なぜサンリオは「管理職の5%が時短勤務」を実現できたのか 現場の「不公平感」をどう解消?

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2026年08月19日 12:01  ITmedia ビジネスオンライン

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なぜサンリオは「管理職の5%が時短勤務」を実現できる?

 国内企業の女性管理職比率は、現在12〜13%台で「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度」という国の目標値とは大きく乖離(かいり)している。企業も努力はしているが「そもそも女性が管理職になりたがらない」「両立支援に力を入れると対象外の社員の不満が高まる」といった壁が立ちふさがり、足踏みしているところが多い。


【サンリオの企業理念「みんななかよく」】


 そんな中、女性管理職比率を2021年度の32.9%から、2025年度には44.4%へと大きく伸ばしたのがサンリオだ(※)。同社では時短勤務をしながらリーダーやマネジャーを務める社員が増加しており、現在は管理職の5%を時短勤務者が占める。常務執行役員の三好加奈子氏に話を聞くと、時短勤務や子育てに限らず、誰もが安心してリーダーにチャレンジできる環境を、ソフトとハード両面からカバーする、サンリオの姿勢が見えてきた。


※サンリオESGデータ参照


●新体制による「第二の創業」 V字回復を支えた人事制度の見直し


 サンリオの女性管理職の増加は、それ単体で推し進められたわけではなく、経営体制の刷新に伴う改革の成果の一つだ。


 同社は2020年、それまで60年にわたり社長を務めた創業者の辻信太郎氏の孫で、当時31歳の辻朋邦氏が2代目の社長に就任した。そして2022年からの中期経営計画で「第二の創業」を宣言。7期連続で減収減益となった2021年3月期からV字回復を遂げ、2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)は調整後営業利益が784億円と、過去最高を記録した。この改革の土台として位置付けられたのが、人事制度の見直しなどを含む「組織風土改革」である。


 サンリオはもともと女性社員が7割近くを占め、能力も意欲も高い女性が多い。しかし、管理職となると男女比が逆転していた。その状況が改善に向かい始めたのは、女性を優先的に昇進させるといった優遇策ではなく、人材マネジメント全体を見直した結果だと、三好氏は語る。


 「『第二の創業』と銘打って始めた組織風土改革の一環として、評価制度の透明性向上、成果や責任に報いる報酬制度の整備といった人事制度の見直し、管理職任用プロセスの見直し、育児や介護などのライフイベントがあってもキャリアを継続できる環境づくりなどを進めてきました」


 「加えて、女性がもっと管理職に挑戦してみようと思えるような後押しもしています。例えば『私もこういう管理職を目指せるといいな』と思えるような女性の役員や部長によるパネルディスカッションの開催。性別や年齢にかかわらずキャリア開発の支援になるような研修の提供。ワークとライフの両立について悩んでいる社員に個別のキャリアコーチングを受けてもらう、といったことです。女性管理職比率の向上はそれらの結果と考えています」(三好氏)


●「時短で管理職」が5% 時短勤務「小6まで」に変更→全員が延長を選択


 サンリオの女性活躍推進は、単発の施策ではない。一貫した方針の下で「環境整備」「風土醸成」「上司からの働きかけと育成」「企業理念への共感」という4つの要素がかみ合い、機能しているのが特徴だ。


【環境整備】社員の声をもとに両立支援策をバージョンアップ


 ライフイベントがあってもキャリアを継続できる環境づくりの代表例が、2025年に新設された「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)休暇」と、時短勤務対象の拡張だ。これらは全社アンケートに寄せられた社員の声をもとに導入した。


 SRHR休暇導入以前も、生理休暇を導入していた。しかし、形骸化して使われていなかった状況を鑑み、不妊治療など性と生殖に関する不調や治療に関して男女を問わず利用できるものに変更。また、無給の休暇とすることで理由の申告を不要とし、利用のハードルを下げた。それが功を奏し、初年度は数十名、2年目の今年はさらに利用者が増えている。


 また、時短勤務は従来の「小学3年生修了まで」を「小学6年生修了まで」に延長。その結果、子どもが4年生になる時短勤務者は全員が時短勤務を継続し、小学5、6年生の子を持つ社員で時短勤務を再開するケースもあったという。まさに望まれていた制度のバージョンアップであったことが分かる。


 特筆すべきは、サンリオでは時短勤務をしながらリーダーやマネジャーを務める社員が増加しており、現在は管理職の5%を時短勤務者が占める点だ。働く時間が短くても成果で評価する制度運用と、管理職の権限を一部補佐する「アシスタントマネジャー」職の新設など、サポート体制を整えることで「時短でも管理職ができる」という認識が広がり、挑戦しやすい状況が生まれている。


●育休・時短取得者以外で生まれる「不公平感」 どう解消?


