岩瀬川の上流側(北側)からの眺め。すぐ近くまで寄れる 宮崎県小林市を流れる岩瀬川(浜の瀬川)の川中にある「陰陽石」は、2009年に10ある宮崎観光遺産の1つに選ばれた、県が誇る有名観光スポット。だが、その姿があまりにも刺激的なので、テレビで紹介される時は(最近だと小林市出身の蛙亭イワクラが紹介)、ここぞという時まではモザイクやボカシで隠されることが多い。
◆世界が注目する子宝の奇祭
それもそのはず、この陰陽石は、女性器に似た周囲5.5mもある陰石の上に、高さ17.5mもの男根のような陽石がそびえ立っているから。「赤い靴」や「七つの子」などの童謡の作詞で知られる野口雨情が昭和の初めにここを訪れた際には、「浜の瀬川には二つの奇石 人にゃ言ふなよ語るなよ」と歌うほどだ。
昔から、こうした陽石や陰石には不思議な力が宿ると信じ、これらを「性神」としてまつり(しめ縄で飾ることも)、子宝・子孫繁栄・五穀豊穣を願ってきた。田縣神社(愛知県)の豊年祭(3月15日)では、毎年、ヒノキで巨大な男根を作り神輿として担がれ、世界中から観光客が訪れるほど有名。また、あまり知られていないが、江戸時代に造られた大名庭園、例えば前田家の兼六園(金沢)や水戸家の小石川後楽園(東京)には、子孫繁栄(お家安泰)を願い、陽石と陰石がセットでさりげなく置かれていたりする。
◆上流と下流で異なる絶景が
小林市の陰陽石のビューポイントは2か所。岩瀬川の上流(北側)と、下流(南側)からだ。上流側は小林市が管理する無料ゾーン。舗装された大きな駐車場があり、見学路が陰陽石のすぐ近くまで整備され、かなり近寄って拝める。こちらには陰陽石神社もある。
下流側は、「スポットガーデン陰陽石」が管理する有料ゾーン。有料といっても500円(2026年6月時点・値上げを検討中だそう)で、「ギャラリー蔵(旧称・男女和合 愛の歴史館)」というミニ秘宝館(春画や性神系の民芸品がメイン)、鬼子母神堂(大量の性神「田の神さぁ」と木製の男根が並ぶ)、竹中倭夫記念館(珍石コレクション・真面目な内容)と盛りだくさんな展示品が見学できる。そして最大の特徴は、陰陽石の陽石と陰石が両方バッチリ拝める点。
◆残念ながら宮崎ではウケず…
実は上流側からは大きな岩の上に陽石が屹立しているといった眺めだが、下流側からは大きな岩に割れ目がしっかりと刻まれているのが確認できる、まさに陰石なのだ。上流側からだとしめ縄が1本しか見えないが、下流側はこの割れ目にもしめ縄が飾ってある。スポットガーデン陰陽石の池田政憲(まさのり)社長は「あり得ない原風景 川面に写すは 女と男 息づく その生のお姿 命の原点 絶景……」と来場者に力説する。
鬼子母神堂や秘宝館が醸し出す昭和の妖しさは、珍スポ好きにはたまらない雰囲気なのだけれど、宮崎ではあまりウケがよくないのか、お客さんが少ないそうだ。南向きだから順光。しかも美しい渓谷に陰陽石の陽石も陰石もよく特徴が表れ、運が良ければ「逆さ陰陽石」だってありえる。ぜひ上流・下流のどちらからも、この自然が生み出した聖(性)なる絶景を味わってほしい。
<TEXT/関口勇>
【関口勇】
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。廃墟、B級スポット、巨大構造物、赤線跡などフツーじゃない場所ばかり紹介。武蔵野美術大学非常勤講師。X(旧Twitter):@isamu_WJ