なぜホンダは伸び悩むのか 11年連続首位「N-BOX」が抱えるジレンマ

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2026年05月01日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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ホンダのN-BOX、売れているのはいいけれど

 日本の自動車市場で最も売れたクルマは、2025年度もホンダのN-BOXだった。軽四輪車では、なんと11年連続の首位。しかし、これを快挙と伝えるのは微妙である。というのも、これがホンダの業績の足を引っ張っている原因の一つなのでは、と思えるからだ。


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 それどころか、現在の日本の社会構造を反映している、とさえ思えるのだ。その理由を解説したい。


 ホンダのNシリーズは、それまでスズキやダイハツらに劣勢を強いられていたホンダが軽自動車を本気で開発し、起死回生を図った意欲作であった。


 まさにホンダの技術力とアイデアの塊といえるものだが、初代Nシリーズは利益率が低かった。さらに、競合メーカーからシェアを奪うというより、既存のホンダユーザーが普通車からNシリーズへ乗り換えるダウンサイジング現象が起き、四輪部門の収益を低下させるという皮肉な結果を招いた。


 2代目以降は収益性も改善したといわれているが、その人気ぶりに対して、四輪部門の収益性はそれほど改善されていないように見える。そのため、傾向は大きく変わっていないようだ。


 つまりホンダは、Nシリーズを安く売りすぎてしまったために収益性を低下させ続けている。このことがホンダの企業価値を低下させているのだ。


 一方で、EV開発は米国の自動車政策の転換によって見直しを余儀なくされ、2兆円を超える損失を見込んでいるという。


 なぜホンダは苦境に立たされているのか。これまでの足跡をたどりながら、ホンダの、そして日本の自動車産業のミライについて考えてみたい。


●独創性と“ホンダらしさ”でヒットを連発


 そもそもホンダは、二輪から軽自動車メーカー、そして普通車へと発展してきたメーカーだ。そのため、初期は空冷で直立2気筒エンジンというオートバイのエンジンをスケールアップした構造のパワーユニットを搭載していた。


 そこからバリエーションを増やすが、国の政策で自動車メーカーを再編成しようとした際、普通車メーカーへの発展の道が絶たれないように、メーカーの技術力を証明するためにF1GPへ参戦したのは有名な話だ。


 これはかなり無茶な計画であったが、英国のレーシングカーコンストラクターであるクーパーガレージの協力も得て、F1マシンを完成させ、優勝までこぎ着けたのだからすごい。当時の技術力と情熱が相当なものであったことは想像に難くない。


 そうしてホンダは四輪メーカーとしての扉をこじ開け、米国のビッグ3がさじを投げた厳しすぎる排ガス規制もクリアするエンジンを搭載して、世間をあっと言わせた。


 バブル期のホンダは、アイデアに満ちたクルマを次々と登場させ、ヒットを連発。それは独創性のある技術とホンダらしさを感じさせるデザイン的な魅力にあふれていた。


 また、英マクラーレンのエンジンサプライヤーとしてF1GPにも復帰を果たし、最強エンジンの名をほしいままにしたのだった。


 だが企業規模が大きくなるほど、ホンダとライバルたちとの差が曖昧になっていった。2000年代に入ると、ミニバンや高級車市場で販売競争を繰り広げることになるが、ホンダらしい技術やデザインは薄れてしまった印象があった。


●高級EVでタッグを組んだソニーとの共通点


 その姿は、ホンダとタッグを組んで高級EVを生み出そうとしていたソニーにもイメージが重なる。


 ソニーはウォークマンやプレイステーションなどで独自性が認められ、技術力とアイデアで魅力的な商品を生み出していた。しかし、2000年代に入ると音響・映像機器の人気は落ち着き、テレビなどの家電部門やPC部門は切り売りされ、ブランドの核となる高品質な電気製品はほとんどなくなってしまった。


 もっとも、ソニーは単独でもカメラや半導体、エンタメ、金融など、新たな稼ぐ手段を確保している。そんな勢いのある今だから、ホンダと手を組んで、EVを新たなビジネスとして展開しようとしたのだ。


 だが、開発スピードの遅さやエンタメ以外の価値の創造に手間取っているうちにEVブームは去り、合弁企業の行方は暗礁に乗り上げている。


 しかもホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)とのパートナーシップも解消し、アライアンスを組んでいる企業はない。サプライヤーこそ日立から買い戻すような格好となって傘下に収めているが、韓国では四輪市場から撤退することを発表しており、中国での販売も振るわない。


