不動産高騰が生んだ「スペパ」需要。狭小化する住宅事情と新たなビジネスチャンス

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2026年09月10日 19:08  TBS NEWS DIG

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東京23区の新築戸建ての平均価格が1億円を超えるなど、不動産価格の高騰が止まりません。それに伴い、新築住宅の面積は1970年代の水準にまで縮小し、「住宅版ステルス値上げ」とも呼べる現象が起きています。しかし、この限られた空間を有効活用する「スペースパフォーマンス(スペパ)」への関心が、今、新たなビジネスを生み出しつつあります。なぜ住宅の狭小化が進んでいるのか。そして、その制約を逆手に取った「スペパ」はどのようなビジネスチャンスを秘めているのか。リサーチャーのcomugiさんの分析を交えながら、最新の住宅事情とビジネスの最前線に迫ります。

【写真で見る】シャワーブースで足湯ができる狭小物件

東京ビジネスハブ

TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターの野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。今回は2026年8月9日の配信「狭小住宅こそ_スペパ_!不動産高騰をビジネスに変える方法(comugi)」 を抜粋してお届けします。

1億円超えの不動産高騰と、縮みゆく住宅の「ステルス値上げ」

野村:現在、東京23区の新築戸建ての価格が2026年の1〜2月平均で初の1億円を超え、マンションだけでなく戸建ても高騰しています。一体何が起きているのでしょうか。

comugi:とにかく高いですよね。特に首都圏では、共働きの「パワーカップル」がペアローンでリスクを負担しないと買えないような価格になってしまっています。さらに、金利も上昇のタイミングに入り、ビジネスパーソンにとって夢のマイホームが遠のいているのが現状です。その背景のひとつが、供給戸数の圧倒的な減少です。少し前のデータになりますが、2024年の首都圏新築マンション供給戸数は2万3003戸と、1973年以来の過去最少水準となっています。

野村:土地の不足や建築費の高騰など、色々な事情が重なっているのですね。人口で見ても、他の道府県が減る中、東京だけは増え続けていますし。

comugi:需要が変わらないのに供給が減れば、当然価格は上がります。それに加えて今話題になっているのが、住宅の面積がどんどん狭くなっているということです。国土交通省の統計によると、2025年の新築1戸あたりの平均床面積は約76.8平方メートル。これは1970年代前半並みの狭さです。ある専門家はこれを「住宅版ステルス値上げ」と表現しています。

野村:1970年代というと、日本の住宅が諸外国から「ウサギ小屋」と揶揄されていた時代ですよね。その時代の狭さに、今また戻ってきていると。

comugi:そうなのです。不動産側も割高になりすぎた物件をどう提供するか工夫していて、最近増えているのが「定期借地権付きマンション」です。期限が来たら建物を壊して更地にして地主に返す仕組みで、2026年竣工予定の定借マンションは全国で4808戸と、前年比で6倍に急増し、過去最多を記録しています。

野村:消費者からすると苦肉の策のようにも感じますが、安く住めるように調整しているのですね。

comugi:消費者側の価値観も変化しています。「所有」にこだわるのではなく、自分が暮らしていく50年、70年という「時間を買う」感覚が一般的になってきているのです。

9平米で入居率99%? 若者に広がる「割り切り」と新たな価値観

野村:76.8平米というとマンションならよくありますが、戸建てとなると2階建て、3階建てでかなり狭そうですね。

comugi:はい。最近は敷地を細かく分割して販売する、鉛筆のように細長い形をした「ペンシルハウス」が増えています。株式会社LIFULLの調べによると、敷地60平方メートル未満の「狭小戸建て」は、2025年で2815戸と、2021年と比べて8割も急増しています。狭くても戸建てがいいというニーズに対し、3階建てにして空間を縦に広く使う工夫がされています。

野村:賃貸のほうでも同じような現象は起きているのでしょうか?

comugi:賃貸でも面白い事例があります。例えば、なんと9平米(約3畳)のワンルームが話題になっています。

野村:3畳ですか! それで暮らせるのでしょうか?

comugi:暮らせる工夫があるんです。例えばロフトが付いていて、縦の空間を有効活用できるようになっています。株式会社SPILYTUSという会社が都内23区で約100棟、1500戸を展開しているのですが、なんと平均入居率がほぼ99%と大人気なのです。

野村:それはすごいですね。なぜそこまで人気なのでしょうか。

comugi:平均家賃が約6万5000円で相場より2〜3万円安く、恵比寿や四谷といった都心の一等地に安く住めるからです。主な入居者は20代〜30代前半で、「住まいは寝るだけ」と割り切って、職場や学校への利便性を優先しています。

昔は「風呂なしアパート」が敬遠されていましたが、今は「浴槽がない方が賢い選択」とされたり、「コンロキャンセル界隈」と呼ばれるように、キッチンは不要でコンロが一つあれば十分、お湯も沸かさないと考える若い世代が増えています。ネガティブな妥協ではなく、前向きな「割り切り」として受け入れられているのが面白いところです。

