失言しても存在感が消えない男・麻生太郎 政治学者が解説「『本音』と『失言』の境界をあえて狭くする話法の正体」

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2026年07月02日 16:31  日刊SPA!

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森川友義氏。”政治家構文”の詳細は著書『政治家の「答えない」技術』に詳しい
85歳になっても、皇室典範の改正案についての発言が波紋を呼んでいる麻生太郎氏。多くの政治家が言葉の角をとり、責任を薄め、誰からも批判されにくい表現に逃げ込むなかで、麻生氏はあえて逆へ進む。短く、強く、皮肉を交えて言い切る。失言を恐れない率直さが、支持者には「本音を語る政治家」として映り、批判者には「不用意な政治家」として映る。この二面性こそが、麻生構文の本質である。政治学者・森川友義氏が、麻生太郎構文の異質性をひも解く。(以下、政治学者・森川友義氏による寄稿)
◆「本音」と「失言」の境界をあえて狭くする話法

拙著『政治家の「答えない」技術』では、高市構文や進次郎構文をとりあげたが、最近再び話題の麻生太郎元首相については扱わなかった。しかし、ここにおいて麻生構文をとりあげ、その異質性について検討しておくのも、政治家の構文を知るうえで役に立つと思われる。

麻生太郎構文の特徴は、一言でいえば、「本音」と「失言」の境界をあえて狭くする話法である。多くの政治家が言葉の角をとり、責任を薄め、誰からも批判されにくい表現に逃げ込むなかで、麻生氏はしばしば率直な言葉を使う。そこには、政治家構文にありがちな曖昧さとは異なる迫力がある。聞き手は、賛否を問わず、何を言いたいのかを理解しやすい。

ただし、その率直さは危うさも伴う。たとえば、2008年には「未曾有」を「みぞうゆう」、「踏襲」を「ふしゅう」と読んだことが大きく報じられた。これは構文というより読み間違いであるが、麻生氏の言葉が常に注目され、細部まで切りとられる政治的環境をよく示している。麻生構文は、発言の中身だけでなく、言い方、読み方、間のとり方まで含めて評価される構文である。

もう一つ象徴的なのが、カップラーメンの値段をめぐる発言である。庶民感覚を問われた場面で、実際の相場よりかなり高い金額を口にしたことは、麻生氏の言葉が生活感覚との距離として受け止められる典型例となった。本人にとっては軽い受け答えであっても、聞き手には、政治家の暮らしぶりや感覚の違いを映す言葉として響く。

◆皮肉と断定――記憶に残るが独り歩きもする

麻生構文の中心には、皮肉と断定がある。質問に対して、真正面から制度論を積み上げるよりも、短い言葉で相手をいなす。説明よりも一言の印象を優先する。そのため発言は記憶に残りやすい。半面、言葉の一部だけが独り歩きしやすい。

また、麻生氏の言葉には、育ちのよさと荒っぽさが同居している。上から目線に聞こえる瞬間もあれば、場を笑わせる余裕にも見える。丁寧に逃げる政治家が多いなかで、麻生氏は雑に踏み込む。その雑さが失点にもなるが、同時に政治家としての肉声を感じさせる。

麻生構文が興味深いのは、失言を完全には恐れていないように見える点にある。多くの政治家は、批判されないために言葉を薄める。麻生氏は逆に、言葉を薄めすぎない。余計な一言が出る危険を抱えながらも、短く、強く、皮肉を交えて言い切る。その姿勢が、支持者には本音を語る政治家として映る。

◆語ることで存在感を示す技術

政治家構文が語らないことで身を守る技術であるなら、麻生構文は語ることで存在感を示す技術である。安全な言葉を選ぶより、少し危ない言葉で場を支配する。そこに麻生氏らしさがある。支持者には痛快に見え、批判者には不用意に見える。この二面性が、麻生構文の魅力であり、同時に弱点でもある。

そんな麻生氏であるが、これからもわれわれ国民に、政治をどこか面白く感じさせてくれるに違いない。

<文/森川友義>

【森川友義】
早稲田大学名誉教授。元早稲田大学国際教養学部教授。政治学博士。1955年群馬県生まれ。早稲田大学政経学部卒、ボストン大学政治学修士号、オレゴン大学政治学博士号取得。国連勤務後、米国ルイス・クラーク大学助教、オレゴン大学客員准教授等を経て、現在に至る。専門は日本政治、恋愛学、進化政治学。政治学の著書としては『60年安保 6人の証言』(編著、同時代社)、『若者は、選挙に行かないせいで四〇〇〇万円も損している!?』、『どうする!依存大国ニッポン』(ディスカヴァートゥエンティワン社)、『生き延びるための政治学』(弘文堂)等がある

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