【風土醸成】支え合いを生む仕組みと会社からのメッセージ


 両立支援制度の拡充で懸念されるのが、制度を利用しない社員への負荷や不公平感である。特に育休や時短勤務者の増加は現場の人手不足や不満につながりやすいが、サンリオでは多角的なサポート施策でそれを防いでいる。


 育休や時短勤務によるリソース不足に対しては派遣社員や業務委託で補填(ほてん)するほか、育休取得者が発生した部署のメンバーに「チームサポート手当」の支給も始めた。


 また、SRHR制度導入と時短勤務の延長の際には、社内向けのDE&Iポリシーを改めて発信。社員が制約を感じることなく働き続けられるよう、多様な働き方が許容され、ライフイベントが生じたときに必要なサポートが得られる状態を目指すという会社の意思を明確にした。


 新たな制度もこの方針にのっとったものであり、社員が今抱えている制約だけでなく将来直面するかもしれない制約を解消する、みんなのための制度であるというメッセージを明確に伝えたのである。


●「管理職に推薦」する前に、準備期間を用意


【上司からの働きかけと育成】上司のマネジメントスキルの強化


 働く制約が払拭されても、本人が自信を持てなければ昇進にはつながらない。


 サンリオでは、上司が「ゆくゆくは管理職になってほしい」という期待を早期に伝え、1年程度リーダー的役割を経験させるなどの準備期間を経た上で、正式に推薦しているという。これにより、両立に不安を抱える女性社員も段階を踏んで挑戦を決意できるようになり、幅広い年代の女性がコンスタントに管理職へと就任するようになった。


 この背景には、上司の側のマネジメント力の向上がある。


 かつて、マネジメントの方法は上司の背中を見て受け継いでいくのが主流で、体系的に学ぶ機会が用意されていなかった。新卒で入社して勤め続ける社員が多く、ビジネスモデルの変化も少ない時代であればそれで良かっただろう。しかし「第二の創業期」以降のサンリオでは、事業変革が求められ、多様なバックグラウンドを持つ人材の中途採用が増えるなど、組織マネジメントの難易度が上がっている。


 そこで経営陣は「ラインマネジメントは専門職である」と認識し、今の時代と経営環境に合ったマネジメントの在り方を体系化した上で、継続的な管理職研修やワークショップの機会を設けるようにした。その結果、後継者の育成の必要性や動機付けの仕方を学んだ上司が丁寧に伴走し、次世代の女性リーダーが育ちやすい状況が生まれている。


●昇進の魅力も発信


【企業理念への共感】昇進することでよりやりがいが感じられる状態に


 女性管理職が着実に増加しているサンリオの次の目標は、上級管理職(執行役員・ゼネラルマネジャー)における女性比率の向上だ。


 これは筆者の想像だが、サンリオの社員は自社のキャラクターの世界観が好きで入社したり、キャラクターや顧客と近い現場で仕事をすることに喜びを感じたりしている人が多いと思われる。だとすれば、現場から離れていくことに寂しさを感じ、上級管理職の仕事に魅力を感じづらいということはないのだろうか。


 そんな疑問に対して三好氏は、社員が自社のキャラクターを愛していることは確かだが、それだけにとどまらないと強調した。「みんななかよく」という企業理念や「One World, Connecting Smiles.」というビジョンが深く根付いていると指摘する。


 「執行役員やゼネラルマネジャーの任用のプロセスでは、私が一人一人と面談をします。その方たちとお話していると、多くの人が企業理念やビジョンと自分のミッションとをしっかり重ね合わせていることが分かります。そして、より上級の管理職になれば、それまで一担当者としてやってきたこと以上のことができる、組織や他者の力も借りてビジョンの実現にまい進していけるんだという気持ちを持ってくれている人が増えていると感じています」


 「これは、創業者である辻信太郎会長や現社長がしっかりと企業理念を浸透させてきた結果でしょう。結局のところ、女性管理職が増えるかどうかは、企業理念やビジョンに共感し、その実現にやりがいを感じて主体的に関わっていこうという社員をいかに増やしていけるかにかかっているのだと思います」(三好氏)


●女性活躍推進に「特効薬」はない


 サンリオの事例で分かるのは、女性管理職を増やすのに「これさえ導入すれば解決する」という特効薬はないということだ。


 社員の共感を呼ぶ企業理念やビジョンの策定と浸透、家庭との両立に理解を示し支え合う職場風土の醸成、時間ではなく成果に報いる透明性の高い評価制度の確立、就労の制約を取り除くきめ細やかな両立支援策──これらのソフトとハード両面をカバーするさまざまな取り組みがかみ合うことで、育児や介護といった制約があっても安心して挑戦し、成果を出し続けられる基盤が整うのである。


 そして、これらの取り組みは子育てや介護などの制約を持つ女性だけが恩恵を受けるものではない。性別やライフステージに関わらず、全社員がやりがいをもって継続的に力を発揮し続けられる職場の実現を目指すことが、結果として女性管理職の増加にもつながるのである。


●筆者:やつづかえり


コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。



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  • 不公平差? 損得で働いてる人の意見なのかな 転職サイトさがせば役員での採用あるのでは
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