88歳の米寿を迎えた養老孟司さん 記念講演で明かした来年のお楽しみ “絶滅した”とされてきた「あの虫」を…

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2025年11月30日 07:02  TBS NEWS DIG

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「バカの壁」などの著作で知られる東京大学名誉教授の養老孟司さんが米寿を迎え、都内で誕生会と記念講演が行われました。昆虫が大好きな養老さんが88歳を目前に採りに行ったという極めて貴重な虫とは? そして来年のお楽しみとは?

【写真を見る】数量限定の記念Tシャツにデザインされた養老さんが虫を探す姿

琵琶湖で幻の虫を採集

11月9日、東京・港区の「モンベル東京営業所」で「養老先生の米寿を祝う会」を開催したのは、通称「ケンモリ」、NPO法人「日本に健全な森をつくり直す委員会」(養老孟司委員長)です。11日に88歳の米寿を迎えるのを前に養老さんらが講演しました。

地震学者の尾池和夫さんの講演に続き、145人の聴衆の前に立った養老さん、まずは近況報告です。

10月下旬、「琵琶湖に採りに行った」という極めて珍しい小型の水生昆虫を紹介しました。捕獲した体長4ミリほどの小さな虫の標本を愛用の虫眼鏡とともに会場でまわし、訪れた参加者一人一人が見たこともない虫をじっくりと覗き込みながら話を聞くことができました。

養老さんが披露したのは、絶滅したとされていた水生昆虫の「キイロネクイハムシ」です。卵から成虫まで水中で過ごし、透明度の高い水が不可欠の極めて珍しい昆虫です。日本では1962年を最後に姿を消していました。それが2022年になって京都大学の研究者によって滋賀県の琵琶湖で再発見され、絶滅を免れ存続していたことが確認されたのです。

養老さんは、「子どもの頃から憧れていた虫」だと言います。1937(昭和12)年生まれの養老さんが20代の頃、国内では姿を消したとされてきた、いわば幻の昆虫。

養老さん
「現物を初めて見ました。年をとっても楽しいことはあるんです」

虫の研究は自然の研究

2020年公表の環境省のレッドリストでは「絶滅種」となった「キイロネクイハムシ」、一体、日本のどこに潜んでいたのでしょうか。

再発見した京都大学の曽田貞滋名誉教授に聞くと、「幼虫も成虫も水中生活する特殊な虫で、水質汚染を免れた水草群落が発達した限られた場所に生き残っていたということでしょう。大陸にも同種はいますが、遺伝子解析の結果から持ち込まれた可能性はないと考えています。私たちの再発見後も琵琶湖以外では見つかっていません」とのこと。

環境省の担当者も再発見の報告を喜んでいます。

「過去50年ほどの間に、信頼できる生息の情報が得られていなかったので2007年に絶滅種、つまり我が国ではすでに絶滅したと考えられる種と評価しました。もしそれが生息しているとなれば、喜ばしいことです。レッドリストの更新作業はこれからになります」

そんな不思議なことがあるのが自然の世界なんだと、養老さんは伝えたかったようです。

養老さん
「(私のやっている)虫の研究は根本的には日本の自然の話なんです。分かっているようで分かっていない。私は虫の研究・解剖学をやっていますけど、完全に自然の研究なんです」

養老さんは、虫などを通して、移り行く日本の自然を見つめてきました。今も絶滅の危機に瀕しているキイロネクイハムシを通して改めて思うことは…。

養老さん
「(キイロネクイハムシが住めるような水中の)環境がどんどんなくなってきている。皆さんは水の底を見ないと思うけど、藻が生える場所がなくなってきているのです」「水がダメになっている可能性が高い。農薬を使っていますから。地下水まで入っているかと思う。こういうのはダメって言ってもダメだし。しょうがないですね…」

キイロネクイハムシだけではありません。虫は全体的にも激減しています。

養老さん
「この30年で7割から9割、虫が減っています。世界中で。いろいろな事情があると思う。単純な因果関係では説明できないけど」

養老さんも薦めるデイヴ・グールソンの「サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」」には、ドイツの自然保護区で1989年から2016年までの27年間で飛翔昆虫の4分の3(76%)が減少したことを示す学術論文が紹介されています。

こうした生き物が減る理由としては、これまでにも農薬や化学物質だけではなく、開発や乱獲、里山の荒廃、気候変動などが指摘されています。

植物の受粉の多くは昆虫や虫をエサにする小鳥などが担っているので心配です。

世界に触れるには色々なやり方がある

環境問題をはじめ、現代に様々な警鐘を鳴らしてきた養老さん。今回の講演では、今を生きる私たちにこんなメッセージを伝えてくれました。

養老さん
「やっぱり皆さんが身近な環境に関心を持っていただいて、地震に限らず、自分の住む土地のことを、自分なりに理解をすすめるといいと思います」「今、勉強といえば西洋のものを取り入れて日本化するということがありますが、私はこれが大嫌い。日本の教育は、よその国のものをもってきて身につける。それを叩き込まないと先生にほめてもらえない。それが勉強だと親も先生も思っている。だから子どもが嫌がる。嫌なことを押しつけられるからです」

身近な自然のある場所に足を運び、自分の目で見て、自分の頭で考えられるような教育に転換することへの期待感を示しました。そして子どもたちや若者への応援に力を込めます。

養老さん
「解剖学も昆虫学も自然の一部をシミュレートして、自然はこういうものだと何となく頭の中でつくっていく。世界に触れるには色々なやり方がありますから。若い世代は身の回りの自然をちょっと我々とは別の見方で見ているかなと思って、将来が楽しみです」

養老さんの来年の楽しみは…

88歳の米寿を迎えた養老さんの研究は、これからも続きます。

養老さん
「私も88歳まで生きているつもりはなかったけど、それなりに来年の予定もある。関東でキイロネクイハムシがどれくらい生き残っている場所があるのか探してみようと思っています。ちょっと楽しみです」

京都大学の曽田名誉教授は「この虫が絶滅の危険性が高い状態にあることは間違いありません。琵琶湖での生息場所の詳細も伏せています。養老先生のような著名な方が…となると、世の中の採集圧が高まることも心配です。生息が確認された場所は、できるだけそっと見守るだけにしていただきたいです」とコメントしています。

実際の採集には危険を伴い、かなり難しいとのことですが、養老さんの「虫愛」や探究心はとどまるところを知りません。来年には、関東地方のどこか湖のほとりであの虫を探す養老さんの姿が見られそうです。

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  • 何となく19世紀のフランスの博物学者アンリ.ファーブルの「昆虫記」 を考えてました。
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