
こんにちは、「きのこる先生」です。今回は「成長が自己責任になった令和をきみたちはどう生きるか」の続きです。
前回は、以下のようなことをお話ししました。
・日本社会はホワイト化し、ブラック企業は駆逐されつつある
・その結果「強制的なチャレンジの機会」が激減し、成長のための負荷を自分でかける必要がある
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・AI(人工知能)のコーディング力は日進月歩で向上し、業界に入ってくる若い人のスキルも向上している
ということで、2025年に現役でエンジニアをしている皆さんに「ボーッとしてるとやばくない?」という問題提起をさせてもらいました。
でもまあ、ソフトウェアエンジニアが「ボーッとしてるとやばい」のはいまに始まったことではありません。移り変わりの速いIT業界では、現状維持は実質的に後退を意味します。生成AIの登場で変化の速度はちょっと(だいぶ?)上がりましたが、エンジニアとしてやるべきなのは、やっぱり「いまの技術を磨き、新しい技術を学ぶ」ことです。
今回は、そんな時代を生きのこるために、「技術力」と「仕事力」を上げていこうよ、という話をします。
●「いま」エンジニアができること
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前回お話しした通り、生成AIはどんどんコーディングスキルを伸ばし、若い人は年々基礎スキルを高めています。
そんな状況で「いま」現役のエンジニアはどうしたらいいのでしょう? 令和のラッダイト運動でも起こしてAIと戦う? エンジニアは終わったと見切りをつけて転職する?
菌類、実は現状そんなに悲観していません。現役エンジニアにとって、いまはむしろチャンスに恵まれた時代だと思っています。
技術は常に進歩してきました。それはソフトウェア開発でも例外ではありません。思い出してみてください、クラウドインフラの登場、仮想化やコンテナ化の流れ、Webアプリケーションフレームワークの普及など、「ゲームチェンジャー」と呼ばれる新技術の登場を、キャリアの中で一つや二つは経験しているでしょう。AIによるソフトウェア開発の変革もその一つですから、粛々と習得して生産性を向上させればいいのです。
ゲームチェンジャーによる転換期に現役エンジニアでいることは、その「前」の知識と経験があり、それを生かして「後」をリードする立場だと言えます。つまりわれわれは、「コードを手で書いた実務経験がある最後の世代」であり、「AIがコードを書くようになった最初の世代」なのです。
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実際にプロダクションコードを手で書き、テストし、デプロイして運用するという経験は、これからキャリアを積んでいくAIネイティブ世代のエンジニアには得難い経験です。特に最近は「AIが生成したコードの1行まで責任を持つべし」という意見が高まっていますから、本番環境で動くコードを書いた経験は大きな武器になるはずです。
また、AIによるコーディングツールは数週間や数カ月という短いサイクルで「覇権」が変わるエキサイティングなフェーズです。さまざまなツールを活用して生産性を上げ、新しい開発プロセスを作っていく役割も要求されるでしょう。
いままでの経験は大きな武器になり、新しい開発プロセスを開拓するフロンティアでもある。チャンスの山を感じませんか?
●「いま」のエンジニアの生存戦略
エンジニアという職業も、社会そのものまでもがすごい速度で変化していく現在、エンジニアはどんな生存戦略を立てればいいのでしょうか。答えはとてもありふれたものです。ずばり、「自分の成長によって道を切り開いていきましょう」です。
チャレンジを探して飛び込む
現在は社会のホワイト化によって、成長のために不可欠な「チャレンジ」の機会を逃してしまうリスクがある時代です。強制的に負荷をかけられることが減った良い時代ですから、自分でチャレンジを探して飛び込んでいきましょう。
菌類、エンジニアとしての能力には「技術力」と「仕事力」の2つがあると考えています。それぞれを伸ばすためのチャレンジを探す方法を、ちょっと考えてみましょう。
技術力はコミュニティーで伸ばす
設計、実装、運用や開発プロセスといったソフトウェア開発の技術を伸ばすには、コミュニティー(会社の枠を超えた興味、関心で集まったエンジニアたちの活動)に参加するのが効果的です。
コミュニティーでは、それぞれが技術や知識、経験を持ち寄ります。会社の業務で経験するよりもはるかに幅広い課題と解決、技術と経験に接することができる場は、自分の知識と経験を広げてくれます。
自社で使っていない技術、自社よりスケールの大きな課題、自社では絶対に経験したくない失敗の事例まで、コミュニティーの多岐にわたるトピックは、自社の業務だけでは見えない景色を見せてくれます。
