崎陽軒の「ギヨウザ」を買ってみた―[連載『孤独のファイナル弁当』]―
『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは「崎陽軒のギヨウザ」。果たして、お味はいかに?
◆孤独のファイナル弁当 vol.38「崎陽軒の「ギヨウザ」を買ってみた」
長野に行く用事があり、午前中に出かけた。立川で特急に乗り換え。時間があったので駅構内で弁当を買って、この連載の原稿を書こうかな、と思ったら崎陽軒があった。つい立ち寄ってしまう。
崎陽軒のシウマイ弁当についてはすでに何度も書いたから、買うつもりはない。
と思ったら、新商品「ギヨウザ」があるではないか。6個入り350円。弁当じゃないが、買わずにはいられなかった。
まず名前が憎い。「ギヨウザ」。「シュウマイ」が崎陽軒では「シウマイ」になっているように、小さい字がない。これだけで崎陽軒ファンはちょいと心が動くのでは。
パッケージデザインがスバラシイ。濃い緑と黄色の2色。「ギヨウザ」の文字のみ白抜きなのが効果的。中華風な2匹の獅子のイラスト。中国的雲模様。例によって余計な煽りコピーの類いはいっさいなし。「横濱驛株式會社崎陽軒製」がまたマニアック。小ささもたまらない。センスいい。買う。これを買ったら、仕方ない、缶ビールもだ。
飲まずに特急車内でお茶と弁当、の予定がギヨウザつまみにビールとなってしまった。これがファイナル弁当だったら。まぁ、いいや。これを弁当としよう。
特急に乗り込んで座ってビールとともにすぐ開けた。
開ける時、切り取り線が切れていく「ペリペリペリ」という触感と音が心地いい。これ、ホメすぎと言われるかもしれないけど、ホント。皆さんにも体験してほしい。こういうところの大切さ、忘れてた。子供の頃、何かのチョコレートのパッケージであった。商品名忘れたけど、ワクワクした。年取った指が子供の感触を覚えてる。
さて箱に並んでいたのは、6個のシュウマイだった。これは我らが知っている餃子ではない。見た目、シュウマイ。ただ肉の中にところどころ緑が透けている。これは「シウマイ」にはない。グリーンピースの姿もない。
そして醤油系のタレとラー油の小袋。ここは餃子だ。ヘラ状の楊枝も入っている。
まずは何もつけないで、1個口に入れる。
「……」
しばし咀嚼し、味覚を尖らせ口の中で考える。
飲み込んで、さらに沈黙。これは、餃子、ではない。でもあのシウマイとは明らかに違う。あのホタテの味がない。……あ、ニラの味がハッキリ口に中に残った。なるほど。そこを糸口に餃子に思えてくる。
ビールを飲む。うまい。これはビールに合う。次にタレとラー油を少量かけて食べてみた。あ、餃子だ。なるほど、焼き餃子でも水餃子でもない、蒸し餃子的なのがギヨウザなのか。これはウマイ。酒の肴としてはシウマイより軽く、優秀かもしれぬ。6個はあっという間になくなった。これ気に入った。もう次のペリペリが待ち遠しい。
―[連載『孤独のファイナル弁当』]―
【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi