メモリ価格の高騰、ゲーム機への影響は? 「スイッチ2」「PS5」で値上げはなさそうだと言えるワケ

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2026年02月02日 06:00  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 2025年秋以降、メモリ価格の高騰が続いている。


【画像】ゲーム機にも価格高騰の波が?


 米マイクロン製のDDR5メモリ「CT16G48C40U5」の平均価格は、2025年9月まで8000円台を推移していたが、現在は4万円を超え、同等品も安くて3万円台後半が相場だ。以前は2万円台で購入できたDDR5(32ギガバイト×2)も、現在、10万円以上で取引されている。


 メモリ高騰で懸念されているのが、コンシューマ向けゲーム機の価格上昇だ。「Nintendo Switch 2」の国内専用版の希望小売価格は4万9980円だが、メモリの高騰により値上げを予想する声も出ている。「PlayStation 5」は過去に値上げを実施しており、さらなる値上げの可能性も見えてきた。ゲーム機価格高騰の可能性を探る。


●メモリ高騰のきっかけは「OpenAI」?


 国内でメモリ価格が大幅に上昇している。自作PCのユーザーなどが使うDDR5メモリ単体の価格は、冒頭の通り5倍になった。海外でも同様に価格は上昇している。


 昨今の価格高騰のきっかけとされるのが、ChatGPTを開発するOpenAIと、サムスンおよびSK Hynixが結んだ供給契約だ。両社がOpenAIに対し、DRAMを毎月ウエハ90万枚分供給するという内容で、OpenAIが2025年10月1日に発表した。


 DRAMの世界シェアはSK Hynixが約36%と首位であり、サムスンは34%で業界2位に位置し、月産90万枚は世界の生産量の4割に相当する。2トップの企業がメモリの大半をOpenAIに供給し、メモリが不足するという憶測が広がったため、価格が高騰した。だが、すぐに供給するわけではなく「計画」の話であり、生産能力拡大を示したものに過ぎない。


 DRAM市場で3位の米・マイクロンが12月に発表した消費者向け市場からの撤退もメモリ相場を後押しした。個人向けに供給する「Crucial」ブランドの製品から撤退するという内容で、2026年2月までに出荷を終了するという。AI投資でデータセンター向けのメモリ需要が高まっており、経営資源を集中させる狙いだ。


 つまり昨今のメモリ価格高騰は「AI開発にメモリが奪われ、個人向けの供給が不足する」という懸念から生まれた現象である。


●Nintendo Switch 2への影響は?


 身近なところでは、ゲーム機の値上げが懸念されている。


 任天堂の株価は6月のNintendo Switch 2発売以降、好調な水準を維持していた。一時期は1万4000円台まで上昇したものの、12月から急落。年明けは一時的に1万円を下回った。


 任天堂に関しては、メモリ価格の上昇が減益につながるという憶測がでている。Nintendo Switch 2に使われているDRAMは、SK hynix製LPDDR5Xで、容量は計12ギガバイト。LPDDRとは、PCなど汎用的なメモリから派生した省電力特化型のメモリであり、主にノートPCなどに使われている。AIブームによってストレージの価格も上昇しており、ゲーム機自体の原価で15%上昇する見込みだ。


 昨今のメモリ価格高騰について任天堂の古川社長は「中長期的な事業計画」に基づいた調達・備蓄を行っているとしながら、短期的な業績への影響を否定している。メーカー同士の契約では事前に価格が決まっているため、時価には影響されにくいという。だが次の契約期間ではメモリの仕入価格が上昇する可能性がある。


 ちなみに初代Nintendo Switchは、米国向けに30〜50ドル程度値上げしたことがある。 Nintendo Switch 2の国内価格は4万9980円で、5万円の大台に乗ると売れ行きに影響を与える可能性がある。コンシューマ向けではぎりぎりの価格帯だ。メモリ価格が高止まりする場合、購買力の高い海外向けで値上げが起きるかもしれない。


●PlayStation 5への影響は限定的か


 ソニーのPlayStation 5は、16ギガバイトのGDDR6を搭載している。単純にNintendo Switch 2よりもメモリ容量が大きいため、コストアップによる値上げを予想する意見が聞かれる一方、GDDR6はほぼゲームに特化したメモリであり、影響は小さいという意見もある。


 なお、2026年3月期第2四半期の業績説明会でソニーは、メモリ価格上昇に関する質問に対して下記のように回答した。


 「メモリ価格上昇に伴うハードウェアの収益性への影響については、今期に関しては、既に部材は確保済みであり影響はないが、部材価格が高くなるとハードウェアの収益性に影響があるため、注意深く市場動向を見ている。


 ただし、来年度以降、PS5のインストールベースがさらに増えることを前提においた場合、今後のハードウェアの収益性への影響を最小限にするというよりも、既存のコミュニティの中でしっかりマネタイズすることで収益基盤を作っていくことが重要だと考えている」


 今期はメモリを既に確保しているため、値上げの可能性は低いと考えられる。来期以降については、ハードウェア単体ではなくオンラインを含めた収益を考えるとしており、値上げは限定的かもしれない。


 現在の通常版PlayStation 5の希望小売価格は7万9980円だ。発売時の5万円台から段階的に値上げを続けており、国内向けにおいて値上げの余地は狭まっている。


●国内版は「低スペックかつ低価格」が主流に?


 少なくとも直近ではNintendo Switch 2とPlayStation 5の値上げは見送られるだろう。ただし、今後もメモリ価格の高騰が続けば、任天堂・ソニーは値上げに踏み切らざるを得ない。


 一方、近年の潮流でみられるのが、日本版と海外版で仕様を変える戦略だ。


 任天堂はNintendo Switch 2の発売時、日本語版を海外版よりも2万円安く設定した。転売ヤー対策として評価する声も多かったが、購買力の低下した国内消費者向けの施策であるといえる。約7万円では売れ行きが不調だったはずだ。主目的は集客であり、価格差で副次的に生じる転売を抑えるため言語を限定したと考えられる。


 ソニーも同様、2025年に「デジタル・エディション」としてPlayStation 5日本語専用モデルを5万5000円で発売した。通常のデジタル・エディション版は7万2980円であり、2万円弱の“値下げ”である。しかしSSDの容量は通常版が1テラバイトであるのに対し、日本語専用モデルは825ギガバイトと削減している。


 ゲーム機の販売台数はいずれも国内より海外の方が多い。メモリ価格の高騰が続く場合、海外向けは値上げしつつ、国内向けはスペックダウンさせる施策が続くかもしれない。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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