
Q. 「一晩寝かせたカレーは、しっかり加熱しても危険」って本当ですか?
Q. 「一晩寝かせたカレーが大好きで、作った翌日に食べるのがいつも楽しみです。蒸し暑い季節は食中毒リスクが心配ですが、食べる前にしっかり加熱すれば大丈夫ですよね? においもかいで、腐っていないかもチェックしています。子どもも一緒に食べるので、食中毒を防ぐポイントがあれば知りたいです」A. 「加熱すれば安全」は誤解ですし、においも当てになりません。正しい知識で食中毒予防を
残念ながら、「加熱すれば安全」というのは誤解です。多くの人が食中毒は「しっかり加熱すれば予防できる」と考えているようですが、カレーに潜むウェルシュ菌は別です。ウェルシュ菌は過酷な環境になると「芽胞(がほう)」という非常に強い状態になり、なんと100度で1時間以上加熱しても死滅しません。さらに厄介なのは、加熱すること自体が菌に刺激を与え、芽胞を形成する菌をかえって増やしてしまうという特性があることです。よかれと思ってした加熱が、逆効果にもなりかねないのです。ウェルシュ菌は「嫌気性」と呼ばれる菌で、空気がない場所でのみ増殖します。カレーのような煮込み料理の鍋底は、まさに空気が届きにくい絶好の環境です。加熱調理が終わって食品が室温放置されて50度以下になると、身を守っていた菌が再び活発に増え始めます。45度前後で最もよく増殖し、10分ごとに分裂を繰り返すため、最初に1個しかいなかった菌が約3時間で13万個を超え、食中毒を引き起こすほどの数にまで達してしまうのです。
ウェルシュ菌食中毒の主な症状は、水のような下痢・腹部膨満感・腹痛です。発熱や嘔吐は少なく、1〜2日で回復することが多いですが、高齢者や乳幼児は脱水になる危険もあります。また、においや見た目で判断することは難しく、気付かずに食べてしまうケースが多いため、注意が必要です。
カレーの保存と再加熱には、以下の予防法が効果的です。
・加熱後の食品は3時間以内に20度以下まで冷やす
・小分けにして、できるだけ空気に触れるようにする
・前日調理はできるだけ避ける
・食べる前によくかき混ぜてから沸騰するくらいまで再加熱する(加熱だけを過信しない)
ウェルシュ菌は特別な環境でなく、ごく日常の料理シーンで発生する食中毒です。「加熱しているから大丈夫」と思い込まず、冷却と保存の方法を見直すことが、最も有効な予防策といえます。
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清益 功浩プロフィール
小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。(文:清益 功浩(医師))
