画像はイメージ(以下、同じ)セックスレスはとても繊細な問題で、だからこそパートナーと腰を据えてしっかりと話し合い、お互いの気持ちを伝え合うことが必要になってくるようです。
今回は、そんなセックスレスという壁にぶち当たってしまった夫婦のエピソードをご紹介しましょう。
◆セックスレスを理由に離婚を切り出され…
井上亜沙美さん(仮名・33歳/主婦)は、夫の敦士さん(仮名・35歳/不動産業)と、2歳の娘の葵ちゃん(仮名)の3人で暮らしています。
「実は出産してから私の性欲がゼロになってしまい、夫とセックスレスなんです。葵が1歳になるぐらいまでは、育児のバタバタの中で敦士もなんとなく察して遠慮していてくれていたようですが、最近またちょくちょく誘われるようになってしまって」
その度に「ちょっと今日はもう眠いから」とか「ごめん、さっきから頭痛がしていて」などと理由をつけて避けていました。
「ですがある晩、深刻な顔で敦士から『もしこれ以上セックスレスが続くなら離婚を考えてほしい』と言われたんです。頭にきてしまい『はぁ? そんな性欲ごときで、私と葵を捨てるってどういうこと? 馬鹿にするのもたいがいにしてよ』と怒ってしまったんですよね」
◆離婚はしたくないけれど
すると敦士さんは「ただ性欲を満たしたいわけじゃない。夜の営みを断られたり、キスやハグをしようとすると逃げられたりしていると、単純に寂しいし、どんどん自分に自信がなくなってしまうんだ。この間断られたときも、やり切れない気持ちになって夜中に独りでベランダに出たら涙が止まらなくなってしまって……自分の心が壊れかけているのを感じた。亜沙美とちゃんと話し合わないといけないと思ったんだよ」と涙声でゆっくりと言葉を選びながら気持ちを伝えてきたそう。
「正直驚いてしまいました。まさかそんな風に思っていたなんて……私としては、こっちは育児で忙しいしそんな気にもなれないから、そっちは自分で適当に処理しておいてねぐらいの軽い気持ちでいたんですよね」
自分が敦士さんを精神的に追い詰めていたと知りショックを受けた亜沙美さんでしたが、さらに畳みかけるように「僕だって亜沙美も葵も大切に思っているし好きだから本当は離婚なんてしたくないんだよ。どうかな? それでももう僕とそういうことをするのは嫌?」と選択を迫られてしまいました。
「その時にやっと窮地に立たされていることに気がついて。正直、私は敦士が好きだし辛い思いをさせてしまい申し訳ないという気持ちもあるけれど……やっぱりどうしてもしたくないなと思ってしまったんですよね。もちろんそれは敦士以外の男性ともです」
◆正直な気持ちを話し合い
「でも、この気持ちをそのまま告げたら別れ話を切り出されてしまう」と怯えた亜沙美さんは、一瞬「ここは我慢して夫婦生活をすると言って仲直りしようかな」と悩んだそう。
「でもそれだと今度は私が壊れてしまうかもしれない。そう思ったら、敦士に今まで散々我慢させてきたくせに、私ってなんて勝手なんだと罪悪感が湧いて、涙が止まらなくなってしまって」
どうしようもなくなった亜沙美さんが、正直に自分の気持ちを話すと、敦士さんも「そんなこと言ったら僕だって自分勝手だよ」としばらく2人で泣きました。
「ですが、お互いに離婚したくないという気持ちなのは分かったので、無理のない範囲で擦り合わせをして妥協点を見つけようということになり、私たちは話し合いを重ねたんです」
◆キスやハグができるように
その結果、
・もう基本的に、夜の営みはしない
(ただし、もしまた亜沙美さんの気持ちが変わったらまたそこで話し合う)
・キスやハグは無理のない範囲でなるべく受け入れる
・余裕があるときは亜沙美さんがスキンシップでのサポートをする
・もし必要なら敦士さんが店での発散はOK。ただし亜沙美さんに無断で行くのはNG
ということで落ち着いたそう。
「とことんまで話し合ってきちんと決まりを作ったら、私たちはすごくうまくいくようになりました。それまで私は、敦士に触られたりキスされたりすると、このままその延長線上にある夜の営みに持ち込まれてしまうのでは? と警戒して逃げていたのですが、もうしないと決めたことで、私からも敦士に安心してフランクな気持ちでハグやキスができるようになったんですよね」
◆離婚の危機回避
そして亜沙美さんが、自分がを拒んでいる以上風俗に行くことは仕方がなく、精神と肉体の健康を守るためにOKと納得しつつも、でも好き勝手に行くのは許さないと嫉妬心を見せたことに敦士さんは喜びました。
「『まだそんな風に思ってくれてありがとう』って言っていました(笑)。私は性欲がなくなっただけで愛情がなくなってしまったわけではないので、浮気も許しませんよ」
「とことん話し合うことで、離婚の危機を抜け出すことができて、夫婦として少し自信がついたというか一皮むけたような気がしています。今後も何か起こったときは、落ち着いて話し合いを重ねていきたいですね」と微笑む亜沙美さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop