「生まれた喜びのほうが大きい」ダウン症の長男を育てるラミレスが明かした“特別ではない”10年間

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2026年03月21日 10:00  週刊女性PRIME

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元プロ野球選手のアレックス・ラミレスさん

「ダウン症だからいろいろできない……なんてことはない」2015年に生まれた長男・剣侍くんがダウン症だとわかったとき、元プロ野球選手のアレックス・ラミレスさんは、戸惑う妻にそう声をかけたという。成長はゆっくりでも、言葉を覚え、家事を手伝い、スポーツに夢中になる─。“特別”ではなく“その子のペース”を尊重して育った息子は家族みんなを前向きに変えていった。

ダウン症もその子の“個性”のひとつ

「息子がダウン症だとわかっても、妻・美保との子どもが無事に生まれた喜びのほうがずっと大きかったんです」

 そう話すのは元プロ野球選手のアレックス・ラミレスさん。2015年に生まれた長男・剣侍くんは、出産直後に心臓が悪かったため他院に搬送され、ダウン症と判明した。

「妻は初めての出産でしたし、ダウン症がどういうものかも知らなかったので、これからどうしよう……と不安な気持ちでいっぱいだったようです。だから僕は、ふたりの子どもとして大切に育てていけばいいんだ、心配いらないよと勇気づけていましたね」(ラミレスさん、以下同)

 そう思えたのは、アメリカに住んでいたころ、ダウン症の子どもを持つ家族と親しく交流していたからだという。

「成長や学ぶスピードはゆっくりだけど、本当にかわいいし、みんなと同じようにリアクションもする。一般的な子どもと何も変わらないんですよ。

 どんな子どもにも得意・不得意はあり、ダウン症もその個性のひとつ。僕はクリスチャンですが、神様から選ばれた両親のもとに、ハンディキャップのある子どもが生まれるという考え方があるんです。だから僕らは、神様から子どもを預かった幸せな夫婦なんだと感じました」

辛抱強く話を聞くことが大切

 生後2か月で8時間にわたる心臓の手術を経験。現在10歳になった長男の成長には、目を見張るそう。

「公立小学校の支援学級に通っているので、学校では日本語、家庭では英語を使いますし、僕の母国語であるスペイン語もわかっているんですよ。食器洗いや洗濯などお手伝いも率先してやってくれます。ダウン症の人は筋力が弱いといわれますが最近は力も強くなってきたし、うっすら髭も生えてきて、大人びてきましたね」

 しかし、これまでの育児は忍耐がつきものだった。

「ダウン症の子と接するときは、とにかく彼らの話を辛抱強く聞くことが大切。彼らは賢いけれど、物事を理解するまでには時間がかかります。特にこだわりが強いので、例えば公園の同じベンチに2度座っただけで、これは自分のものだと訴え、ほかの子を座らせないこともある。そんなときも、根気よく説得しています」

 そして日常生活においては、ルーティンを守ることが重要なのだとか。

「僕は仕事で家を空けることが多く、家事の8割は妻がしています。その間に妻は、長男が好むルーティンを確立してくれたんです。僕はそれを尊重し、サポートする役割。

 ダウン症の子どもとの向き合い方に悩むお父さんは多いですが、彼らのペースに合わせてルーティンを手伝いましょう。ダウン症の子はとても純粋で明るい。だから両親が前向きな気持ちで接すれば、彼らもそれに応えてくれるんです。みんながハッピーで、暮らしやすくなりますよね」

 その後も子宝に恵まれ、ラミレス家は3男1女の大家族に。子育ては、みんなを平等に扱うこと、そして挑戦することをモットーにしている。

「ダウン症だからこれは無理、なんてことはありません。ほかの子どもと同じように育てますし、間違った行いは受け流さず、しっかり注意します。一緒に筋トレをしたり運動したりと、スポーツ一家そのものです」

 そのおかげで、長男は何事にも意欲的に取り組むそう。

「最近は水泳が大好きで、25mプールを休まず10往復するほど身体も強い。将来はパラリンピックも目指せるんじゃないかな。野球選手だった僕と、日本体育大学出身で長年チアリーダーだった妻のDNAを受け継いでいるなとうれしくなりますし、負けず嫌いな性格も僕らにそっくり(笑)」

