車で安全な座席はどこ? 車種と座席位置で大きく変わる! 交通事故時のリスク

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2025年12月03日 20:50  All About

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【医師が解説】万一の交通事故のとき、座席の位置や車種によってリスクが大きく異なるようです。後部座席の安全性、軽自動車と普通車の違い、そしてシートベルトの効果について、分かりやすく解説します。
地域によっては日常生活に欠かせない「車」ですが、車には常に「交通事故」のリスクがあります。万が一に備えて、賢く安全に乗りたいものです。

最近、日本の研究チームから、車の安全性に関する興味深い研究が相次いで発表されています。「座席の位置」と「車種」の2つの視点から、安全な車の乗り方と選び方について、一緒に考えていきましょう。

後部座席は本当に安全? 座席位置とリスクの関係

まず、「車で安全なのは後部座席」という通説を、日本の救急医療現場で検証した研究が2025年に発表されました(※1)。

研究では、2000年から2022年にかけて、四輪自動車事故で地域中核病院に搬送された5906人の患者さんのデータが分析されています。「運転席」「助手席」「後部座席」の死亡率や大怪我のリスクの違いが比較されました。

その結果、年齢、性別、シートベルトの着用、エアバッグの作動などのさまざまな要因の影響を統計的に調整した後でも、運転席に比べて後部座席の乗員は、院内での死亡リスクが約60%も低いことが分かったのです(調整オッズ比:0.396)。

さらに、重症度を示す指標(ISSスコア)が15を超えるような大怪我のリスクも約57%低いことが判明しました。特に、胸部や腹部・骨盤の深刻な損傷が少ない傾向にあります。

これは、運転席周りにはハンドルやダッシュボードといった硬い構造物が多く、衝突時に体を打ち付けやすいのに対し、後部座席にはそれらがないためと考えられます。

以上のことから、誰かを車に乗せるときは「後部座席を勧める」のが、安全性においても理にかなっていると言えそうです。

軽自動車はやはり危険? 普通車と軽自動車の安全性の違いも明らかに

次に、車の大きさに注目してみましょう。日本では軽自動車も人気ですが、普通車と比べて安全性はどうでしょうか。

同じく2025年に、2002年から2023年にかけて交通事故で搬送された5331人のデータを分析した研究が発表されています(※2)。この研究では、年齢や事故の状況などが似た条件になるように、「普通車に乗っていた人」と「軽自動車に乗っていた人」をペアにして比較を行う「傾向スコアマッチング」という統計手法を用いて、車種によるリスクの違いが精密に調査されています。

結果はどうなったと思いますか?

普通車と比較して、軽自動車の乗員は院内死亡リスクが1.53倍高いことが明らかになったのです。軽自動車の方が、意識不明の昏睡状態やショック状態で運ばれる率が高いことも分かりました。加えて、軽自動車の乗員は、頭頸部、胸部、腹部、骨盤、手足に至るまで、あらゆる部位で深刻な損傷を負うリスクが高いことも明らかになっています。

研究では、軽自動車の車体の軽さや車内空間の狭さが関係している可能性が指摘されています。衝突時のエネルギーを吸収しきれず、車体が大きく変形しやすい他、乗員が硬い部分に体をぶつけるリスクも高いようです。

軽自動車はコンパクトで経済的ですが、安全性を考えるなら普通車を検討した方がよさそうです。

医師がデータから考える、賢く安全な車の乗り方

2つの研究から導かれる「賢く安全な乗り方」は以下の通りです。
・座席の選択を意識する……複数人で乗車する際は、特に子どもや高齢者を後部座席に座らせることが望ましい
・車種によるリスクの違いを知る……車の購入時には、軽自動車と普通車の事故時の重症化リスクの差を判断材料に加える
・シートベルトを必ず着用する
最も重要なのは、座席や車種にかかわらず、正しくシートベルトを着用することです。最初の研究でも、後部座席でシートベルトを着用していた乗員は全員生存していました。

交通事故のリスクをゼロにすることはできません。しかし、科学的な知識を持つことで、自分自身や大切な人の命を守るための、より賢明な選択が可能になります。

車に乗るときは、ぜひ安全性を高めるライフハックとして活用してください。

■参考文献
1. Tasuku Uzawa,Yuko Ono,Jun Sugiyama,et al.Impact of seat position on survival outcomes and anatomically specific severe injury patterns in four-wheeled motor vehicle accidents: a retrospective cohort study at a community emergency department in Japan.BMC Emerg Med.2025 Jul 30;25(1):139.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40739191/
2. Yuko Ono,Tasuku Uzawa,Jun Sugiyama,et al. Comparison of survival outcomes and anatomically specific severe injuries following traffic accidents among occupants of standard and K-car vehicles: A retrospective cohort study at a teaching hospital in Japan.PLoS One.2025 Feb 5;20(2):e0318748.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39908305/

秋谷 進プロフィール

小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
(文:秋谷 進(医師))

このニュースに関するつぶやき

  • 運転席周りにはハンドルやダッシュボードといった硬い構造物 → AE86やFD3Sの時代の車とかなら別だけど、今の車はエアバッグ標準装備だからハンドルやダッシュボードとの間でエアバッグ膨らんでぶつからないw
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