府中刑務所で行われた職員らと市民の意見交換会=2月19日、東京都府中市 全国の刑務所で、施設を見学した市民と刑務官が意見交換する「対話型施設参観」が積極的に行われている。2025年の「拘禁刑」導入を機に始まった取り組みで、参加者だけでなく刑務官も自身の仕事への理解を深める機会となっている。
◇2022年が転換点
刑務所を巡る状況は22年が転換点となった。拘禁刑を新たに創設した改正刑法は同年6月に成立。25年6月から運用が始まり、受刑者の社会復帰後の再犯防止がより重視され、認知症や障害など個々の特性に応じたきめ細かな処遇が可能となった。
一方、22年8月には名古屋刑務所で刑務官が受刑者を暴行していた事件が発覚した。法務省は、再発防止を図るとともに、拘禁刑導入を見据えて受刑者が適切な処遇を受けられるよう改革に着手した。
対話型施設参観は、閉鎖的になりがちな組織風土を改革するため、24年11月から全国の刑務所で始まった。意見交換を通じて、参加者に刑務所の実情を理解してもらうとともに、職員も外部への説明や第三者の評価を聞く経験を通じ、自らの仕事への理解を深めることが期待されている。
◇「警察官と間違えられる」
職員約600人が働く日本最大規模の府中刑務所(東京都府中市)では、これまでに複数回、対話型施設参観が行われた。26年2月の回には大学生や市民、学者ら約40人が参加。外国人受刑者向けの個室や製本などの作業を行う工場、高齢受刑者用のトレーニングマシンが置かれたスペースなどを見学した後、参加者と職員ら5〜6人が一組になり意見交換をした。
参加者らは「想像より内部はきれいだった」「職業訓練や医療が無料で受けられる受刑者は恵まれた環境だと思った」などと感想を述べた。職員らは「刑務官という職業が認知されておらず、警察官と間違えられる」「規律を守らせながら受刑者との心の距離を詰めるのは難しい」といった悩みを語った。
拘禁刑導入の影響について、ある男性刑務官は「従来、受刑者一人ひとりに個別にアプローチしてきたのでやることは変わらない」と強調。一方、規律を過度に重視する雰囲気を変えるため、受刑者を「さん付け」で呼ぶようにしたことなどについて、別の若手刑務官は「言動を気にして言いたいことが言えない刑務官もいる」と明かした。
参加した20代の女子学生は「拘禁刑導入による変化が知りたかった。職員の『現場がやってきたことに法律が追い付いただけ』という言葉が印象的だった」と話した。

府中刑務所の外観=2月19日、東京都府中市