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4月1日、宮崎県警は2025年10月に県内在住の80代男性がSNSを通じた「アナリスト」を名乗る女性に2億2000万円をだまし取られる特殊詐欺事件が発生していたと発表したが、警察庁によると、2025年の特殊詐欺事件の被害額は3241億円(暫定値)になり、過去最悪だという。
とくに、警察庁が4月10日に発表した「令和8年2月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」で被害が急増しているとして注意を呼び掛けたのが、「ニセ警察詐欺」と「SNS型投資・ロマンス詐欺」だ。
詐欺師たちはどんな手口で忍び寄ってくるのか。2025年に「ロマンス詐欺」に遭った50代IT会社経営者の高木圭一さん(仮名)に「巧妙なだましの手口」を聞いた。
「マッチングアプリを利用していた2025年9月29日、ヨガ教室を経営し、インストラクターをしているというとても美人な45歳の女性とつながりました。アプリのメールはお金がかかるので、彼女からの提案でLINEに切り替えました。
積極的な方で《お仕事は何をされてるんですか》《お仕事は順調ですか》《収入はどれぐらいなんですか》などの質問から、朝ごはんや晩ごはんの写真まで、鬱陶しく感じるほどメッセージが送られてきました。ただ、彼女は『結婚できる人との出会いを求めている』と言っており、私も未婚。色々聞いてくるのは、それだけ相手も本気なんだろうと思ってしまいました。詐欺被害にあった後、およそ2カ月間にやりとりしたメッセージをすべて印刷したらA4用紙で260ページにもなったのですが、今思えば、私の個人情報をどんどん引き出していたんですね」
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そんな高木さんに、女性は間をおかず「投資話」を持ちかけたのだった。
「日本の上場企業が東南アジアの有名ネットサイトを買収したという事案がありました。これ自体はニュースなどでも報道された事実です。彼女からそのサイトへの『プール金』に投資をしないかと持ち掛けられました。『プール金』とはサイトが販売する商品を買い付けるための資金とのことで、『サイトには日本からの注文がどんどん入る。プール金を投資するほど高配当が得られるが、逆に投資が少ないと買い付けができず利益が減って配当が得られない』と説明されました。
投資した資金の運用を確認できるというサイトも紹介され、IT系の会社を経営している私から見てもきちんとした作りに見えたので“本物だ”と信用してしまいました。また、私は彼女の紹介で参加したので、もし利益が得られなければ彼女にも迷惑がかかることになるとも言われました」
高木さんがお金を振り込むよう指定された口座は、すべて個人名義だった。女性は「この人たちが代行をしてくれている」と説明したという。「彼女に迷惑をかけたくない」という思いから頻繁にサイトへの投資を続けた高木さんだが、次第に金銭的に余裕がなくなっていく。そのことを女性に相談すると、150万円を投資資金として貸し付けると申し出てきたという。
「彼女はサイトに直接資金を送る方法で150万円を貸し付けてくれました。サイトを見ると、150万円分投資金額が増えており、送金先の書類なども見せてくれましたが、今考えると、それも偽造だったのでしょう。
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その後も彼女は100万円を私に貸し付け、『ここの銀行からお金を借りられますよ』と教えてくれたこともありました」
投資金額は膨らむ一方で、やりとりはLINEだけ。何度か直接会うことを提案してものらりくらりとかわされていた高木さんだが、ついに彼女と旅行の約束を取り付けた。
「最初は『忙しい』と言っていましたが、 11月の3連休に旅行をすることになりました。彼女は『仙台から母を連れてくるから紹介したい』とまで言ってくれたので、私は『初日は茨城県のホテルで過ごし、翌日は函館に、最終日は秋田の温泉で過ごす』という計画を立て、すべての予約も取りました。旅行中に彼女が誕生日を迎えるため、バラの花束と誕生日のケーキまで手配しました。
しかし前日になって『やっぱり旅行には行けない』という連絡がきました。キャンセル料は10万円以上かかるということだったので、私ひとりで傷心旅行をしました。ケーキですか? 一人で美味しくいただきました(笑)」
この旅行キャンセル以前も、高木さんは女性に違和感を覚えていた。
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「私は夏目漱石の作品が好きで、そのことを話題にすると、すぐに深掘りする答えが返ってきたのです。ほかにも三国志など中国の歴史の話にも興味を示すなど、あまりにも彼女のイメージと合わないため、『年配の男性か?』『AIを使ってる?』と思うこともありました」
そして犯人は「回収」を始める。高木さんに「貸した250万円を返済しないと私に被害が及ぶ」と訴えた。
「私は仕方なく、実の姉のところに行って250万円を借りました。ただ、その際、彼女も『250万円のことで仙台のお母さんに相談に行く』と新幹線に乗り込む写真を送ってきたのですが、写っていたのは東北新幹線の車体ではなかったのです。この写真で騙されていることに気づきました」
この時点で高木さんはサイトに1577万円を振り込んでいたという。
「手持ちのお金で融通したのは350万円。残りは借金です。投資サイトからお金を引き出そうともしましたが、偽サイトですので、当然できません。そこからは地獄でしたね。
債権者からどんどん連絡がくるし、期日までに支払わなければ、ものすごい延滞金が取られます。そして私が詐欺に遭って姉から金を借りたことを知った義兄は激怒。『縁を切る』と言われました。
最初はビジネスローンとカードキャッシングで借りていましたが、結局はノンバンク系で借金を一本化。自宅を担保に毎月8万円を20年で返済することになりました。銀行はブラックリストに載っていましたから借りられませんでした」
警察に被害届を出すと「まずはLINEをブロックしてください」と言われた高木さん。
「すると彼女から『私が貸した250万円を返さないと法的に訴える』と出会ったマッチングアプリ経由で連絡がきました。詐欺師が訴えるなんてブラックジョークですよね。
警察からは『海外案件なので、どこの誰かわからないと捜査は難しい』と言われ、『高木さんの情報も全部、詐欺集団などに売られてるから、今後も詐欺師に気をつけてください』と注意されました。結局、彼女の写真もネットにある無関係の美女の顔写真を勝手に使ったものでした。
今は借金返済のため、朝5時に起きて、警備の仕事をしてから自分の会社に出社するという生活を送っています」
こう言って笑う高木さんだが、大金を失い借金に追われる生活を余儀なくされた心の傷も計り知れない。
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