限定公開( 9 )

食品メーカー大手の明治は9月にプロテイン製品の容量改定を実施する。「ザバス ホエイプロテイン100」など複数の商品で、価格は据え置きながら容量を減らすという。明治は関連製品の値上げを続けており、今では市販品の相場が2年前の最大2倍まで膨らんでいる。
プロテイン価格高騰の背景にあるのが世界的なフィットネス需要の拡大だ。先進国のみならず新興国でも健康志向が高まっており、タンパク質製品を購入する消費者が増えた。また、やせ薬を使った過激なダイエット法を実践する人の間でプロテイン需要が高まっている。
●一度のみならず、複数回にわたる値上げが当たり前に
プロテイン粉末は手軽にタンパク質を摂取できる。できるだけ余分な成分を抑えてタンパク質を得られるとして、ボディビルダーやアスリートに重宝されてきた。例えば、ザバス ホエイプロテイン100の場合、トライアルタイプ10.5gに7.3gのタンパク質を含む。一般的な食品と比較して、タンパク質量がかなり多い。
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そんなプロテインの価格が、今年に入って著しく上昇している。
プロテインなどを扱う「Ultimate Life」(大阪市)は、「GronG」ブランドで展開する商品を3月と6月、二度にわたって値上げした。「ホエイプロテイン 100 スタンダード 1kg」は、3780円→5980円となった。市販品はこれまで段階的な値上げが続いたが、今年に入って急騰し、現在の相場は2年前のおよそ1.5〜2倍に拡大している。製品価格の高騰は日本のみならず世界で進行しているようだ。
商品名に「ホエイ」と付くように、一般的なプロテイン粉末はチーズを製造する際に発生する副産物のホエイを原料とする。ホエイから余分な成分を排除してタンパク質の含有率を高めたものがWPCやWPIなどの凝集物であり、国内のプロテインメーカーはこれらを輸入してプロテイン製品を製造している。
WPCやWPIはチーズの生産地である欧米で生産されており、日本はそのほとんどを輸入に頼っている状況だ。そして近年、世界的なプロテイン需要の拡大によってWPCとWPIの価格が上昇している。
●世界的な健康志向でニーズが拡大 「プロテインそのもの」以外も人気に
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プロテイン需要を押し上げているのが世界的なフィットネス・筋トレの普及だ。健康志向の高まりから習慣的に運動する人が増え、これに応える形で24時間型ジムや小型ジムが増えた。「chocoZAP」のような初心者向けのジムも増えている。
プロテインはかつて、ボディビルダーやアスリート向けという印象が強かったが、一般層にも広がり、運動の前後に摂取する習慣が定着した。中国やインドなどの新興国でもプロテイン製品の需要が伸びている。インドネシアやフィリピンなど東南アジアも経済成長で余暇が拡大した。何もなかった田舎に小型ジムが現れ、商店街にはプロテイン専門店が出店するなど、フィットネスとプロテイン製品の需要拡大は世界的な潮流となっている。
プロテインとは文字通りタンパク質に過ぎない。だがメーカーによる宣伝の影響で、トクホやサプリメントのように「健康に良い」と認識する消費者も増えた。近年ではバーやスイーツ、飲料などのプロテイン含有食品も売れている。ヨーグルトではダノンの「オイコス」が近年、急激に認知度を高めた。タンパク質をある種の健康食品や特効薬のようにうたうテレビ番組やSNSの投稿も増えており、ニーズ拡大に影響を与えている。
牛乳の主要な生産地はインド・米国・中国だが、前述の通りホエイプロテインはチーズの副産物として生産される。チーズの生産地は欧米であり、新興国による生産では価格下落を期待できない状況だ。
●「やせ薬」の流行も影響か
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また、やせ薬の服用者が副作用を抑える目的でプロテインに頼り始めており、価格高騰に影響を与えている。肥満が深刻な米国では空腹感を抑える効果がある肥満症治療薬も普及した。人口の10%超が使用しているという調査結果も出ている。
一方でこうしたやせ薬では筋力低下や栄養不足、抜け毛などの副作用が発生しやすいとされる。そのため、副作用を抑える目的でプロテインを購入する人が増えているのだ。やせ薬服用者を対象としたアイスやパスタなどの高タンパク食品も次々に現れ、プロテイン人気に拍車をかけている。
国内ではあるYouTube番組をきっかけに「マンジャロ」の名称でやせ薬が知られるようになった。マンジャロを服用するクリニックの中には、明確に「プロテインを飲むとよい」と推奨する施設も数多く存在する。
厚生労働省はXで「【マンジャロは糖尿病のお薬です】マンジャロは『糖尿病』の治療を目的に承認された薬です。ダイエットなど、本来の目的以外で使用した場合、思わぬ健康被害が生じるおそれがあり危険です。医療者から薬のリスクについて十分な説明を受け、薬について正しく理解することが重要です」と呼び掛けている。
プロテイン製品は生命維持に必ずしも必要なものではない。ボディビルダーやアスリートのような身体を目指さない限り、肉類や魚類で十分な量のタンパク質を摂取できる。しかし「太らずにタンパク質をとりたい」「やせ薬の副作用を抑えたい」といったニーズがあり、タイパやコスパを重視する消費者の間でプロテイン製品が売れるようになった。その背景にあるフィットネス需要拡大と肥満症治療薬の人気は収まりそうになく、価格上昇は今後も続くかもしれない。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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