本。長寿の高齢者も増えており、老人福祉法が制定された62年前には153人だった100歳以上の高齢者の数は、2025年9月1日時点で過去最高の9万9千763人に。誰もが100年以上生きる可能性がある時代になっているのだ。
また、2024年の日本人の平均寿命は女性87.13歳、男性81.09歳。女性は世界で最も高い(厚生労働省発表の「簡易生命表」より)。
ただし、この数字はあくまでも平均寿命。制限を受けることなく日常生活を送ることができる“健康寿命”は、2022年の厚労省の統計によると、女性は75.45歳、男性72.57歳。平均寿命との開きは男性が約8年、女性はじつに約11年もある。
「健康寿命を延ばし、100歳まで楽しく生きることは、日ごろの努力でかないます」
こう語るのは、ねりま健育会病院の院長の酒向正春先生。
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酒向先生は、今年6月に89歳で亡くなった“ミスタープロ野球”こと長嶋茂雄さんの闘病も支えていたリハビリのエキスパート。2004年に脳梗塞を発症し、右半身にまひが残った長嶋さんだったが、懸命なリハビリにより、再びグラウンドに姿を見せるまでに回復を遂げた。
酒向先生は、これまでに2万人以上の患者の治療やリハビリ指導にあたってきた。
「最新のデータでは、最も多くの人が亡くなった死亡年齢は男性が88歳で、女性が92歳。つまり、現状では平均して90歳ぐらいまでは生きるということになります。この数字は、今後95歳くらいまで延びるでしょう。
しかし、健康寿命が長くなければイキイキと生活することはできません。大切なのは筋肉量を維持すること。きちんと鍛えておくことで、95歳になっても介護いらずの体は十分に目指せると考えています」(酒向先生、以下同)
だが、90歳オーバーとなると、病気やけが、認知症など加齢による衰えのリスクがどうしても不安なところだ。
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「衰弱防止の基本は、筋肉を鍛えることで骨が強くなり、そこから脳の萎縮を防ぐ“脳筋連関”にあります。これを促進する方法が、私が考案した“サコーメソッド”です」
サコーメソッドには、8つのポイントがある。「筋力、体力、バランス、柔軟性、骨機能の向上、認知機能の向上、筋肉革命で生活習慣病を改善、楽しんで生きる」というものだ。
「このうち“楽しんで生きる”以外の項目は、筋肉トレーニングによる脳筋連関の促進によって達成できます。同時に、笑顔で過ごすことも健康に生きるためには不可欠。日々のリラックスとリフレッシュの2つがとても大切です」
酒向先生の病院では、病気やけがで身体機能が低下した患者を、治療と“攻めのリハビリ”と呼ばれる徹底離床する積極的リハビリで回復させた後に、衰弱防止のためにサコーメソッドを指導する。しかし、回復するためのリハビリには、相当な努力が必要になるという。
「そのため、リハビリが必要となる前から、体を鍛えておくほうが断然ラクなのです」
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また、予防を始めるならば筋肉量、骨密度、脳の機能が落ちる前の50代から行うべきだと酒向先生は指摘する。
「一度衰えてしまった機能を立て直すには努力が必要。それも、年をとるほど、その大変さは増していきます」
酒向先生自身は60代で鍛錬を開始。地下鉄の階段を上がったときに感じた息切れがきっかけだというが、その大変さに50代から取り組んでおくべきだったと後悔したそうだ。
「開始して2年以上がたった今では、深いところを走る地下鉄の階段を、ホームのある階から地上階まで上がっても息切れしなくなりました」
酒向先生自らの実体験からもわかるように、サコーメソッドを実践して健康を取り戻すことは何歳からでも可能。身体機能が衰える前から始めたいところ。
そこで、今回は自宅で簡単にできる基本のエクササイズを教えてもらった。エクササイズは、ストレッチで柔軟性を高め、スクワット、ローイング運動の流れで行う。
なかでも、スクワットは介護いらずの体になるための基本の運動だという。
「お尻やもも裏の筋肉(ハムストリング)を鍛えることで、歩行が安定し、転倒しにくくなります」
スクワットで下半身を鍛え、ローイング運動を行うことで体幹のバランスが改善され、日常動作に必要な腕の力がつく。
だが、いずれもけっして無理は禁物だ。できる範囲で始めて、徐々に負荷を高めていこう。スクワットとローイング運動は年齢で負荷が異なるのは、筋肉量に差があるためだ。
「地道なトレーニングの積み重ねは、必ず結果がついてくるもの。筋肉増強は簡単です。前向きな気持ちで取り組み、健康長寿をかなえましょう」
善は急げ。コツコツ続けて、介護いらずの95歳を目指そう。
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