 今後の業績に黄信号がともるのも当然のことだ。打開策として考えられるのは、軽自動車のNシリーズを輸出できれば、新たな収益の柱にできるのではないだろうか。衝突安全基準などが比較的厳しくない新興国市場なら、導入や販売を見込める可能性が高い。


●軽自動車の人気が高まり、縮小した自動車市場


 そもそも、軽自動車という日本独自の車両規格が、日本の自動車市場が伸び悩む原因の一つともいえる。


 今や装備が充実した軽乗用車の中には、トータルの購入金額が300万円に届くものも出てきている。それだけの金額であれば市場を潤すのではないか、と思う人もいるだろうが、実際には普通車に比べて経済への影響は小さい。


 というのも、軽自動車の購入者は、維持費の安さを重視して車種を選ぶ傾向がある。そのため、車両購入以降の出費に関してはシビアな傾向がある。


 つまり、軽自動車を選ぶ時点でコストを最優先する意識が強く、購入後の負担が少ないことを見込んで選んでいる。そのため、購入後のコストにも厳しい目が向けられるのは当然だ。


 乗用車販売の4割が軽自動車となっている現在、クルマは薄利多売の傾向が強まっている。これが日本の自動車産業を弱体化させている理由の一つであることは明らかだ。コロナ禍や半導体不足で納期が長引く中、普通車ユーザーは値引きより納期を優先する傾向があるが、軽自動車はもともと値引き幅が小さい。


 バブル期には、トヨタがマークII三兄弟を大ヒットさせたが、当時の新車価格は200万円台前半であった。クルマが高くなり、可処分所得が増えない消費者は、維持費を節約しようと軽自動車にシフトしているが、それに合わせて軽自動車の商品力が向上したことで、市場はますます縮小してしまうのだ。


 ホンダはNシリーズに注力するあまり、技術を安売りしてしまったという見方もできる。当初よりは利益率が改善されたとはいえ、軽自動車の商品力を高めたことで、自社ブランドのユーザーを軽自動車市場に集中させてしまった。


 ホンダが5月下旬に発売する小型EV「Super-ONE」は、軽EV「N-ONE e:」をベースとしながら、ボディのワイド化やモーターの出力アップにより軽規格からはみ出した。バーチャルなエンジンサウンドやシフト演出で、運転の楽しさを再認識してもらおうとしている。


 かつてMTのスポーツモデルを操っていたクルマ好きも年齢を重ねて、熟年ユーザーとなっている。彼らに刺さるクルマを生み出す工夫がこのところのホンダに見られるのだ。


 ホンダは手の届く価格で、こうした魅力あるクルマを生み出すのが得意だったはずだ。クルマ自体の魅力を高めて利益率の高い商品を展開すれば、確実に収益性は向上するだろう。


●強いトヨタ、一方のホンダはどうあるべきか


 トヨタはGRブランドを成長させ、いよいよ世界で戦えるスーパースポーツカーを世に送り出そうとしている。過去最高の販売台数を記録しながら、成長戦略にも弱点は見えない。かつて「80点主義」といわれたブランドイメージは、もう存在しない。


 ホンダが二輪車頼みの収益構造から脱却するためには、やはりもう一度ホンダらしい商品づくりに立ち返る必要があるのだ。「ホンダ0シリーズやAFEELAはホンダらしくない」とまでは言わないが、魅力が伝わりにくい商品だったのではないだろうか。


 モビリティの新たな価値創造を追求しながら、現状で売れる商品をつくって販売するのは容易なことではないが、ホンダならそれをやれると思わせてくれる。


 原材料の調達力や、商品として供給するスピードは中国メーカーに分がある。ならば日本の自動車メーカーは、品質の高さや信頼性による安心感に加え、商品の独自性を高め、それを認知してもらう努力が必要である。


 Nシリーズを購入しているユーザーも、ホンダを応援しているファンであることに違いないのだ。そのうちの何割かが普通車を選ぶだけでも、ホンダの業績は大きく上向く。ミニバンもSUVもスポーツカーも、あと少し魅力を加えるだけで大ヒットする可能性がある。


 それとも、新たなモビリティの魅力を切り開いていけるのか。ホンダの進路は茨の道かもしれない。けれども、他の競合メーカーも現場のエンジニアは必死に仕事をこなしているのは間違いないのだ。


 現在のホンダの優位性を生かしつつ、ユニークなクルマづくりを続けてほしい。そう思うホンダファンは決して少なくないはずだ。


(高根英幸)


※下記の関連記事にある『【完全版】なぜホンダは伸び悩むのか 11年連続首位「N-BOX」が抱えるジレンマ』では、配信していない豊富な写真とともに記事を閲覧できます。



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