
「管理職は罰ゲームだ」――そんな言葉がささやかれるほど、マネジャーの負担は年々重くなっています。
メンバの個々の状態を把握し、1on1をし、育成と成果の両立を求められる。その一方で、事業環境は不確実性を増し、求められる判断のスピードと質は高まるばかりです。
前編【「管理職罰ゲーム化」を防ぐ? AI活用できるマネジャーと活用できないマネジャーの違い】では、生成AIを使って成果を出せるマネジャーとそうでないマネジャーの違いを整理し、メンバーのマネジメントやAI活用において重要なマネジャーの「ローコンテクスト化」を解説しました。ローコンテクスト化とは、マネジャーがどのような思考プロセスで結論に至ったのかを言語化し、共有できる形にしておくことで、認識のズレを生まれにくくすることでした。
成果を高めるにはマネジャーがローコンテクスト化に注力すると同時に、企業の人事・IT部門やサービス提供者によって、マネジャーが働きやすい環境を整備することも重要です。
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後編では、「マネジャーが働きやすい環境」を考えながら、「今後、AIがどうマネジャーを支えていくか」について解説します。
●マネジャーが時間をかけているのは「メンバーとのコミュニケーション」
マネジャーの業務は多岐にわたりますが、その中心には「メンバーを育てて成果を生み出すこと」があります。日々の状況を把握しながら、メンバーを動機付けるなど、成長に向けてアドバイスすることは極めて重要な仕事です。一方で、非常に負担がかかることでもあります。なぜなら、メンバーの性格や得意・不得意、タスクの進捗状況、キャリアの展望など、一人一人の個別情報を細かく読み取り、相手や状況に併せて関わり方を変える必要があるためです。
マネジメントにおいて重要な「メンバーとのコミュニケーション」の負担は大きいからこそ、マネジャーが働きやすい環境として、テクノロジーがコミュニケーションを支援することが必要だと考えています。コミュニケーションの前提となる情報収集や、情報をどう判断すべきかなどをAIが支援できるようになると、マネジャーの働き方は大きく変わってくるでしょう。
●マネジャーとテクノロジーのすみ分けを整理する
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では、メンバーとのコミュニケーションを支援するAIは、どのような役割を担い、マネジャーを支えていくのでしょうか。
この問いを考えるにあたっては、マネジャーが担う業務と、RPAやAIなどのテクノロジーが担う業務の役割分担を整理することが重要です。
当社が保有するマネジャー約7.4万人分のデータによると、優秀なマネジャーは、日々のコミュニケーションや1on1などを通じてさまざまな情報を収集し、状況に応じてコミュニケーションの取り方を変えていることが分かっています。この際、個人の成長課題や稼働状況、キャリアプランの進捗などの情報を収集し、情報を踏まえてメンバーの状態や関わり方を判断しています。
このプロセスを分解すると、「情報収集」「判断・解釈」「動機付け」の3段階に整理できます。3つのうち、多くの情報を扱う「情報収集」や過去のナレッジを参照することが有用な「判断・解釈」はAIが得意な領域であるため、AIを活用することが効果的だと言えます。一方で、「動機付け」はAIが不得意な領域かつ、メンバーとのコミュニケーションにおいて重要なプロセスだからこそ、マネジャーが担うという業務のすみ分けが考えられます。
このようにテクノロジーを活用することができれば、マネジャーの負担は軽減され、マネジャーの力をより重要な業務に投下することが可能になります。
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●テクノロジーと共に働く、マネジャーの働き方はどう変わるか
今後、テクノロジーと共に働くマネジャーが増えると、マネジャーの働き方は大きく変わります。具体的には、下記のような働き方ができるようになると考えています。
(1)日々の変化を文脈として整理し、「今、必要な関わり」を示す
AIがメンバーの状態に関する情報を収集し、「今週フォローが必要なメンバー」や「注意して見るべき兆候」などを解釈と併せて示す。
マネジャーは、AIが整理した情報をもとにメンバーの状態に合わせてコミュニケーションを取る。
(2)中期的なキャリア・成長支援の文脈をつなげる存在になる
これまでマネジャー個人が記憶していたような、一人一人の価値観・志向・過去のエピソードをAIが整理する。
マネジャーは、AIが整理した情報をもとに、メンバーのキャリアプランや成長課題に合わせて話すべきテーマを決め、一貫性のある助言を行う。
(3)優秀なマネジャーの判断を言語化し、マネジメントや成果創出の再現性を高める
普段、優秀なマネジャーが行っている判断をAIが言語化する。マネジャーやメンバーは、その観点をもとに、マネジメントや業務で成果を出せるようになる。
このように、テクノロジーと共に働くマネジャーが増えると「メンバーのコンディション不調に気付かない」「成長に向けたアドバイスが思い付かない」「低いクオリティのアウトプットが出る」といった問題は、少なくなるでしょう。
なぜなら、AIが継続的にメンバーの変化を捉え、マネジメントにおける注意点や対応時のヒントを教えてくれるからです。その分、マネジャーはメンバーの成長や今後のキャリアに深く向き合ったり、事業の未来を構想したり、マネジャーとして大切にしている組織の在り方を浸透させるなど、マネジャーにしかできない創造性の高い仕事に注力できるようになります。
●「マネジャーを支えるAI」は、マネジャーの仕事をより“人間的”にする
テクノロジーと共に働くことが広がれば、組織における役割や責任の在り方そのものにもインパクトを与えるでしょう。
実際に、AI活用が進む米国では、組織内の人的資本を通じて働き方を整備するCHRO(最高人事責任者)と、システムや技術を通じて働き方を整備するCTO(最高技術責任者)の役割を統合する企業も現れています。もはや、「HR」によるマネジャーの能力向上と、「テクノロジー」によるAIの働きやすさの整備は、どちらも生産性や成果の向上につながる両輪であり、切り離せない問題になりつつあると言えます。
AIの発展によって、これまで「罰ゲーム」と揶揄されることもあったマネジャーの仕事も、時間の余裕を取り戻すだけでなく、メンバーの成長を支援し、チームでの挑戦に時間を掛けることができ、自分が想像した以上の成果が生まれる、というように面白さを再び取り戻していくはずです。テクノロジーと共に働くことで、マネジャーの仕事がより前向きで報われる未来が開けていくと信じています。
●著者紹介:藤田理孝(ふじた まさたか)
株式会社リンクアンドモチベーション プロダクトマネジャー。東京大学経済学部卒業後、新卒でリンクアンドモチベーションに入社。採用・育成・制度・風土などのテーマに横断的に取り組み、顧客の組織変革を推進するコンサルタントとして活躍。2021年にプロダクトマネジャーに転向し、現在はクラウド事業全体の戦略策定・開発推進を担っている。
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