「犬猿の仲」も昔の話? ANAとJALが初のダイヤ調整に乗り出した、納得のワケ

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2026年08月27日 05:21  ITmedia ビジネスオンライン

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出所:ゲッティイメージズ

 日本を代表する航空会社のANAとJALは激しい競争を続けてきた。相手のフライト直後に自社のフライトをぶつけ、客を奪うこともあった。過去に羽田空港が国際線発着枠を増やした際は、均等配分を求めるJALと、傾斜配分を求めるANAの間で対立が起きた。両社はいわば水と油の関係にある。


【画像】調整前後のダイヤ


 だが最近、両社は初のダイヤ調整を進めることで合意した。現在、両社が競うように設定している羽田〜岡山のダイヤが、10月25日以降に変わる。背景にあるのは国内線を利用する“太客”の減少だ。収益が悪化する中、ライバル同士の協調が進みつつある。


●ダイヤから分かる、両社の「バチバチ度」


 両社の激しい競争は、ダイヤから一目瞭然だ。


 例えば羽田〜伊丹のダイヤだと、9月の朝の最も早い便はANAで、出発時刻は午前6時20分だ。だが、その10分後にJALの便が飛ぶ。昼間の時間帯は概ね30分差で運航しているが、需要の高い夜ではANAとJALが同じ午後6時発の便を設定している。午後7時前後では、JALが午後6時40分と午後7時10分、ANAが午後7時と午後7時15分に便を設定している。


 1985年の「航空自由化」以降、両社の競争が始まった。ANAは国内線の主要路線を開拓し、国際線の定期便を就航するなど、規制で守られていたJALの牙城に切り込んだ。2010年にJALが経営破綻すると、両社の事業規模は逆転し、ANAが1位となった。


●ダイヤ調整で、何がどう変わるのか?


 2012年に羽田の発着枠が変更となった際には国内線でANAが8枠を取得し、JALの取得はわずか3枠にとどまった。経営破綻後、公的支援を受けていたことがJALの減点材料になったとされる。


 ANAは、過去の規制や公的支援を理由に均等配分を正しいとする一方、JALは不公平だと訴えた。民間のANAと、事実上の“半官”だったJALによる対立の歴史は長く、競争はマイレージプログラムやホテル事業者との協業にも及んだ。


 しかし、ここにきて初のダイヤ調整を実施することに。対象となった羽田〜岡山は朝と夜に便が集中する。


 ダイヤ調整により、羽田発ではANAの便が午前7時25分に出発した後、午前8時20分にJAL便が飛ぶ。現在は5分差の午前10時台も、調整後はANAが午前10時発、JALが午前10時35分発となる。午後8時台の最終便も出発時刻は近いが、それでも15分差だ。


 岡山発の便では、現在午前7時5分発で重複している便を5分(ANA)と15分(JAL)に分散する。両社とも往復5便体制を維持するが、概ね30分〜1時間程度、出発時間が開くことになる。利用客から見れば選択肢が増えた形だ。


●新幹線が強力なライバルに


 ダイヤ調整の背景にあるのが収益性の悪化だ。両社とも航空便ごとの収益は公表していないが、岡山空港の乗降客数は減少している。2019年は161万人だったがコロナ禍で34万人に減少。その後回復したものの、2025年度の実績は147万人と以前の水準には届いていない。


 高松空港や松山空港など、両社の出発時間が近い便は他にも存在する。このうち岡山空港が異なるのは、飛行機以外の交通手段も充実している点にある。


 東京駅から岡山駅間の所要時間を比較すると、新幹線・航空機の差は大きくない。新幹線の場合、「のぞみ」でおよそ3時間10分程度だ。一方で飛行機に乗る場合、東京駅から羽田空港まで行くのに30分を要する。羽田空港〜岡山空港の便は1時間25分であり、岡山空港から岡山駅までの所要時間はバスで30分だ。移動時間だけで2時間半だが、手荷物検査やチェックイン手続きなどを含めると3時間を超える。


 航空機の優位性は低いため、同区間における航空便のシェアは3割にとどまるとされる。強力な新幹線の存在が両社のダイヤ調整を促した。


●新幹線以外にも「深刻な理由」がある


 国内線の苦戦は今般の航路だけではなく、航空会社全体に共通する。


 国交省の資料によると、国内線旅客数は2023年度にコロナ禍前の水準を上回った。しかし国内線の収益は悪化している。主要6社の営業損益は2018年度を100とすると2023年度が7.3、2024年度は−15.7と赤字に転落した。数は増えても質が悪化している状況だ。


 国内線の収益はなぜ悪化しているのか。まず物価高や円安による燃料費、整備費用の上昇などが収益を圧迫した。収入面では冒頭で太客と称した「出張・業務」の利用客が回復していない。


 ビジネス客は他の客よりも高単価だ。直前に予約する客が多く、時間を優先する場合は、高価格のプランでも選ぶ。また、自腹ではなく会社の金を使えるため、一部大企業の幹部は上位クラスの席を利用することがある。来客のために上位クラスの席を用意する事例も多い。


 だが、コロナ禍でリモートワークが普及し、ビジネス利用の客が減少した。旅客数の増加に貢献しているのは単価の低い観光客であり、収益への影響はビジネス利用より限定的だ。リモートワークの浸透で企業は出張費削減の効果を認識したのではないか。


 コスト高が続く昨今の状況から判断するに、ビジネス利用の回復は想定しづらい。2024年から地上業務資格で相互承認を始めるなど、JALとANAは近年協業を進めてきた。太客の減少で収益が悪化する中、競い合う2社の関係性は徐々に変化しつつある。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



このニュースに関するつぶやき

  • 昭和・平成の前後は、「商売人のANA」と「官僚気質のJAL」という質実ともに互いの領分を持っていたが、法改正でANAも海外路線をスタートしたあたりからおかしくなったと記憶する。時代だね・・
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