「Netflix」「U-NEXT」を追う4位「ディズニープラス」 “会員数争い”ではない独自の勝ち筋

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2026年08月23日 15:41  ITmedia ビジネスオンライン

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ウォルト・ディズニー・カンパニー APAC地域のDTC事業を統括するトニー・ザメコウスキー氏

 国内の定額制動画配信(SVOD)市場でシェア8.4%の4位──。GEM Partnersの調査(金額ベース)によると、首位Netflix(27.1%)やU-NEXT、Prime Videoといった上位陣の後塵を拝しているのがディズニープラスだ。


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 だが、ウォルト・ディズニー・カンパニーが描くビジョンは、他社との“会員数の奪い合い”とは異なる地点にある。他社が顧客獲得コストを削り合う中、同社が見据えるのは全く別のレースだ。


 同社が目指すのは、ディズニープラスをサブスクリプション事業単体での売り上げで評価するのではなく、映画館やテーマパーク、グッズ、さらにはスポーツ配信までを横断する「ディズニーファンダム(ファンコミュニティー)のデジタルハブ」へ進化させることだ。


 IPを軸にリアルとデジタルを回遊させて顧客生涯価値(LTV)を最大化する──。経営陣が「独自のレース」と表現するこのアプローチは、SVODを“ディズニー経済圏全体への入口”とする収益戦略に他ならない。


 TBSホールディングスが100%出資して設立した映像コンテンツ制作会社「THE SEVEN」や、韓国「CJ ENM」傘下の動画配信サービス「TVING」とのパートナーシップ、競合SVODとのバンドル提供(セット販売)まで、自前主義に固執することなく、顧客接点を広げる真意はどこにあるのか。


 王者Netflixとは異なる、独自のゲームを仕掛けるディズニープラスの勝ち筋とは? APAC地域のDTC(ダイレクト・トゥー・コンシューマ)事業を統括するトニー・ザメコウスキー氏に、日本市場におけるプラットフォーム戦略を聞いた。


●シェア4位から逆襲 “ディズニー経済圏”を生かした「独自のレース」とは?


 先述した調査によると、2025年のSVODサービスの国内市場規模は前年比14.3%増の推計6017億円となった。


 サービス別のシェアでは、Netflixが前年比5.6ポイント増の27.1%で、7年連続の首位を獲得。2位のU-NEXTが17.1%、3位のPrime Videoが12.1%と続いた。こうした中、ディズニープラスは前年比0.6ポイント減の8.4%となったものの、DAZNを抜いたことで前年の5位から4位に順位を上げている。


 この結果についてザメコウスキー氏は、他社と比べてローンチしてから期間が短いことを認めた上で「私たちがディズニープラスで目指しているのは、自分たちのやるべきことに集中し、独自のレースを走ることです」と話す。他社としのぎを削るのではなく「ディズニーは独自の戦い方を貫く」という姿勢を強調した。


 他社と同じ土俵で加入者数だけを追うのではなく、IPやテーマパーク、クルーズライン、ローカルコンテンツなどディズニー全体の資産を生かしながら、顧客との長期的な関係を築き、事業全体の価値を高めていくのだという。ディズニープラスはそのための入口として位置付けている。「独自のレース」とは単なる差別化ではなく、ディズニー全体の収益性を重視した独自の経営戦略なのだ。


●単なる動画配信ではない 「ディズニーのエコシステムの中核」


 ザメコウスキー氏は「ディズニープラスを、グループ全体のエコシステムを結ぶデジタルの中心地と位置付けている」と説明する。


 ディズニープラスの視聴画面を開けば、ディズニー、ピクサー、スター・ウォーズ、マーベル、そしてスポーツチャンネルのESPNまでが同じ場所に並ぶ。これは複数ブランドのコンテンツを寄せ集めたラインアップではない。新CEOのジョシュ・ダマーロ氏は、ディズニープラスを従来型のストリーミングサービスの枠を超えた「ディズニーファンのデジタルの中心」と位置付けている。ザメコウスキー氏も「私たちの目標は、ディズニープラスをディズニーファンダムの目的地にすること」だと説明した。


 もともとESPNは、ウォルト・ディズニー・カンパニーのグループの中でも独立した事業会社であり、本来はディズニーやピクサーとは別のブランドだ。異なる出自を持つブランド群を、あえて1つのアプリに集約している点にこそ、ディズニープラスの戦略が表れている。


 このエコシステムの強さを裏付けるのが、劇場作品とディズニープラスのコンテンツを行き来するクロスメディア展開だ。「スター・ウォーズ」の実写オリジナルドラマ「マンダロリアン」シリーズが劇場版として公開された際には、ディズニープラスにおける同シリーズやスター・ウォーズ関連タイトルの視聴時間が大きく伸びた。


 逆に、もともと劇場作品として育ったマーベル作品(「アベンジャーズ」「アイアンマン」「キャプテン・アメリカ」など)は、ディズニープラスの複数シリーズへと形を変えて展開する。「トイ・ストーリー」も同様に、映画とディズニープラスの双方でIPの価値を伸ばしている作品の一つだ。一つのIPを異なるメディアで公開する構造は、単体のコンテンツ会社にはまねしにくい。


 もう一つの仕掛けが、ディズニープラスの会員特典にあるという。会員に対してテーマパークなどでの割引や、会員だからこそ得られる特別な体験を提供している。このようにディズニープラスは、ディズニー経済圏全体の顧客価値を引き上げるハブとして機能しているのだ。ザメコウスキー氏は、この構造を『アナと雪の女王』を例に説明する。


