限定公開( 2 )

「履歴書の時代は終わった」──AIの普及によって、企業の採用や人材評価のルールが大きく変わり始めている。
スタートアップコミュニティである米サウス・パーク・コモンズ(South Park Commons)のパートナーで、元Facebook初期のエンジニア、米Dropbox元CTOのアディティヤ・アガーワル(Aditya Agarwal)氏は、X(旧Twitter)で興味深い採用実験の結果を公開した。
●名門大も大手出身も関係ない 実証実験が暴いた「履歴書」の限界
同コミュニティで実施したエンジニア採用では、通常の面接ではなく、数週間にわたる実際の仕事のトライアルを実施した。候補者は実際のプロジェクトに参加し、ClaudeなどのAIツールを使いながら開発を進める。
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その結果、驚くべき事実が明らかになった。経験年数、名門大学や大手IT企業出身といった従来の「華やかな履歴書」と、AI時代の生産性の間には、ほとんど相関がなかったというのだ。
20年の経験を持つベテランでも、AIツールを使いこなせないケースがある。その一方、経験が浅くてもAIを駆使して圧倒的な成果を出す人材が現れた。では、何が差を生んだのか。
●AI時代を制する「ビルダー」 差を生むのは“作らずにはいられない”性格
アガーワル氏によれば、それは「builder’s disposition」(ビルダーの気質)だった。同氏はこれを「constitutionally unable to stop tinkering」(本質的に、いじくり回すのをやめられない人)と表現している。
つまり履歴書ではなく「作らずにはいられない性格」こそが、AI時代の能力を最もよく予測したという。この気質は、いくつかの分かりやすい形で表れる。例えば、仕事とは別に作っているサイドプロジェクト、新しいツールをすぐ試してみる習慣、凝った個人サイトや実験的なコードなど、「ものづくりが好き」という痕跡だ。
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AIの登場により、専門知識や経験の価値は大きく変化している。AIは膨大な知識やコードを瞬時に生成できるため、従来のスキル差は急速に縮小しつつある。その代わりに重要になっているのが、新しいツールをすぐに自分の武器にできる好奇心と実験精神だ。実際、AIを日常的に使う開発者は、従来では不可能だった量のコードを短時間で書けるようになり、生産性が何倍にも跳ね上がるケースが確認されている。
●知識量から「適応力」へ AIが淘汰するのは“旧来の評価制度”
つまり、AI時代の競争は「知識量」ではなく、適応力で決まる。アガーワル氏はこうまとめている。
「The new currency is adaptability」(新しい通貨は適応力だ)
そしてその適応力は、米スタンフォード大学の学位のような経歴ではなく、日常的な実験と創作の習慣の中で育つものだという。
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AIが人間の仕事を奪うのかという議論は続いている。しかし今回の観察は、別の可能性を示している。AIが淘汰するのは「人間」ではなく、履歴書中心の旧来の評価制度なのかもしれない。これからの採用で問われるのは、学歴や職歴ではなく、「この人は放っておいても何かを作り続ける人か」という一点になる可能性が高い。
本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「履歴書は無意味。大事なのは『試してみたがりな性格』」(2026年3月18日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
●著者プロフィール
湯川鶴章
AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。
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