コミュニティーには「それぞれが持ち寄る」と書きました。コミュニティーの文化では、参加者は単なるお客さんではなく技術や知識、経験を共有することがよしとされています。つまり、自分の持っているものをアウトプットすることも重要です。
これはコミュニティーの一員となるためだけでなく、自分の経験を技術や知識として定着させるためにも重要な行動です。コミュニティーでアウトプットするという目標があることで、自分に負荷をかけることができます。
さらに、コミュニティーには立場も経験年数もさまざまなエンジニアが集まってきます。ネットや著書で名前が知られたすごいエンジニアも大勢いますので、彼らが何を考えどう振る舞っているかを知ることは、大きな刺激になるのです。
そして、彼らもまた悩めるエンジニアであり、雲の上にいるように見えても自分がいる場所から地続きだと知ること、つまり自分も成長を重ねてそこまで行ける(可能性がある)と知ることは、エンジニアとしてのキャリアに明るい希望をもたらしてくれます。
でも、どうやってコミュニティーに参加すればいいのでしょうか。特に2020年のコロナ禍以降にエンジニアになった若い方は、「コミュニティーしぐさ」が断絶してしまった世代でもあります。そんな皆さまのために、菌類直伝「いますぐできるコミュニティー入門」をお届けします。
エンジニアとしての「人格」を作る
「Twitter」(現X)などSNSのアカウントは、そのまま交流の起点になります。名刺交換するより相互フォローした方が早いですからね。手際のいい人は自分のアカウントのURLのQRコードやNFCカードを持っていて、スマートフォンですぐアクセスしてもらえるように準備しています。
エンジニアなので「GitHub」のアカウントも作っておきましょう。コミュニティーでアウトプットするための素材を管理するためだけでも大変便利ですし、何かモノを作りたいと思ったときには絶対に必要になります。
アウトプットの「場」も作りましょう。具体的には、何らかのブログです。「はてなブログ」や「エンジニアライフ」などのサービスでもいいですし、「Zenn」や「Qiita」でも構いません。GitHubのアカウントを作ったら、GitHub Pagesという機能を使うこともできます。自分のブログをホスティングするための技術選定と準備は、それだけで技術的なアウトプットのネタになりますよね。
SNSなどのアカウントを作るなら、アイコンも重要な要素です。オリジナリティーがあり、判別性が高く、著作権を侵害していない画像を用意しましょう。自分の顔写真でも構いません。最近はAIがイラストも生成してくれますから、頼んでみるものよいでしょう。
このようにして、インターネット上に「エンジニアとしての自分」を誕生させます。普段の生活と混ぜてもいいのですが、いまから用意するなら別人格にした方がいいと思います。猫やラーメンの写真は別のアカウントにアップしましょう。
交流する
エンジニア人格ができたら、他のエンジニアと交流していきましょう。まずはSNSでフォローすることで、情報が流れてくるようにします。エンジニアの知り合いからたどっていくのが簡単ですが、心当たりがなければ著名なエンジニアを何人かフォローし、そのフォロワーの中でエンジニアっぽい人をフォローし……とツリーをたどっていけば、すぐにタイムラインがエンジニアリングに染まるはずです。
並行して、自分でもSNSに発言していきましょう。何も発言していないアカウントは、素性が分からないのでフォローされる可能性が下がります。どこかのニュースサイトで見た技術的なニュースや、タイムラインに流れてきたテックブログなどは、読んだ感想を添えるだけで立派なアウトプットになります。
エンジニアのブログを閲覧するのもお勧めです。ブログにはRSSやメール通知など更新を知るための機能がたくさんありますし、ブログ筆者のSNSをフォローしておけば、きっと新しい記事のURLを流してくれるはずです。
このようにして、技術的な情報を受け取るだけでなく発信するようになれば、自然にエンジニアとしてのソーシャルグラフが育ってきます。興味のある領域のトピックが常に流れているタイムラインができれば、情報収集の効率がグッと上がります。
参加する
エンジニアとしての人格ができたら、コミュニティーのイベントに参加してみましょう。オンラインよりはオフライン、大きなカンファレンスより小さな勉強会の方がより密に交流できます。
発表者に話しかけて感想を伝えたり質問したりするもよし、参加者同士で発表についての意見を交換するもよし。リアルな場でエンジニア同士の交流をすると、世界が大きく広がった感覚を得られます。
先ほども書いた通り、コミュニティーの参加者はアウトプットすることが良いとされています。自分の経験や知識をネタとしてストックしておき、テーマが合うイベントで発表するのを目標にしてみましょう。
インプットとアウトプットのループを回す
こうしてコミュニティーに参加する習慣が付くと、インプットとアウトプットのループが回るようになります。仕事で得た経験をネタとしてストックし、コミュニティー向けにアウトプットしていく。コミュニティーで得た知見から学び、自分やチームの技術力向上に生かす。そんな習慣が付けば、エンジニアとして技術力を伸ばしていく準備はバッチリです。