 この子育て法は、ほかの3人の子どもにも良い影響を与えている。

「障害のことを細かく伝えていなくても、長男がうまく言葉で伝えられないときも、3人はどう接したら良いか察しています。だからといって普通にケンカもしますし、分け隔てなく一緒に遊んでいて。長男がユーモアあふれる冗談を言って、ほかの子どもたちが笑っている。そんな瞬間を見るのが、何よりの幸せなんです」

この子のことを隠す理由がない

 昨年には、ホノルルマラソンの前日に行われるマラソンイベントに参加。家族一緒に走る姿をSNSで発信し、大きな話題を呼んだ。

「障害がある子どもをSNSに載せたくないとか、存在を隠したいという人もいらっしゃいます。それは周りに心配をかけたくないからだとか、親の仕事に影響するからだと聞いたことがあります。でもほかの子どもは載せるのに、長男だけ隠す理由が僕にはありません。息子を誇りに思っていますから」

 そんな思いもあり、長男誕生の際にはダウン症のことも包み隠さず世間に公表した。しかし、心ない言葉を投げつけられることもあったという。

「当時は横浜DeNAベイスターズの監督だったので、野球に関するインタビューを受けたときに、長男が生まれたことやダウン症のことを話の流れで報告したんです。

 するとダウン症の子どもがいて大変だから、試合に負けても仕方がないという“言い訳”に聞こえると批判があって。野球のメディアで伝えるべきではないとも言われました。でも仕事の結果とプライベートは、一切関係ないこと。オンとオフはしっかり分けているので、筋違いの批判だと感じていました」

 だがそれは一部の意見。SNSで発信を続けることで、同じダウン症の子どもを持つ家族からの反響も多い。

「“剣侍くんはロールモデルです”とか“ラミちゃんファミリーの子育てを参考にしています”というポジティブなメッセージを頂くたびに、むしろ僕らが勇気づけられて。こういった方々のために活動していこうと、モチベーションも上がります」

ただ“スペシャルニーズ”があるだけ

 2020年には、障害がある子どもを支援する団体・バモストゥギャザーを立ち上げた。少年野球大会やチアリーディングなどのスポーツ活動、アートやプログラミングなどのイベント、チャリティー活動など幅広く行っている。

「ここは“ほんの少しの手助け”が必要な“スペシャルニーズ”を持つ子どもの自立を応援して夢を叶える場。そして障害の有無にかかわらず、子どもたちも家族も一緒になって参加することで、共生社会を目指しているんです」

 経営するジムでも、スペシャルニーズの子どもに向けたクラスをつくっている。

「長男が習い事をしたくても、体制が整っておらず断られたことがありました。だから、場をつくりたいなと。SNSを見て参加してくれたダウン症の子がいたり、長男もクラスの手伝いをしたりと、良い影響が広がっています」

 そんなラミレスさんは、ダウン症への理解を呼びかける。

「いまだにダウン症には偏見がつきものですが、ただ“スペシャルニーズ”があるだけということを知ってほしいです。障害があってかわいそうだとか、気の毒だとか、そう思われることがいちばん悲しいんです。家族は決してそんなこと思っていないですから。ダウン症の子もそんな思いを敏感に感じ取ってしまうので、かわいいね! 面白いね!と積極的に愛してほしいなと。彼らは純粋でユーモアのセンスもあって、美しい存在なんですよ」

1974年生まれ、ベネズエラ出身。1998年にメジャーリーグデビュー後、2001年に東京ヤクルトスワローズに入団。その後は読売ジャイアンツ、横浜DeNAベイスターズで活躍し、2016〜2020年には横浜DeNAベイスターズの監督を務めた。2023年に野球殿堂入り。

取材・文/植田沙羅

このニュースに関するつぶやき

  • これが日本の男なら かなりの確率で妻子を捨ててさっさと次の女見つけてまた子供を作っている事だろな
    • イイネ!2
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