小型家電からサードプレイスまで。「スペパ」が切り拓く新ビジネス

野村:今回のテーマにある「スペパ」ですが、タイパ(タイムパフォーマンス)、コスパに続いて、「スペースパフォーマンス」が注目されているということですね。

comugi:空間をいかに有効に、無駄なく最適化された状態で使うかという「スペパ」が、今のビジネスの大きなヒントになっています。例えばニトリは、2026年7月に国内最小級のドラム式洗濯乾燥機を発売しました。奥行きをかなり小さくし、一人暮らしや狭小住宅でも置きやすい省スペースなサイズに設計されています。

野村:空間が高価になっているからこそ、場所を取らない製品が求められているのですね。

comugi:家具の世界でも、IKEAのソファにもベッドにもなる「チェアベッド」などが人気です。そして、もう一つ面白い動きが、「家の中の機能を外に出す」という外部化のアプローチです。その代表例がコインランドリーで、この10年で5割も増え、現在全国に約2万5000店もあります。

野村:家に大きな洗濯機を置けない分、外で済ませるということですか。

comugi:以前の放送でお話しした「日本のスターバックスが好調な理由」にも通じます。家が狭くて落ち着けるリビングがない若者たちが、サードプレイスとしてのスターバックスで「過ごす時間」を買っている。これも、住環境の狭小化が生み出した潜在的なニーズのひとつと言えます。

濃縮ドリンクからコンビニ、車中泊まで? 広がるスペパの応用範囲

野村:小さい家電は想像できましたが、他にも「スペパ」を意識した商品はあるのでしょうか?

comugi:実は、食品業界でもスペパ需要が生まれています。例えば、ネスレ日本株式会社などが発売して話題になった「濃縮コーヒー」です。1本で8〜15杯分が飲める希釈タイプのもので、この濃縮コーヒー市場は4年で1.5倍に拡大しています。

野村:水分は冷蔵庫の場所を取りますからね。

comugi:その通りです。狭い冷蔵庫の中にどうやってモノを収めるかを考えた時、濃縮タイプは非常に「スペパ」が良いのです。サントリーの「おうちドリンクバー」という濃縮シリーズも、計画比の2倍の売上を記録しています。SNSで自分好みのカスタマイズを楽しむ需要もありますが、根底にはスペースパフォーマンスを求める需要と繋がっていると考えられます。

もう一つ、車を使ったスペパも話題です。最近は車の中に泊まる「車中泊」がヒットコンテンツになっていますが、ローソンがコンビニの駐車場で車中泊できるサービスを試験的に始め、2026年度には70店舗まで拡大すると発表しました。1泊2500円で利用できるそうです。

野村:それは面白いですね。ホテル代も高騰していますし、宿泊のコスパも高そうです。物価上昇自体は本来ニュートラルなもので、今しんどいのは給料が追いつくまでにタイムラグがあるからなんですよね。「昔は良かった」と懐かしむより、こうなった現実の中でどう楽しむか。企業も消費者も、その制約の中で前向きに動き始めているのですね。

制約を逆手にとる。日本発のスペパビジネスが世界へ

comugi:実は、国の方針にも変化がありました。2026年3月に閣議決定された新しい「住生活基本計画」で、これまで単身世帯で25平方メートルとされていた「最低居住面積水準」が削除されたのです。また、住宅ローン減税の床面積要件も、中古物件で50平方メートル以上から40平方メートル以上に引き下げられました。こうしたルールの変更が、良くも悪くもスペパの流れを後押ししている側面は否めません。

野村:ただ、自由競争に任せすぎると、「ニーズがあるのだから、どんどん狭くしてもいい」となって、居住環境そのものが悪化していかないか、という懸念もありますね。

comugi:そこは本当にコントロールが難しく、国も考えなければいけないところですね。ただ、見方を変えれば、日本は国土が狭いからこそ、その制約の中で工夫することに長けてきた国でもあります。例えば、福岡の株式会社シノケンプロデュースという建築会社は、日本の極小スペースで快適に住宅を建てるノウハウや、「コリビング(Co-Living)」のようにリビングを共有する仕組みを、住宅価格が高騰しているオーストラリアに展開しています。

野村:その工夫は輸出できそうですね。パッと思い浮かんだのは香港です。国土が狭く、日本以上に不動産価格が高騰していますから、「狭くても快適に暮らせる」技術は重宝されそうです。

comugi:そうですね。100円ショップの「100円」という価格の制約や、ガチャガチャ(トイカプセル)の小さなサイズの制約など、日本は制約の中で新しいものを生み出すビジネスが非常に特徴的です。今回の「スペパ」も、物理的な土地の制約から生まれたカルチャーとして、今後のビジネス開発の大きなヒントになるはずです。限られた資源やスペースをどう生かすか、ぜひ考えてみてほしいですね。

<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。

このニュースに関するつぶやき

  • だから、変に人間いれなきゃいいんだよ。 これから人口減少していくんだから。 本来なら土地も余っていくんだよ。 住宅事情も渋滞も満員電車も解消してくはずだったのに、そこに変に人間入れるから・・・。
    • イイネ!4
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