
●Q&A:これってハラスメント?
職場で起こりがちなトラブルを基に、ハラスメント問題に詳しい佐藤みのり弁護士が詳しく解説します。
Q: 部下が「もう、仕事が終わったので」と定時より前に帰ろうとします。引き止めたらパワハラに当たりますか?
A: 社会通念上、不相当な引き止め方をしなければ、引き止めただけで、直ちにパワハラになることはありません。
|
|
|
|
「定時」については就業規則で定められているものと思います。常時10人以上の労働者を雇用している会社は、必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。
そして就業規則には、必ず記載しなければならない事項として「始業および終業の時刻」が含まれています(労働基準法89条)。就業規則の内容は、法令や労働協約に反してはなりません(労働基準法92条、労働契約法13条)。
労働時間については、原則1日8時間以内、1週間で40時間以内の範囲にする必要があります(労働基準法32条)。
ただし、従業員の過半数が加入している労働組合(過半数が所属している労働組合がない場合は、従業員の過半数の代表者)との間で、会社が「時間外労働・休日労働に関する協定」を書面で結び、労働基準監督署に届け出れば、1日8時間以内、1週間で40時間以内を超えて働かせることができます(労働基準法36条)。
この協定は労働基準法36条に規定されていることから「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。
|
|
|
|
その他、会社は1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません(労働基準法34条)。
こうした法令に反しない範囲で、多くの会社は、就業規則において「定時」を定めています。したがって会社は、就業規則に基づき、勝手な早退をしないよう、従業員に対して求めることができます。
●指導が行き過ぎるとパワハラになる可能性も
業務命令や就業規則に従わず、自分勝手に振舞う従業員に対して、会社が注意や指導をすることができるのは当然ですが、指導が行き過ぎるとパワハラになってしまいます。
パワハラとは、職場において行われる
|
|
|
|
1. 優越的な関係を背景とした言動であって
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3. 労働者の就業環境が害されるもの
であり、(1)から(3)の全ての要素を満たすもの、とされています。そして、(2)業務上の必要性や相当性については、問題となった言動の目的、経緯、状況、態様、頻度、継続性、言われた側の従業員の属性や心身の状況、行為者の関係性などを総合的に考慮して判断されます。
パワハラには以下の、典型的な6類型があります。
1. 身体的な攻撃
2. 精神的な攻撃
3. 人間関係からの切り離し
4. 過大な要求
5. 過小な要求
6. 個の侵害
パワハラか否かは、先述したようにさまざまな事情を総合的に考慮し、判断されますが「殴る、叩く、蹴る、物を投げつける」といった(1)身体的な攻撃、そして(2)精神的な攻撃の中でも、人格否定を伴う場合はその他の事情がどうであれ、直ちに違法性が認められることがほとんどです。
●パワハラが起きやすいケース
パワハラは何の問題のない従業員に対して、一方的に上司が怒り出すなどして生じるケースの方が珍しく、通常はミスが多かったり企業秩序を害したりと、何らかの問題のある従業員に対する指導が行き過ぎることにより生じます。したがって定時を守らず帰ろうとする従業員に対しても、強引に引き止めるのではなく冷静に落ち着いて向き合いましょう。
なお、労働者のさまざまな事情に応じて柔軟に有給をとれるように、時間単位の有給休暇制度を導入することも考えられます。
年次有給休暇は原則1日単位ですが、年5日の範囲内で、時間単位での取得が可能となります。時間単位の年次有給休暇制度を導入する場合には、 就業規則への記載と労使協定の締結が必要になります。
実際に、時間単位の有給については当日の申請も可能としている会社もあります。このような制度を導入すれば、仕事を早く終えた場合などに有給を使いながら、従業員が柔軟に帰宅時間を早めることができるようになるでしょう。
その他、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる「フレックスタイム制」を導入している会社もあります。
労働時間のあり方については従業員の労働状況の実態をみながら、さまざまな制度の導入を検討することも一つの方法でしょう。
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。

Blu-ray、なぜDVDより先に終焉?(写真:ITmedia NEWS)132

Blu-ray、なぜDVDより先に終焉?(写真:ITmedia NEWS)132