慈恵病院の妊娠相談窓口(同病院ホームページより) 予期せぬ妊娠を誰にも相談できず、支援も求められないまま孤立出産する女性は「周囲に妊娠や出産を知られたくない」という事情を抱える場合が多い。出産発覚を恐れ、乳児の遺体を遺棄する事件も起きている。こうした女性と生まれてくる子どもを守るため、専門家は「匿名で出産できる場所を増やすべきだ」と訴えている。
神戸市北区のマンションで1月、孤立出産した女児の遺体をポリ袋に入れ自宅に遺棄したとして、20代の女が死体遺棄容疑で兵庫県警に逮捕され、その後、女児殺害容疑で再逮捕された。女は出産翌日、匿名で赤ちゃんを受け入れる「赤ちゃんポスト」を国内で初めて設置した慈恵病院(熊本市)に、メールで「事情があり誰にも頼ることができません」「かかりつけ医もない」と相談していた。
電話で話をしたという同院の蓮田健院長(59)は女について「予期せぬ妊娠を家族に相談できず、周囲に知られることも非常に恐れていた」と話す。
蓮田院長によると、妊娠が親にばれると「縁を切られる」「見捨てられる」などと思い詰め、孤立出産に追い込まれる女性は少なくない。同院には孤立出産に関する多数の相談が寄せられるが、親に知られるのを極度に恐れ、乳児を殺害したり、遺体を遺棄したりしたと明かした女性も複数おり、警察に通報したという。
こども家庭庁の調査でも、2023年度に死亡した生後1カ月以下の乳児18人のうち、15人の遺体は遺棄されたというデータがある。
妊娠相談の担当者を支援する一般社団法人「全国妊娠SOSネットワーク」の佐藤拓代代表理事(74)は、孤立出産する女性の中には、発覚を恐れるだけでなく、知的障害などにより、誤った性知識を持っていたり、周囲に助けを求めにくかったりするケースも少なくないと指摘。支援強化の重要性を訴える。
現在、医療機関の担当者だけに身元を明かして出産する「内密出産」を受け付けているのは、全国で慈恵病院と賛育会病院(東京)の2カ所しかなく、遠方からの利用は妊婦の身体的負担も大きい。蓮田院長は、孤立出産後の乳児の死亡や遺棄を防ぐには匿名で出産できる環境が必要だとし、「各都道府県で1カ所ずつ体制を整えるべきだ」と訴えている。