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ソニーは中国の家電大手・TCLとの間で、テレビを軸としたホームエンタテインメント領域において戦略的提携を行うと発表した。2027年4月を目標に合弁会社を設立、テレビ関連の開発から製造、販売までを合弁会社へと移行していく。資本比率は、TCL51%・ソニー49%とされ、今後のテレビ事業は次第にTCL主導になっていくと考えられる。
【写真を見る】TCLが作っている98インチのテレビ。パネルも自社で作っている
ソニーがテレビ事業から離れていくことは、「日本の家電事業が終わっていく」ことの象徴に見える。そのことはある意味で事実であり、否定できない。
ただ、実際になにが起きるのかを考えると、もう少し冷静な見方もできるようになってくる。
では、なぜソニーのテレビ事業は分離され。TCL傘下で生き延びることになるのか。その事情を解説していきたい。
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●対象は「テレビとホームオーディオ」 必須だった構造改革
まず、今回発表された内容について改めて確認してみたい。
対象となるのは主に「テレビとホームオーディオ」の部門だ。ソニーグループには映画や音楽、ゲームなど複数の事業体があるが、いわゆる家電を担当しているのは「ソニー株式会社」。以下本記事でも「ソニー」とだけ書いた場合には、このソニー株式会社のことを指す。
ソニーの事業は、同社グループ内では「エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)」分野と呼称されている。ET&Sにはテレビの他、カメラやヘッドフォンなどの事業が含まれる。
近年ソニーが力を入れており、収益源としても大きくなってきているのは、「産業を支えるテクノロジー」の部分。映画向けのカメラやLEDウォール、画像合成支援などに加え、スポーツの自動判定に使われる「ホークアイ」技術やスタジアムの中継システムなどを含む。
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われわれが思い出す「家電」という領域はごく一部になっており、ソニーはずいぶん前から「家電の会社」ではなくなっている。ゲームや音楽を含むソニーグループ全体を指して「家電の会社ではない」と言われることは多かったが、実のところ、家電に近いET&S分野を手掛けるソニー自体も、いわゆる「家電メーカー」ではなくなっている。
その中で、なお事業として一定の量を持ちつつも「構造改革が必要」とされてきたのが、「テレビ」と「スマートフォン」だ。
以下の資料は、ソニーが25年6月に公表した事業計画を説明したプレゼンテーションからの抜粋である。濃い緑と青の領域の比率を増やしつつ、左端のテレビ・スマートフォン領域は「成長・創出/領域拡大 以外」と定義され、売上高構成比を下げていく方針が示されている。
今回の発表をもう一度整理すると、対象となるのは「テレビ」とそこにひも付く「ホームオーディオ」領域、要はホームシアターなどに向けた製品群だ。これはまさに「構造変革・転換領域」に位置付けられた部分。一方で、リリースに言及のない、ヘッドフォンなどの「パーソナルオーディオ」や「プロオーディオ」、カメラ・レンズなどは、事業を拡大していく領域にある。
すなわち、今回の施策で「ソニーの中の個人向け製品事業がみな分離され、TCL傘下に入る」というのは大きな誤解であり、その展開がテレビ周りに集中している……という事業が分かるだろう。
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他方で、もう1つの「構造変革・転換領域」であるスマートフォンには言及がない。今回の施策の範囲でないのは間違いがないことなのだが、事業売却・分離を含めた見直しが迫っているのではないか、という懸念も抱かせる。
●「100インチオーバー」まで多様化するテレビ市場で求められるもの
現状世界のテレビ市場は、サムスン・LGという2社の韓国勢と、ハイセンス・TCL・シャオミなど中国勢が主力だ。日本メーカーがトップランクに出ていたのはもう10年以上前の話であり、数量面を含め、今はまったく存在感がない。
理由はシンプル。大量かつ幅広いバリエーションの製品を作らねば戦えない市場だからだ。
テレビのコストは大半がディスプレイパネルで構成される。ディスプレイパネルを大量に調達した上でいかに効率よく組み立て流通させるかがビジネスの根幹に来るわけだ。
しかも現在は、テレビのサイズバリエーションがどんどん拡大している。
日本市場だけを見ると、大型テレビといえば50型くらいで、75型を超えるようなものは特別な製品……という印象があるかもしれない。だが世界的に見れば、100インチを超える超大型テレビも数千ドルで買えるような、手が届く製品に変わってきている。
ソニーのようなメーカーは、この10年、高画質・高付加価値のテレビを売ることで差別化を進めてきた。しかし、単純な画質だけでなくサイズでのバリエーションも求められるようになってくると、生産性・調達力の影響はより大きくなってくる。例えば、テレビに求められるサイズが「30インチから70インチ」の時代と、「30インチから120インチ」の時代では、それだけ製品のバリエーションは増えるし、巨大な製品を売る努力も必要になる。
100インチオーバーはあくまで付加価値商品であるし、ある種の「見せ球」に近い。だが、高付加価値製品がどんどん大型領域での勝負になってきていること、大型製品も多数作り、販売できる効率の良い体制であることは、テレビメーカーに必須の条件となってきた。中国大手の生産力・調達力は圧倒的であり、グローバルで戦うには、「差別化された製品を少数市場に売る」形では立ち行かないのだ。
●垂直統合型で世界大手のTCLを選んだ必然
では、ソニーはなぜTCLをパートナーに選んだのだろうか?
これは現実的には、TCLしか選択肢がなかったと見ることができる。
韓国系2社は自分たちだけでもやっていける。中国勢の追い上げはすさまじく、今後も予断を許さぬ状況ではあるが、少なくとも、いまさら「ソニー」「BRAVIA」という看板は必要ない。彼らは十分にプレミアムブランドだ。
残る中国系大手の中だと、ハイセンスかTCLか。ハイセンスはすでにブランド認知も上がってきているので、さらに追いかけるTCLの方が有利だ。
また、TCLは傘下に、ディスプレイパネルを製造するTCL華星光電技術(CSOT)を抱えていて、垂直統合型のビジネスを強みとしている。ライバルで張るハイセンスはディスプレイパネル事業を抱えておらず、パネル以外のコンポーネント製造で差別化している状況だ。
そこで違いを打ち出すには、ブランド力・画質を含めた開発力をもつソニーを取り込み、「垂直統合の生産性を生かしたテレビ事業」を目指す必要がある……と判断されたのだろう。
ソニーのテレビ事業がもっと弱っており、ブランドだけを切り売りするしかない状況なら、パートナーも違う選択肢があっただろう。そういう意味では、今回の事業分離は「BRAVIAにまだ価値があるから」実現したことなのだ。能力もブランド価値もあるうちの事業分離なので、大きなパートナーと価値のある統合を目指すのが必然、ということになる。
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