
サムスン電子の3つ折りスマートフォン「Samsung Galaxy Z TriFold」が、12月12日に韓国で発売された。
サムスン初の3つ折りスマートフォンというインパクトけもあり、発表直後からフォルダブル市場の次なる方向性を示す製品として注目を集めている。筆者は韓国で実機を入手し、約1週間の実使用を通じて、3つ折りスマホというデバイスが実用面でどこまで利用できるのか確認したい。
●10型の大画面をポケットに 開くと最薄部3.9mmのボディーに
展開時に10型ディスプレイを備える3つ折りスマートフォン「Galaxy Z TriFold」は、サムスンがフォルダブル市場の次なるステップとして投入した意欲作だ。
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閉じた状態のディスプレイは約6.5型、厚さは12.9mmと、従来のGalaxy Z Foldシリーズと近い感覚で持ち運べる。一方で展開時は、最薄部3.9mmという薄さの中に10型ディスプレイが現れる。重量は309gとスマートフォンとしては重いものの、10型クラスのタブレットとしては軽量で、展開時の取り回しも良好だ。
本機は2枚のディスプレイで構成されており、いずれもDynamic AMOLEDパネルを採用する。メインディスプレイは展開時に約10型となり、解像度はQXGA+相当。アスペクト比は一般的なタブレットに近く、Web閲覧や動画視聴、複数アプリの同時表示を前提に設計されている。
リフレッシュレートは最大120Hzに対応し、スクロールやウィンドウ操作時の滑らかさも確保されている。
閉じた状態で使用するカバーディスプレイは約6.5型。一般的なスマートフォンと同等のサイズ感で、通知確認やメッセージ返信、片手操作を想定したスマートフォン用のUI(ユーザーインタフェース)で最適化されている。もちろん、カバーディスプレイも120Hz駆動に対応している。
2枚のディスプレイはいずれもピーク輝度2600ニトの高輝度仕様で、屋外視認性にも配慮されている。HDR表示にも対応しており、動画配信サービスや写真閲覧時の表示品質はハイエンドクラスといっていい。Dynamic AMOLED技術により、色再現性やコントラストの高さもGalaxyのフラグシップと同等水準を維持している。
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●折りたたみ機構はZ Foldと同じ内折り構造で耐久性を重視
Galaxy Z TriFoldは、2つのヒンジを用いた3つ折りの構造を採用し、全てのディスプレイが内側に折りたたまれる構造を採用している。閉じた際の形状は「G」に近く、外折りを含む「Z」型構造を採用するHuaweiの「Mate XT」とは設計思想が大きく異なる。
1枚目は従来のフォルダブルスマートフォンと同様に開き、2枚目はその延長線上で同方向に展開する。ヒンジの動作は滑らかで、初期の折りたたみ端末に見られた引っ掛かりや不安定さは感じられない。
2枚目のディスプレイは、フレームとの間にわずかな隙間が設けられており、指をかけやすい構造となっている。これにより、無理な力を加えずに展開できる点は実用面で評価できる。
また、折りたたみの順序を誤ると警告表示とバイブレーションで通知され、正規の方法でたたむよう画面が表示される。全ての画面が外側に露出しないよう配慮されている。
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一方で、途中角度を保持するフレックスモード的な使い方には対応しない。あくまで「完全に開閉して使う」設計であり、折りたたみ途中の活用を重視する製品とは異なる方向性といえる。
●「スマホサイズの3分割マルチタスク」の実用性に驚く
本機の特徴は、展開時に10型サイズのタブレット端末になることはもちろん、スマートフォンの幅やサイズを維持したまま3アプリを同時表示できる点にある。
例えば、ブラウジング+X(旧Twitter)のタイムライン閲覧+TikTokやInstagramの縦動画の再生、ゲームをプレイしながら攻略サイト閲覧+Discordといった通話、チャットアプリの使用もできる。特に縦動画系のアプリは表示やコメント欄が崩れることなくスマホサイズで表示できることが魅力だ。
