限定公開( 3 )

ニトリが、レトルトカレーの販売を拡大している。2023年から販売する「お、ねだん以上。のレトルトカレー」シリーズは累計約15万個を突破し、2026年3月には取扱店舗を全国231店舗に広げた。家具・インテリア大手のニトリが、なぜレトルトカレーを展開しているのか。
同シリーズの原点は、ニトリグループがかつて運営していたファミリーレストラン「みんなのグリル」にある。似鳥昭雄会長が掲げた「衣食住」構想のもと、2021年に東京・足立区で開業した店舗で、チキンステーキやグラタンを低価格で提供していた。
店内では、ニトリのステーキ皿やスキレット鍋を使うなど、家具と食卓をつなぐ業態設計が特徴だった。最大6店舗まで広げたが、コロナ禍による外食需要の減少と食材原価の高騰が重なり、2024年11月に全店撤退。約3年8カ月で外食事業は幕を閉じた。
ただ、同店の看板メニューの一つ「スパイシービーフカレー」は、ニトリグループが北海道に所有する老舗温泉宿「銀鱗荘」(ぎんりんそう)のフレンチシェフが監修しており、ステーキ中心のメニュー構成の中でも人気が高かった。近隣客が保存容器を持参し、「カレールウだけでも売ってほしい」と来店するほどだったという。
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この声を受けて、似鳥会長がレトルト化を決断。「出店地域にかかわらず、多くの人に食べてもらえるように」との考えから、2023年9月にグループ会社の島忠で販売を開始した。
●レストランの味を再現するまで97回の試作
レトルト化で壁となったのは、レストランの味をどう再現するかだった。家具チェーンが食品を自社だけで開発するのはハードルが高い。そこで、ハウス食品と協力して開発を進め、再現性を高めた。カレー業界大手との協業で技術面の課題は改善したが、それでも試作は計97回に及んだ。
こうして完成した「スパイシービーフカレー」は、29種のスパイスを使い、スパイスの風味と酸味が際立つ仕上がりとなった。ただ、開発はこの1商品にとどまらず、「辛いものが苦手な人や子どもでも楽しめるカレーを作りたい」という考えから、ラインアップを広げた。
北海道産の生クリームを使った「クリーミーバターチキンカレー」、国産黒糖のコクでビーフのうま味を引き出す「欧風ビーフカレー」、豚と牛のひき肉、玉ねぎの甘みが溶け込む「濃厚キーマカレー」を加え、全4種を展開。辛さ、コク、まろやかさと味の方向性を分け、価格はいずれも300円に統一している。
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●島忠からニトリへ
先ほど紹介した通り、レトルトカレーの販売は島忠で開始した。島忠がすでに食品を取り扱っていたこともあり、来店客に手に取ってもらいやすいと判断した。
いきなり家具店の売り場にカレーを置くのではなく、食品の購買行動がある店舗で実績を作り、ニトリ本体へ広げる。認知のない商品カテゴリーへの参入となるため、既存の購買導線を活用した。
島忠での反響を受け、2025年8月からニトリ店舗の一部で販売を始め、2026年3月には全国231店舗まで拡大。商品の企画・開発を手掛けたニトリパブリックの担当者は「当社がレトルトカレーを扱っている認知はまだ薄い」と認めるが、リピーターは着実に増えているという。同社の公式コミュニティーには、複数回購入している人の投稿も目についた。
外食事業は撤退で終わったものの、「グリルで得た食の知識や、取引先との良い関係が支えになっている」と担当者は語る。レストラン時代に評価された味を起点に、ハウス食品との協業で品質を確保し、島忠で実績を作ってからニトリ本体へ広げた。
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認知度の低さという課題を抱えながらも、累計15万個を突破した背景には、撤退した外食事業で培った経験と土台がある。
●ラインアップをさらに拡充
商品ラインアップの拡充も進めている。2026年のゴールデンウイークに合わせて、「こく甘ハヤシビーフ」と「マイルドグリーンカレー」(各300円)の新作2品を投入する予定だ。社内と顧客を対象に実施した「次に食べたいカレー」のアンケートで、人気の高かった2種類を商品化した。
今後は、カレー以外の食品展開や海外店舗での販売も視野に入れる。ただし、「まずカレーシリーズを手に取ってもらい、食べて喜んでいただくことが第一」(ニトリパブリックの担当者)と話しており、足元を固める姿勢を示す。
累計15万個という数字は、食品メーカーの基準で見れば決して大きくはない。しかし、家具チェーンが食品カテゴリーに参入し、撤退した外食事業で得た資産を生かしながら着実に販路を広げている点に意味がある。ニトリの「衣食住」戦略が、300円のカレーを起点にどこまで広がるか注目だ。
(カワブチカズキ)
※下記の関連記事にある『【完全版】ニトリの「300円カレー」が15万個突破 閉店したレストランの味がレトルトになったワケ』では、配信していない豊富な写真とともに記事を閲覧できます。
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