 「あなたが『アナと雪の女王』のファンなら、劇場でも見るでしょうし、ディズニープラスでも見るかもしれません。そして、本当のファンであれば、私たちのパークにある『アナと雪の女王』のアトラクションを体験するでしょう。さらに熱心なファンであれば、(隔年で、米アナハイムで開催している)私たちのファンイベント『D23』に行くでしょう。そこには何万人ものファンが集まります。好きなキャラクターに扮して、心から楽しんでいます」


 劇場、配信、パーク、ファンイベントという接点を一本のIPで貫き、ファンとの関係を段階的に深めていく。この体験全体を自社だけで設計・提供できる点こそが、ディズニーが持つ強みでもある。


●日本市場は最重要拠点 「ローカライゼーション」の作法


 同社は、日本と韓国を、アジア太平洋地域における二大ストーリーテリング拠点(魅力的な物語を生み出し、発信する基地)と位置付けている。ザメコウスキー氏は「日本にはアニメだけでなく実写作品にも豊かな創造性がある」と評価し、そのケーススタディーとして、日本発のオリジナル・ローカルコンテンツ『ガンニバル』を挙げた。同作品のシーズン2は、日本のディズニープラス配信開始から過去最速で100万時間視聴を達成するほどのヒット作品だ。


 日本のアニメは、すでに世界へ輸出されている。同氏は「ディズニープラスを通じて日本の実写作品も世界へ届けたい」という。海外の人気IPを日本に持ち込むだけでなく、日本発のコンテンツを世界へ展開するプラットフォームとしてディズニープラスを活用したい考えだ。ディズニープラスはローンチ以降、APAC地域で155本のオリジナル作品を制作してきた。


 キャリア決済の導入や価格設定など支払い面でのローカライズも意識している。コンテンツとサービスの双方を現地市場に合わせているのだ。この姿勢は、海外企業が日本市場で事業を展開する上でも参考になる。


 今後はスポーツも重要な柱の一つとして育てていきたい考えだ。ESPNは米国のほか、30年の実績を持つ豪州・ニュージーランドでも高い人気を誇る。一方、日本ではまだ十分に知られたブランドではないのが現実だ。日本、韓国、香港、台湾でも展開を始めたものの、現状のコンテンツは米国スポーツ、特に大学スポーツが中心となっている。


●顧客接点を広げるためのパートナーシップ戦略


 日本の制作会社や放送局との協業について尋ねると、ザメコウスキー氏はまずパートナーシップの全体像をこう整理する。


 「パートナーシップには2種類あります。1つはコンテンツパートナーシップで、良い例が『THE SEVEN』との提携です。この提携については非常に期待しています。ディズニープラスを日本の視聴者にとって、より身近なものにする助けになるからです」


 THE SEVENとの提携は、実写のローカルコンテンツ強化として位置付ける。THE SEVENはこれまでに『今際の国のアリス』や『幽☆遊☆白書』などを手掛けてきた。今回の提携は、実写のローカルコンテンツ強化として位置付けており、今後、日本発の実写オリジナル作品を制作することも計画している。


 また、同じくコンテンツパートナーシップの例として挙げられたのが、TVINGとの提携だ。TVINGが有する人気の韓国ドラマは「TVINGコレクション」 として、ディズニープラスの専用枠で、現在放送中の作品とライブラリー作品を組み合わせて提供している。自社で一からIPを育てるのではなく、他社のコンテンツをそのまま呼び込む発想は、フルラインアップを自前でそろえることの難しさを踏まえた現実的な選択だ。


 コンテンツパートナーシップは、THE SEVENやTVINGのような制作・配信元との連携にとどまらない。ザメコウスキー氏はHulu Japan、DMM、ABEMAといった国内の有力SVODとの提携にも触れ「基本的には2つのサービス間でバンドルをすることで、より幅広い顧客層をターゲットにしています」と説明した。


 単独のサービスでは届きにくい顧客層にも、バンドル提供を通じてリーチを広げる狙いだ。競合とも見なされ得るサービスとタッグを組むことをためらわない姿勢は、市場全体でのパイの奪い合いよりも、自社の顧客接点をどう広げるかを優先する発想だといえる。


 2つ目の軸が、配信パートナーシップだ。ザメコウスキー氏はNTTドコモやケーブルテレビ最大手のJCOMとの提携を例に挙げ「そうしたパートナーは、ディズニープラスのリーチ拡大に貢献してくれています」と話す。


 コンテンツそのものを充実させるコンテンツパートナーシップと、届ける経路を広げる配信パートナーシップ。この2つを使い分け、両輪として組み合わせている点は、コンテンツ事業者にとって、外部連携の設計の在り方として参考になる。


 ザメコウスキー氏へのインタビューから見えてきたのは、他社との加入者数争いに終始するのではなく「独自のレース」を貫くというディズニーの経営姿勢だ。ディズニープラスは単なる動画配信サービスではない。映画やテーマパーク、スポーツ、商品など、ディズニー全体のエコシステムをつなぐデジタルの中心地だ。IPを軸にリアルとデジタルを連動させ、ファンとの長期的な関係を築きながら、グループ全体の価値を高める。


 「独自のレース」とは、ディズニーならではの強みを生かして持続的な成長を目指す戦略といえるだろう。


(河嶌太郎、アイティメディア今野大一)



このニュースに関するつぶやき

  • ディズニープラスは、独占配信のアニメもあるがほとんどよその再放送が多いけどね。
    • イイネ!1
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