仕事力は上司で伸ばす
さて、技術力と対になる「仕事力」はどうやって伸ばすのか。それには「上司」を使うのが一番効果的です。
大前提として、「部下を成長させる」のは上司の重要な仕事です。つまり、部下であるあなたが「成長のためにチャレンジしたいです」と言い出したら、全力で応援してくれるはずです。成長の機会としてチャレンジを求めていることを伝え、支援をお願いしましょう。
もしパッとチャレンジのネタが出てこないようだったら、「上司の仕事を奪う」のがお勧めです。「その仕事やらせてくれませんか?」と部下に言われたら、上司は大喜びしてくれるはずです。
チャレンジするときに大切なポイントは、「いまより責任が大きい」ことです。自分で責任が取れる範囲の仕事では、成長に必要な負荷は得られないでしょう。
技術的な仕事を奪う
上司もエンジニアであれば、部下よりも抽象度の高い仕事をしているはずです。ソフトウェア、データベース、インフラなどの設計、アーキテクチャの選定、デプロイパイプラインの構築など、実装としてのプログラムを書く外側の仕事へのチャレンジは、成長に直結するチャレンジです。
コードレビューや新人のオンボーディングなど、チームメンバーとのコミュニケーションもいい題材です。どちらも自分で理解していることが求められますから、現状で理解が甘いところを明らかにできます。
コミュニケーションの仕事を奪う
ソフトウェアは1人で開発するものではありません。業務で開発するソフトウェアには多くのステークホルダーがいるはずですから、彼らとのコミュニケーションも責任が大きい仕事です。そして、自分のチームから距離が離れるほど難易度が上がる傾向があります。
例えばバックエンドチームのエンジニアだったら、フロントエンドのクライアント開発チームとAPIの仕様を検討する機会などがあるでしょう。インフラやSRE(サイト信頼性エンジニアリング)、QAなどのチームとも関わりがありそうです。こういったコミュニケーションに参加することで、相手チームの視点を知ることができます。また、自分のチームへの理解が不足しているとコミュニケーションに不都合がありますよね。そこを埋めることでチームへの解像度が上げるのも、仕事力として重要なスキルです。
コミュニケーションの幅が広がっていくと、その先にはビジネスサイドなど別の部門があったり、外部サービスのベンダーがいたり、取引先や顧客なども登場したりするかもしれません。上司がこうしたステークホルダーとのコミュニケーションを担当しているなら、それを奪うのは仕事力を上げるためにとても良いチャレンジになるでしょう。
会社員は守られている
こうしたチャレンジに、失敗のリスクを感じる人もいるでしょう。ですが、上司の仕事は「部下を成長させること」です。そのためのチャレンジであれば全力で支援してくれるはずです。大き過ぎる責任を追い過ぎるとか、高過ぎるリスクを取るとか、多過ぎるタスク量を背負うとか、そういったむちゃもケアしてくれます。だって、その仕事を成功させたいのは上司も同じですからね。
さらに、仕事におけるチャレンジには「うまくいったら自分の手柄、失敗したら上司の責任」という「おいしい」ポイントがあります。もちろん成功のために全力を尽くすのは当然ですが、その前提さえあれば、部下は成長するのが仕事、上司は責任を取るのが仕事です。そう考えると、チャレンジに過度なリスクを感じなくなるはずです。
会社員にとって最悪の事態は「クビになること」です。でも大丈夫。どうにもならない失敗をしたとしても、成功のために全力を尽くし、法的、倫理的に問題があるミスでなければ、損害賠償などそれ以上の訴追を受けることもありません。
ちゃんとした会社であれば、そのようなミスからも貴重な学びを得ることができた、と喜んでくれるでしょう。全力を尽くしたのであれば、堂々と失敗してもいいのです。1つの失敗で会社も部下も大けがすることがないように「ガードレール」を設置するのも、上司の仕事ですからね。
●まとめ
ホワイト化とAI導入が進み、若い優秀な力が台頭してくる現代において、エンジニアとして生きのこりキャリアを積むために必要なことをお話ししてきました。おさらいをしておきましょう。
1. 社会のホワイト化によって、個人の成長は自己責任になりました。自分から成長に不可欠なチャレンジに飛び込み、技術力と仕事力を伸ばす習慣を身に付けましょう
2. 技術の発展は高速かつ不可逆です。変化に対応するために過去の経験を生かし、新しいことを学びましょう
3. 技術力はコミュニティーで、仕事力は上司で伸ばしましょう
今回は2部構成の長い記事になりました。皆さんが変化の速い時代に合わせて自分をアップデートしていくために、少しでも参考になれば幸いです。
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