また、2分割でも大画面でYouTube配信とコメントを表示しつつ、SNSのハッシュタグ投稿を小窓で追うことも可能。YouTubeの画面が過度に小さくならない点や、コメント表示時に動画が隠れたりしない点がうれしい。
PCに向かえない出先や、ベッドの上で寝転んだ場面でもしっかり情報の収集、発信ができる。3つ折りスマホは“推し活”用途との相性は抜群だ。
このようなブラウジング、SNS、動画再生を並行する使い方や、ゲームと通話、情報検索を同時に行うといったシーンでも、画面の狭さを感じにくい。圧倒的なマルチタスク性能を誇る。
サムスンのタブレット端末で利用できるタブウィンドウモードの「Samsung DeX」を単体で動作させることも可能。Bluetoothマウスやキーボードを用いれば、小さなモバイルPCとしても利用できる。スマートフォンとタブレット端末の境界を曖昧にする新ジャンルの端末と評価したい。
画面サイズのイメージ的には、Galaxy Z Fold7にもう1枚追加したと評するのが適切だろう。比較してみると、そのサイズ差は数字以上に大きく感じる。また、開いたときの画面表示も、スマホを拡張したGalaxy Z Fold7に対し、タブレット端末と同じ表示のGalaxy Z TriFoldという明確な差がある。
これだけのことができるのだから、スペックも気になるところ。Galaxy Z TriFold
は、プロセッサに「Snapdragon 8 Elite for Galaxy」を採用し、16GBのメモリと512GBのストレージを組み合わせる。このような構成からか、3画面を活用した状態でも動作は安定しており、マルチタスク時のレスポンス低下はほとんど見られなかった。
カメラ構成はGalaxy Z Fold7とほぼ共通しており、2億画素のメイン、1200万画素の超広角、1000万画素の3倍望遠を搭載する。画質はハイエンド機として安定しており、日常撮影用途で、他のGalaxy上位モデルと大きな差異はない。
バッテリー容量は5600mAh。通常利用ではGalaxy Z Fold7に近い電池持ちだが、ゲームなどの高負荷な処理や複数アプリの並列処理を長時間行うと消費は早く、使い方によって評価が分かれる。充電速度は45Wであり、対応充電器なら1時間で80%ほどまで回復できる。
●Galaxy Z Fold7の上位互換ではないGalaxy Z TriFold 日本でも販売してほしい
Galaxy Z TriFoldは、3つ折りという形状そのものよりも、大画面を前提とした使い方の最適化に重点を置いた製品だ。
仕事用途ではDeXモードで資料閲覧と編集の同時進行、クリエイティブ用途では映像制作と参照の並列表示が可能。日常ではタブレットモードで複数のコンテンツを同時に消費するといった使い方に向く。
開いたときの画面サイズが大きくなるのだから、Galaxy Z Fold7の上位互換に思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。Galaxy Z Fold7は、薄型軽量ボディーによる携帯性と汎用(はんよう)性を持ち合わせ、フレックスモードなどの折りたたみディスプレイを用いた体験を重視している。
一方、Galaxy Z TriFoldにはフレックスモードなどはなく、展開時のタブレット級の大画面を生かした並列処理に特化している。両者は上位と下位の関係ではなく、用途によって選択が分かれる存在といえる。
さて、Galaxy Z TriFoldの価格は韓国向けで359万400ウォン(約38万円)と高価だが、スマートフォンとタブレットを1台に集約し、並行作業やコンテンツ消費の効率を高めたいユーザーにとっては、明確な価値を持つ。
特にコンテンツ消費に対して時間当たりの効率を求める「タイパ」重視の方にはうってつけの商品だと感じた。
加えて、ヒンジ周りの耐久性やマルチタスクを重視したソフトウェアなど、 3つ折りスマートフォンを「技術誇示を目的とした実験的存在」から「実用面もある程度確保した用途特化型デバイス」へと引き上げた1台。ぜひ日本でも販売してほしいスマートフォンだ。
●著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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